【はじめから読む】「我慢して今の仕事を続けるべき」「料理は手作りがいい」――「普通」を押し付ける親に欠けている「能力」
『「親がしんどい」を解きほぐす』 (寝子/KADOKAWA)第2回【全4回】
親に対するしんどさはご自身にとって"大切な気持ち"の宝庫かもしれない――
X(旧Twitter)のフォロワーが1万人を超える、臨床心理士・公認心理師の寝子さんは、著書『「親がしんどい」を解きほぐす』のなかでそう語ります。
「毒親というほどではないけれど、親と関わるのがちょっとしんどい...」
親との距離感にモヤモヤを抱えている人は多いはず。気軽に話せない親との関係、モヤモヤは、寝子さんによれば「自分の人生をしっかり歩んでいるからこそ生じるストレス」。
自分の気持ちを見つめ直し、具体的な対処法も示唆してくれる本書から、第4章「『親の言動のワケ』を知ることでモヤモヤを晴らす」を抜粋して紹介します。
※本記事は寝子著の書籍『「親がしんどい」を解きほぐす』(KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました。
「あなたのため」という"攻撃"
普通の押しつけにも通じますが、内省力が弱い場合、「ほかの何かのせいにする」ことで、自分の欲求を示します。
その一例が、「普通は」「常識」という過度な一般化です。ほかにも、「あなたのために言っている」という親の代表的なセリフがありますよね。
「あなたのため」は親のため
この言葉には、親側が子どもをコントロールして「自分に都合の良い選択をしてほしい」という自己中心的思考が隠されています。そのうえ、「教えてあげている」と上下関係にもっていき恩を着せることで、断るにはかなりの罪悪感を背負わせるセリフです。
親自身ではなく世間が言っているかのようにほかの誰かのせいにし、「そうするのは子どものため」と、行動の成果はまるで子ども自身に与えられるかのように誘導しています。しかし、真実は親のためなのです。
こういった、子どもを親の都合良くコントロールする言葉は、実は子どもに対しての非難が込められています。子ども側は、親の言外の自分への非難を、無自覚であっても感じ取っていることがほとんどでしょう。
だから、親の機嫌を良くするために、言うことを聞くこともあると思います。そんな子どもの健気さを利用する狡(ずる)さが親にはあります。
加えて、内省力がないので、自分の一方的な要求を本当に「子どものため」と思い込んでいる場合が非常に多いです。
そのため、話し合っても通じませんし、発している言葉が持つ攻撃性や不快感に、親自身の自覚もないことがほとんどです。