<この体験記を書いた人>
ペンネーム:悩める息子
性別:男
年齢:58
プロフィール:去年母(当時88歳)が亡くなり一人暮らしを始めた父(89歳)を持つ58歳の男性です。兄(60歳)との同居を勧めています。
昨年の秋、母が88歳で亡くなりました。
母と同い年だった父(現在89歳)は、実家で一人暮らしを始めました。
私も60歳の兄も、独立してからは実家を離れていましたが、これまではしっかり者の母がいるので安心していました。
しかし、父だけの一人暮らしとなると...その年齢ゆえ、かなりの不安があります。
兄と相談して、実家の近くでマンション暮らしだった兄が実家に居を移すことで話をまとめました。
ところが...。
「なんでそんなことしなきゃいかんのだ?」
母の一周忌を機に、父に話を切り出すと、意外な反応を示されました。
父 「たかふみ(兄のことです)にも都合ってもんがあるだろう? 同居する気なんてないぞ、俺は」
私 「いや、でも、俺が結婚した時は同居する話もあっただろ? お袋が気を遣わせたくないって断るからマンションに入ったわけでさ......」
父 「気を遣わせたくないのは俺も一緒だよ。と言うより、こっちが気を遣うよ」
父は二つ返事だと思っていた兄弟としては驚きでした。
私 「まあ、親父もいい年なんだから......」
父 「それが嫌なんだよ! 年寄扱いするんじゃないよ、まったく」
来年は90歳なんだから立派な年寄りだよ、と言いそうになるのをぐっと飲み込みました。
兄 「何だよ全く。こっちだってどうしても実家に戻りたいわけじゃないよ」
当然、兄も不満たらたらです。
私 「まあ、まあ、切り出し方が悪かったよ。いかにも年寄扱いに思ったんだろ?」
兄 「十分頑固じじいだよ。嫁さんを説得するのも大変だったんだぞ。なんで今更、ってさ」
兄夫婦は昨年、一人娘(23歳)が独立したので、マンションで二人住まいです。
義姉(55歳)からすれば、ようやく気兼ねなく生活できると思っていたでしょうから、大きな決断だったことでしょう。
兄 「嫁さんにやっとのことで『長男の嫁だから覚悟はしてたけど』って言わせたのに......。もうほっとけばいいさ。幸い、今のところ元気なんだから」
兄はすっかり不貞腐れてしまいました。
具合が悪くなってからじゃ遅いじゃないかと思い、私は父の説得に向かいました。
私 「元気なのは分かるけど、免許も返納したんだろ? 万一の時に近くに兄貴がいてくれれば安心なんだって」
父 「今だって車で10分もかからないマンションじゃないか。心配いらんよ」
お茶をすすりながら涼しい顔です。
そして意外なひと言が。
父 「俺も母さんと二人になってからしばらくが一番楽しかったからな......。たかふみ達もようやく子離れしたばかりだろ? まあ、体の自由も利かないってんなら頼りもするが、まだ早いってことだ」
どうやら父なりに兄たちに気を遣っているようです。
止む無く、現状維持のまま一周忌を終えて帰宅しました。
こちらは実家を遠く離れているので歯がゆいばかりですが、様子を見るしかなさそうです。
そんな折に、テレビのニュースで「台風で一人暮らしのお年寄りが亡くなった」なんてニュースを見て、思わず父に電話をかけた私。
しばらく心配の種になりそうです。
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