「今年こそ海外旅行へ」コロナ禍前から変わった点や注意点を、JTB総合研究所の研究員が伝授

そろそろ海外旅行に行きたいと思っている人も多いのではないでしょうか。コロナ禍を経て、海外旅行の状況も変わってきています。今回はコロナ禍以前から変わった点や注意すべき点について、JTB総合研究所の宮崎沙弥(みやざき・さや)さんと山田晴子(やまだ・はるこ)さんにお話を伺いました。

出入国審査は簡単に。ただし注意点も

5月8日より新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類に変わりました。

これにより、国や市町村などから一律に感染対策を求められることがなくなり、身近な人が新型コロナにかかっても濃厚接触者として特定されることもなくなりました。

「そろそろ海外旅行に出かけたい」と考えている人も多いのではないでしょうか?

日本からの海外旅行について調べている宮崎沙弥さんと山田晴子さんは「日本の水際対策は、コロナが5類に変わる少し前の4月28日で終了しています。これによって帰国時に新型コロナのワクチン接種証明や検査を受けての陰性証明の提出が不要になり、基本的にはコロナ禍以前の状態に戻ったと言えるようになりました」と話します。

しかし、コロナ禍以前の海外旅行とは変わった部分もあるそう。

まずは出入国審査の自動化、いわゆる顔認証ゲートが導入されたことです。

これまでは対面で審査が行われていましたが、「いまは顔認証で出入国できる顔認証ゲートが国内の主要国際空港で導入され、スムーズに出入国できるようになっています」(宮崎さん)。

顔認証ゲートはコロナ禍前の2018年以降、順次主要国際空港で導入されていましたが、久しぶりの海外旅行に出かける人は、出入国の手順が変わったことで驚くかもしれません。

とはいえ、使い方は下のように簡単。事前登録も不要です。

顔認証ゲートでの出入国

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(1)顔認証ゲートへ
顔認証ゲートはICパスポートを持っていれば事前登録なしで使用可能。2006年3月20日以降の申請分から、原則ICパスポートが発行されています。

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(2)ICパスポートを読み取り
ICパスポートの顔写真のページを開いて、顔認証ゲートの青色のライトが点滅している箇所に置きましょう。読み込みを開始します。

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(3) 顔写真を撮影して照合
顔認証ゲートに内蔵されているカメラが顔写真を撮影し、照合します。帽子やマスク、サングラスを外してまっすぐ前を向きましょう。

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(4)出入国スタンプは省略
顔認証ゲート利用時は、ICパスポートへの出入国スタンプは省略。ただしスタンプが欲しい場合はもらえるので、最寄りの職員へ問い合わせを。


「また、帰国時の入国審査と税関申告を簡略化できるオンラインサービス(※)も開始されています。ただしこれは帰国前、事前にパソコンやスマホで必要事項を入力する作業が必要になります。帰国時の税関申告ではスマホに表示される二次元コードを読み取らせるだけなのでスムーズになりますが、難しいと感じる場合は無理をせず、これまで通り手書きで申告書類に記入して提出した方がいいかもしれません」(宮崎さん)

※ Visit Japan Web サービス https://vjw- lp.digital.go.jp/ja/

他にも注意点はあると言います。「日本国内でも同じことが言えるのですが、コロナ禍の影響で閉店してしまった宿泊施設やホテルがあることも。また、渡航先の国や地域で物価が上昇傾向にあるのも日本と同様です。さらに、為替レートもコロナ禍以前とは変わっています。海外旅行前には、できる限り最新の情報をチェックしておくことをおすすめします」と、宮崎さん。下で紹介している3点は、特に注意した方がいいそうです。

これからの海外旅行での注意点

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閉店や営業時間の変更に要注意
日本同様に、コロナ禍の影響で以前はあった宿泊施設や飲食店、土産物店が閉店していたり、営業時間が大幅に変更になっていたりするケースが見られます。
「特にガイドブックは大幅に情報が変わっている可能性があるの で、いつ発行されたものか注意が必要です」(山田さん)

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空港の人員や航空便削減の影響も
「意外と見落とされがちですが、コロナ禍の最中は各国とも空港の人員を削減していて、その影響がまだ残っています。入国ゲートが自動化されていない国では、長蛇の列になることも。余裕をもった行動を心がけた方がいいと思います」と、宮崎さん。
さらに航空便の本数もこの数年は削減されていました。「海外旅行を予定している人は、早めに航空便を予約した方がいいかもしれません。便数がまだコロナ禍以前の水準に戻りつつある途中ですので、そもそも座席数が少ないのです」(山田さん)

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物価の高騰にも気を付けて
物価が上昇傾向なのは、日本だけではなく海外も同様です。「加えて為替レートやエネルギー資源高騰の影響もあり、飲食物や土産物だけではなく現地でのツアーなどの価格も大幅に値上がりしている場合もあります。国によっては、コロナ禍以前と比べて現地のツアーの価格がほぼ倍の値段になっていた、という話も聞きます」(宮崎さん)


この夏おすすめの海外旅行先は?

この夏の海外旅行で、おすすめの国はどこでしょうか。

山田さんは「多くの人が数年ぶりの海外旅行になると思います。治安も安定していて日本語も通じやすいハワイや、フライト時間が短くて体への負担が少ない韓国や台湾、あるいは時差がほとんどないオーストラリアなどがおすすめです。特に韓国は、『行きたい旅行先』の調査結果では人気が急上昇しており、まずは近くの国から海外旅行を再開と考えている人も多いようです」と言います。

変更点にも注意点にも気を付けて、久しぶりの海外旅行を楽しみたいですね。

※ この記事は6月6日時点の情報を基にしています。

取材・文/仁井慎治 イラスト提供/やまだやすこ

 

<教えてくれた人>

JTB 総合研究所 事業共創部 研究員
宮崎沙弥(みやざき・さや)さん/山田晴子(やまだ・はるこ)さん

生活者の意識や行動変化をリサーチ・分析し、その結果旅行にもたらされる変化等をテーマに調査・研究に取り組んでいる。主に研究・分析の対象にしているのは海外旅行者の動向や消費行動。

この記事は『毎日が発見』2023年7月号に掲載の情報です。

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