「バカヤロー解散」に「死んだふり解散」...⁉ 今さら聞けない「衆議院の解散」ってどういうこと?

総理大臣、選挙、憲法改正など話題の尽きない日本の政治。とはいえ、話が大きすぎてよく分からないという人も少なくないでしょう。そこで、カリスマ塾講師・馬屋原吉博さんの著書『今さら聞けない 政治のキホンが2時間で全部頭に入る』(すばる舎)から、「わかりやすい政治用語の基本」の一部を抜粋してお届け。基本を知ると、今の世の中がよくわかります。

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総理大臣に与えられた2つの権利

総理は国務大臣を自由に選べる!?

日本の内閣総理大臣には非常に大きな2つの権利が与えられています。

1つ目が「国務大臣の任免権」です。

総理は国務大臣を、「全員が文民」「過半数が国会議員」という条件の中で自由に選ぶことができます。

また、総理は国務大臣を自由に辞めさせる力も持っています。

この、選ぶ権利「任命権」と、辞めさせる権利「罷免権」を合わせて、「国務大臣の任免権」と呼んでいます。

とはいえ、多くの場合、日本の総理は自民党の総裁を兼ねています。

総裁の地位を守るためには、ときに、大臣の人事で派閥間のバランスをとったり、大臣になりたがっているベテラン議員の期待にこたえたりする必要も出てきます。

そのため、任免権があるからといって、本当の意味で好きなように大臣を選べるわけでもないようです。

総理が「解散」と言えば解散!?

総理に与えられたもう1つの大きな権利は、「衆議院の解散権」です。

憲法上、「衆議院の解散権」を持つとされているのは「内閣」ですが、実際のところ内閣総理大臣は、ほぼ自分だけでこの「衆議院の解散」を決めることができます。

衆議院を解散すれば、衆議院議員は全員失職します。

総理大臣も原則として衆議院議員ですから、自分自身も失職します。

総理も含め、引き続き国会議員を務めたい人は、そのあと40日以内に行われる総選挙の準備に全力で取り組まなければなりません。

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「69条解散」と「7条解散」

「衆議院の解散権」について、もう少し細かく見てみましょう。

衆議院が内閣不信任決議を可決した場合(もしくは信任決議案を否決した場合)、内閣は10日以内に衆議院を解散することができる、ということは憲法69条に明記されています。

ただ、これ以外のタイミングでも解散できるのかどうか、という点に関しては、いくつかの学説があります。

現在では、内閣の助言と承認に基く天皇の国事行為に「衆議院の解散」を含めている憲法7条を根拠に、内閣に自由に解散権を認める考え方が一般的です。

「大義なき解散」で批判を浴びることも

総理大臣としては、自分の政党が選挙で最大限勝てるタイミングで解散することができれば理想的です。

だからこそ、「衆議院が内閣の重要案件を否決した」とか、「前回の総選挙の争点でなかった政治的な課題に対処しようとしている」といった理由がない解散は、与党に批判的な人々から「大義なき解散」という批判を浴びることもあります。

ただ、いついかなるときも、解散・総選挙は、国民が政治に対する意思を表明する貴重な機会であるのもたしかです。

ちなみに、地方公共団体の首長(都道府県知事や市町村長など)は、原則として地方議会が自分に対する不信任決議を可決させたときしか、議会を解散させることはできません。

「衆議院の解散」はその後の総選挙とセット

過去の印象的な解散

●バカヤロー解散/第四次吉田茂内閣・1953年3月14日

吉田首相が国会での質疑応答中に「バカヤロー」と発言したことをきっかけとして解散

天の声解散/第一次鳩山一郎内閣・1955年1月24日

解散の日に理由を問われた鳩山首相が「天の声を聞いたからです」と返答

田中判決解散/第一次中曽根康弘内閣・1983年11月28日

田中角栄元首相がロッキード事件で実刑判決を受けたことで、国会が大荒れとなり解散

死んだふり解散/第二次中曽根康弘内閣・1986年6月2日

中曽根首相が「解散はできない」と思わせる発言を重ねたうえで解散

●神の国解散/第一次森嘉朗内閣・2000年6月2日

森首相の「神の国発言」などが野党やマスコミの集中攻撃を受け解散

●郵政解散/第三次小泉純一郎内閣・2005年8月8日

小泉首相肝入りの郵政民営化関連法案が否決されたことを受けて解散

総理になるための隠れた条件

1955年以降、自民党が与党を構成することが多い日本の国会では、自民党の代表(総裁)が総理大臣に指名されるケースが非常に多いです。

憲法は総理大臣の任期に「連続〇回まで」という制限は設けていませんが、自民党の総裁の任期には制限があります。

自民党結党以来、自民党の総裁の任期は2年か3年の間で度々変更されてきました。

これに、1974年以降「連続2期まで」という制限が設定され、中曽根康弘氏や小泉純一郎氏は、この制限をきっかけに総理を辞めています。2017年には、この制限が「連続3期まで」と変更されました。

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140-H1全8章にわたってカリスマ塾講師が政治に関するさまざまな用語をわかりやすい図解で解説しています

 

馬屋原吉博(うまやはら・よしひろ)
中学受験専門・個別指導教室SS-1社会科教務主任。中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員。大手予備校や進学塾で、大学・高校・中学受験の指導経験を積み、現在は完全1対1・常時保護者の見学可という環境で中学受験指導に専念。開成、灘、桜蔭、筑駒といった難関中学に、数多くの生徒を送り出す。著書に『CD2枚で古代から現代まで 聞くだけで一気にわかる日本史』(アスコム)などがある。

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『今さら聞けない 政治のキホンが2時間で全部頭に入る』

(馬屋原吉博/すばる舎)

通常国会や予算委員会、審議会に憲法改正など、ニュースでたくさん聞くけど、結局それって何なの?何のためにするの?今さら聞けないそんなモヤモヤを、中学受験のカリスマ塾講師がわかりやすく解説。「政治」が私たちの生活に密接にかかわっていることがわかる一冊です。

※この記事は『今さら聞けない 政治のキホンが2時間で全部頭に入る』(馬屋原吉博/すばる舎)からの抜粋です。

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