介護のプロがやめたほうがいい、と言う「子による親の介護」。その理由に柴田理恵も「まさに親孝行の罠」

柴田:なるほど。

川内:最初のうちはそれでも何とか対応できるんです。

でも、要介護の度合いが上がって、だんだん介護の作業量が増えてくると対応できなくなる。そこに至って初めて、もう無理だと白旗をあげ、ヘルパーさんとか、デイサービスとか、外部の支援を頼もうとするわけですが、その頃には親はすっかり子どもに依存しきっていますから、「これまで通り、お前にこの家で面倒を見てほしい」と強く望むわけです。

柴田:そうなると、親の願いを無視して外部の支援を頼みにくくなりますよね。

川内:それで子どもが無理して親の介護を続けた結果、心身に不調を来きたしたり、金銭面でしんどくなったりして、それを親にぶつけるようになったりするんです。

柴田:あぁ、まさに親孝行の罠......。

川内:だから親の介護は最初から外部の支援を仰ぐべきです。そもそも私たちのような介護職も「自分の親の介護はするな」と最初に習うんです。プロでも自分の親の介護は難しいですから。

たとえば、私たち介護職というのは、ご本人が「今日は足が痛いから動けない、嫌だ」と言っても、「いや、お母さん、今日はなんと大安ですよ。気持ちが入ればきっと足は動きます」など、手を替え、品を替え、その気にさせて、「じゃあ、行きますね、1、2の3!」とやるのが仕事です。じゃあ、同じことを自分の親にできるかと言ったら、無理です。「そんなに痛いの? わかった、じゃあ、背負うよ」となりかねない。でも、それでは機能訓練にならないわけです。

柴田:親子だからこその情や甘えみたいなのが入ってしまうんですね。

川内:そうなんです。ですから、親が他人に面倒を見てもらいたくないという場合は、それを子どもが受け入れてしまうと、ますます親が子どもに依存するようになるので、その悪循環を断ち切らないといけません。 

 

NPO法人となりのかいご代表理事 代表理事 川内潤さん
1980年生まれ。上智大学文学部社会福祉学科卒業。老人ホーム紹介事業、外資系コンサル会社、在宅・施設介護職員を経て、2008年に市民団体「となりのかいご」設立。14年に「となりのかいご」をNPO法人化、代表理事に就任。厚労省「令和2年度仕事と介護の両立支援カリキュラム事業」委員、厚労省「令和4・5年中小企業育児・介護休業等推進支援事業」検討委員。介護を理由に家族の関係が崩れてしまうことなく最期までその人らしく自然に過ごせる社会を目指し、日々奮闘中。著書に『もし明日、親が倒れても仕事を辞めずにすむ方法』(ポプラ社)、共著に『親不孝介護 距離を取るからうまくいく』(日経BP)などがある。


柴田理恵(しばた・りえ)
女優。1959年、富山県に生まれる。1984年に劇団「ワハハ本舗」を旗揚げ。舞台やドラマ、映画など女優として幅広い作品に出演しながら、バラエティ番組で見せる豪快でチャーミングな喜怒哀楽ぶりや、優しさにあふれる人柄で老若男女を問わず人気を集めている。
また、こうした活躍の裏で2017年に母が倒れてからは、富山に住む母を東京から介護する「遠距離介護」を開始。近年は自身の体験をメディアでも発信している。
著書には、『柴田理恵のきもの好日』(平凡社)、『台風かあちゃん――いつまでもあると思うな親とカネ』(潮出版社)などのほか、絵本に『おかあさんありがとう』(ニコモ)がある。

※本記事は柴田理恵著の書籍『遠距離介護の幸せなカタチ――要介護の母を持つ私が専門家とたどり着いたみんなが笑顔になる方法』(祥伝社)から一部抜粋・編集しました。

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