「自分たちの時代はもっと大変だった」は親の"自慢話"。生き方を強要する親の「歪んだ感情」

【本作を第1話から読む】「我慢して今の仕事を続けるべき」「料理は手作りがいい」――「普通」を押し付ける親に欠けている「能力」

『「親がしんどい」を解きほぐす』 (寝子/KADOKAWA)第3回【全4話】

親に対するしんどさはご自身にとって"大切な気持ち"の宝庫かもしれない――
X(旧Twitter)のフォロワーが1万人を超える、臨床心理士・公認心理師の寝子さんは、著書『「親がしんどい」を解きほぐす』のなかでそう語ります。

「毒親というほどではないけれど、親と関わるのがちょっとしんどい...」親との距離感にモヤモヤを抱えている人は多いはず。気軽に話せない親との関係、モヤモヤは、寝子さんによれば「自分の人生をしっかり歩んでいるからこそ生じるストレス」。

自分の気持ちを見つめ直し、具体的な対処法も示唆してくれる本書から、第4章「「親の言動のワケ」を知ることでモヤモヤを晴らす」を抜粋して紹介します。

※本記事は寝子著の書籍『「親がしんどい」を解きほぐす』(KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました。


親の生き方の強要に潜む心理

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自分より人生の先輩である大人を見ていると、「自分たちが嫌な思いをしたからそれを次の世代にはしてほしくない」と考えていることもある一方で、「同じ苦労をするべき」と強要する場面にも遭遇したことがあるのではないでしょうか。

たとえば、「自分は若いときに仕事を教えてもらえなくて苦労したから、自分が年長者になっても教えない」でしたり、「結婚したことへの愚痴をさんざん言っていたのに、子どもには結婚を勧める」といったりというような状態です。

こういった言動の背景にあるのは、"自分の人生を肯定したい"という心理と、"怒り"からの"嫉妬"という心理が挙げられます。

自分と他人の区別ができていない

私たちは、良くも悪くも、自分が経験したことを肯定しようとする心理作用があります。理想は、自分の経験をそれぞれ丁寧に考えられるといいのですが、内省力が弱いと、一括して「苦労も含めて体験すべきことだった」と全面的に肯定して、自分の人生にマルをつけたいという心持ちになります。

加えて、内省力のなさは、自分と他人をしっかり区別できないことの原因にもなります。そのため、自分が経験したことはすべて良かったと考え、「ほかの人もそうすべきだ」と飛躍した思考が生じます。

もう一方では、どこか自分の人生の一部に、後悔や鬱憤(うっぷん)などを抱いている場合もあります。その気持ちを意識化できていないと、自分とは違う生き方をしている他人を目の当たりにしたとき、「否定された」という勘違いが生じます。

それゆえ、自分の心の安定を保つために、できるだけ多くの人に自分と同じ人生を送ってほしいと無意識で願うようになるのです。

いずれにしても、自分の気持ちや価値観と向き合っていないことで、他人に自分の生き方を強要してしまいます。

 

寝子(ねこ)
臨床心理士。公認心理師。
スクールカウンセラーや私設相談室カウンセラーなどを経て、現在は医療機関で成人のトラウマケアに特化した個別カウンセリングに従事。トラウマの中でも、親子関係からのトラウマケアと性犯罪被害者支援をライフワークとしている。
臨床業務の傍ら、ツイッター(X)で心理に関する発信をし始め、フォロワー1万人超え。
対処法よりも自分を理解することに重きを置いた内容が支持され、ブログ記事は「探していた答えが書いてあった」「自分の状態がクリアに理解できた」と評判になっている。

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※本記事は寝子著の書籍『「親がしんどい」を解きほぐす』(KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました。

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