筆者いち推しのフィードバック例(若手の皆さんは見ないで下さい)
本書を執筆している2023年11月現在において、僕が皆さんにおすすめできる、最もシンプルで、現実に応用できるフィードバックは、次の通りだ。
「さっき会議で出してた資料の頭のところ、私としては読みやすくてすごく良かったと思う。あれ、誰かに教わったの? それとも自分で考えたの?」
このフレーズの意義を理解し、かつより効果的なものにするために、次の5つの原則を合わせて踏まえてほしい。
① フィードバックはなるべく早く
② フィードバックを返すポイントは具体的に
③ 褒め要素は「私」を主語とした形に
④ ごく簡単な質問で終わる
⑤ 軽めのフィードバックを頻度高めで
①、②、③、⑤は理論に基づく。特に①については、これまで解説してきた通りだ。フィードバックは可能な限り、即時的な方がいい。
②は「情報的側面」を強調したフィードバックの応用だ。情報的側面と言われても、実際の現場ではどのように応用したらいいか、とても難しいことと思う。
そこで、「情報的」という部分を「具体的」に変換することをおすすめする。
例えば、仮にこの具体性を欠くと、どうなるのか。
「さっきの会議の資料、さすがだねー」で終わってしまうのだ。ここはぜひ、若手の気持ちになって受け取ってみてほしい。そのフィードバックには、かすかだが「おだて」や「期待」等が含まれてしまう。つまり「圧」だ。
「期待圧」を感じるフィードバックを受けると、いい子症候群の若者はほぼ100%の確率で否定する。「いやいやいや、そんなことはないです。やめて下さい」といった感じだ。これを悪い例として記憶していただきたい。
フィードバックは具体的かつ頻度高めに
フィードバックは具体的であればあるほど、その内容にフォーカスできる。ストレートに、そのフィードバックを次の機会に活かす、という気持ちになる。
③は、②とは逆に「統制的側面」を打ち消したいための提案だ。
これも、自分を主語にしないパターンを考えてみたら、わかりやすいかもしれない。「私」や「思う」などを除くと、どうしても「そうするのが正しい」といったニュアンスが内包され、高圧的になってしまう。
④は僕のオリジナルだ。先の僕の提案文から、後半の質問文を除いてみてほしい。あるいは、単に「お疲れさま」と締めくくるか。
これだと対話にならない。生まじめな若手であれば、何か返答しなきゃ、という変なプレッシャーをかけてしまう。
フィードバックする際には、ごく簡単で、かつストレスのない対話を心掛けた方がいい。そのための質問文締めだ。
この程度の簡単な質問なら、誰でも返せるだろう。例えば、「そうですね、先輩たちを参考に、少しだけ自分でアレンジして」といった感じのリアクションが返ってくる。
そこで、もう1回だけ対話を入れてみよう。
「そうなんだ。今度参考にさせてもらうわ。ありがと」
こんな一言を、笑わないで(あるいはほんの少しの微笑程度で)返してみよう。そこにはもう、統制的側面は含まれない。
良かったと思ったから良かったと言った。勉強になったからお礼を言った。
それだけ。
そのフィードバックを受けた若手は、「工夫してよかった。また考えてやってみよう」と思い、自分の努力に自信を持つようになる。
効果的なフィードバックの原則は、もう1つだけあった。⑤「軽めのフィードバックを頻度高めで」だ。
言葉通り、なるべく具体的で軽いのを、「数多め・頻度高め」でお願いしたい。
実際、どのくらいの頻度がいいのかというと、僕の提案は、ずばり「2日に1回」だ。
本当は毎日でもいいと思うのだが、さすがにあざといと思われるかもしれない。もう少しはっきり言うと、ちょっと嘘くさくなる。
別に週に1回程度でも構わないと思うのだが、仮に忘れてしまったり、出張などが入ってしまうと、途端に間が空いたように感じられてしまう。
ということで、理想は週に2回程度、最低でも週に1回と覚えておいてもらえればと思う。