万一の事故時に注意すべき点は?
街中を歩いているときに、走行中の特定原付と衝突してけがを負ってしまうことも考えられます。
「特定原付の最高時速は20km。これは一般的な自転車より若干速く、ロードバイク(※1)よりは遅い程度の速度ですので、それほど速いと感じないかもしれません。しかし自転車と歩行者の交通事故では、出会い頭で打ちどころが悪い場合などでは重大な後遺症が残ったり、死亡したりというケースも見られます。特定原付と歩行者との交通事故でも同様だと考えられます」(林先生)
ここで気を付けたいのは、自賠責保険で支払われる保険金は、後遺症が残る事故の場合は被害者1人につき最大4000万円、死亡事故の場合は被害者1人につき最大3000万円と、限度額が決まっていることです。
特定原付では、原付同様に任意保険には入らず、自賠責保険のみに加入して運転している人もいるのではないでしょうか。
「そのような特定原付との交通事故で被害者になった場合は、自賠責保険だけでは補償額が足りないことも起き得ます。そういったケースでは、不足分については被害者側が加害者に損害賠償請求を行うことになりますが、解決まで時間がかかってしまうこともしばしばです」(林先生)
歩行者などの安全のために、特定原付に乗る人のルール遵守や、警察の適切な指導が求められます。
※1 元々、自転車レース用に開発された自転車のこと。
特定原付はここを走ります
原則
・車道と歩道または路側帯の区別がある場所では、車道を通行(自転車道も通行可能)
・車道では、左端に寄って通行
車道では左側を走ります
車道と歩道から成る道路では、進行方向の車道の左端を通行しなければなりません。車道の中央や右側の通行や逆走は違反です。
自転車道も走れます
車道の脇に、歩道とは別に縁石や柵で区切られた自転車道がある場合は、車道に加えて自転車道も通行することができます。
自転車専用通行帯のみ走れる場合
車道の左端に専用レーンとして自転車専用通行帯が設置されている場所では、特定原付は自転車専用通行帯のみ通行可能です。
時速6km未満なら、歩道を走れる場合もあります
特定原付は、「車両の構造上、最高時速6km以上を出せないようにする」「緑色の最高速度表示灯を点滅させている間は、時速6km以上出せない」などの一定の条件を満たすことで、特例特定原付として「普通自転車等及び歩行者等専用」の道路標識が設置されている歩道が通行可能になります。「ただし、歩行者優先ですのでご注意を」(林先生)
また、「特例特定原付でも特定原付でも、車を運転する方はこれまで以上に注意が必要になるでしょう。左折巻き込み事故などのリスクが増えることが考えられます」と、林先生は続けます。
構成・取材・文/仁井慎治 イラスト/やまだやすこ