柴田:なるほど。
川内:最初のうちはそれでも何とか対応できるんです。
でも、要介護の度合いが上がって、だんだん介護の作業量が増えてくると対応できなくなる。そこに至って初めて、もう無理だと白旗をあげ、ヘルパーさんとか、デイサービスとか、外部の支援を頼もうとするわけですが、その頃には親はすっかり子どもに依存しきっていますから、「これまで通り、お前にこの家で面倒を見てほしい」と強く望むわけです。
柴田:そうなると、親の願いを無視して外部の支援を頼みにくくなりますよね。
川内:それで子どもが無理して親の介護を続けた結果、心身に不調を来きたしたり、金銭面でしんどくなったりして、それを親にぶつけるようになったりするんです。
柴田:あぁ、まさに親孝行の罠......。
川内:だから親の介護は最初から外部の支援を仰ぐべきです。そもそも私たちのような介護職も「自分の親の介護はするな」と最初に習うんです。プロでも自分の親の介護は難しいですから。
たとえば、私たち介護職というのは、ご本人が「今日は足が痛いから動けない、嫌だ」と言っても、「いや、お母さん、今日はなんと大安ですよ。気持ちが入ればきっと足は動きます」など、手を替え、品を替え、その気にさせて、「じゃあ、行きますね、1、2の3!」とやるのが仕事です。じゃあ、同じことを自分の親にできるかと言ったら、無理です。「そんなに痛いの? わかった、じゃあ、背負うよ」となりかねない。でも、それでは機能訓練にならないわけです。
柴田:親子だからこその情や甘えみたいなのが入ってしまうんですね。
川内:そうなんです。ですから、親が他人に面倒を見てもらいたくないという場合は、それを子どもが受け入れてしまうと、ますます親が子どもに依存するようになるので、その悪循環を断ち切らないといけません。