毎日が発見ネットの連載で「キッチン夫婦(妻)」としておなじみのべにゆうさん。彼女は40歳の時、14歳の息子がいる夫と結婚、以来、8年間にわたって生活を共にしてきました。ある日、中学2年生の多感な男子の母親になる――。継母としていろいろな出来事や、想いがあったと言います。今回は夏の特別連載として、10日間連続で「40歳の女性が、ある日、14歳の継母になった物語」をお送りします。
【前回】継母として「遠慮と苦悩」を重ねた...息子への家庭教師
【最初から読む】40歳だった私が「14歳男子の継母」になることを決めた日/14歳男子の継母になった私(1)
「母」として息子の行事に参加。場違いな存在になってない...?
息子が中2の秋に家族になり、一緒に暮らし始めた私達3人。
息子は6歳から14歳まで夫がシングルファーザーとして育ていた。
学校行事に関しては全て夫が行っていたが、2人で参加できるものには参加してみた。
息子の学校へ行くのは嫌じゃなく意外と楽しみに感じていたけど、他の親御さんへの挨拶をどのようにしたらいいのかわからない。
夫に付いて歩いて「初めまして」と「よろしくお願いします」を言っていただけだった。
行事に参加した中で思い出に残っているのは、中学校のサッカー部に所属していた息子の試合を観に行ったこと。
よく土曜日に試合があり観に行ったのだが、異常に緊張してしまう。
それはやっぱり他の親御さんへの挨拶をどうしたら良いか、私は他の人にどう思われるのかを考えてしまうからだった。
「○○の母です」という風に言って良いのかな....と悩んでいた。
たぶんそれで良かったのだと思うが、「母です」と言うには、何か私の前に壁があった。
今考えても、当時ならとても言えない。
息子のことをよく知る為にも他のお母さんたちと友達になりたい気持ちがあったのに、もう一歩踏み込めなかったのは残念に思う。
それでも試合を観に行くと、普段家では見られない息子のおしゃべりの様子や友達とのリラックスした表情を知る事ができるので嬉しかった。
息子はキャプテンをしていた。
練習試合でもハラハラしながら、「負けたらかわいそうだな....キャプテンだし辛いさ....」と思って観ていたような記憶がある。
私も中学生の時、運動部のキャプテンをしていたので、自分がやらなきゃないこととチームメイトが思うように動いてくれないもどかしさを息子が感じているのがわかり、気持ちを共有できているような気さえしていた。
それから、会場ではさりげなく息子がどこにいるかを確認するが、目で追ってはいない。
むしろ目を合わせないようにしていた気がする。
この年頃の子を持つ他のお母さんはどうなのだろう?
私は気まずい気がするので、目は合わないようにしながら眺めていた。
「私ちゃんと見ているよ、あなたに興味があるんだよ」ということは伝わって欲しいと思う一方で、私が当たり前の顔してそこにいて良いのか考えてしまっていた。
それは...こうした部活に限らず、色んな場面であって、"母親でもない"と言うより"母親ではない"のに、母親として私が行事に参加することを息子はどう思っているんだろう?...と感じていた。
そう言えば、どう思うかは今なお、聞いたことないままだ。
でもこの質問は怖くて聞けない。
息子に初めて触れた...忘れられない瞬間
2013年、中学3年生の最後の大会をよく覚えている。
負けてしまった最後の試合。
試合後に監督、コーチ、親、子供たちがみんな集まって最後の試合を振り返ったミーティングの時のこと。
子供たちは地面に体育座りをして、親はその周りに立ってコーチの話を聞いていた。
練習試合では負け試合の方が多かった息子たちのチームだが、トーナメント方式のこの大会では2勝した。
今までで一番生き生きとし晴れやかな子供たちの表情に親たちも興奮気味だった。
そんな中、三年生最後の試合が来た。
練習試合で負けても泣くことはなかった子供達だが、悔しさが特別なものだったのだろう....多くの子が泣いていた。
キャプテンでもあった息子は他の誰よりも泣いていた。
そんなに泣く人を私は後にも先にも目の前では見たことがない。
その姿にどうしてもいたたまれなくなった私は、しゃがんで息子の背中をさすった。
この時、初めて息子に触れた。
自分にとっては忘れられない瞬間だった。
息子はその後、さらに泣き崩れ、泣きながら芝生に転がってしまっていた。
夫は今でもその時の私と息子の様子が忘れられないと言って涙ぐむ。
またその時、友達のお母さんが
「Y君、今まで一生懸命頑張ってきたからあんなに泣けるんだね」
と言ってくれたのを嬉しく感じたと同時に、"あぁこういうのがお母さんとしての見方なのかな?"とハッとしたのを覚えている。
私としては、夫と息子と家族であることはすんなりとくるんだけど、「お母さん!」「お母様ですか?」と聞いた時や聞かれた時...、思考がほんの一瞬止まる。
「お母さん」という言葉の重みと神聖さは、息子と家族になった時から、私の中で変化していった。
この話はまた次回。
つづく
【次回】子宝に恵まれなかった私。「お母さん」という言葉にざわつく心.../14歳男子の継母になった私(5)
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