総理大臣、選挙、憲法改正など話題の尽きない日本の政治。とはいえ、話が大きすぎてよく分からないという人も少なくないでしょう。そこで、カリスマ塾講師・馬屋原吉博さんの著書『今さら聞けない 政治のキホンが2時間で全部頭に入る』(すばる舎)から、「わかりやすい政治用語の基本」の一部を抜粋してお届け。基本を知ると、今の世の中がよくわかります。
総裁の下の幹部役員「党五役」。幹事長は事実上ナンバー2
多くの場合、総裁が内閣総理大臣の座に就くことが多い自由民主党において、党務全般を握るのが「幹事長」です。
選挙全般の指揮を執るという重要な役割を担っており、党内において非常に大きな力を持っていると言われています。
筆者としては、小泉純一郎総裁の下、いわゆる「小泉チルドレン」の教育に奔走していた武部勤幹事長が印象に残っています。
自民党が与党である際は、内閣が国会に提出する予算案や法案は、事前に25名の党員によって構成される総務会を通じて、各グループの了承を得る必要があります。
この総務会のとりまとめ役が「総務会長」です。
役職中は大臣にならないのが一般的
また、自民党の政策は、国会議員や学識経験者で構成される政務調査会で研究・立案されます。
この政務調査会の運営者、いわば自民党の政策立案の要となるのが「政務調査会長(政調会長)」です。
政調会長と副会長によって認められた政策が総務会に送られます。
「党三役」という言葉を使うときは、ここまでの「幹事長」「総務会長」「政調会長」の3つの役職を指します。
近年では、これに選挙の実務を担う「選挙対策委員長」を加えて「党四役」、さらに総裁を補佐する重鎮である「副総裁」を加えて「党五役」という言葉で、自民党の幹部役員を表すことが多くなっています。
明確な規定はありませんが、これらの幹部役員は、党務に注力するため、その役職についている間は国務大臣には任命されないのが一般的です。
再び存在感を増してきている「「大選挙区制」の頃は派閥のボスに力があった
かつて、自民党に関わるニュースでは、「田中派(木曜クラブ)」「池田派(宏池会)」「竹下派(経世会)」といった「派閥」についてよく耳にしました。
1994年に公職選挙法が改正されるまで、衆議院の選挙制度は「大(中)選挙区制」でした。
大選挙区制では、1つの選挙区から複数人が当選するため、必然的に自民党の候補者同士が争うことになります。
その中で、自民党の議員たちが、選挙の際の応援演説や費用の援助が可能な有力者の下にそれぞれ集まった結果、派閥の存在感が大きくなっていきました。
これが、1994年の公職選挙法改正によって、1つの選挙区から1人しか当選できない「小選挙区」が導入されたため、その「1人」を決める党本部、とくに幹事長の権限が強くなりました。
さらに1999年、政治資金規正法が改正され、企業・団体の献金先が党に一本化された結果、派閥のボスが個人で資金を集めるのも難しくなったようです。
政局に合わせて姿を変えていくそのような流れの中で、小泉純一郎総理が派閥の意向を無視した国務大臣選びをしたこともあり、派閥の存在感は徐々に薄れていきました。
とはいえ、2018年9月、安倍晋三総裁が3選を決めた自由民主党の総裁選に際して、再び、「細田派(清和政策研究所)」「二階派(志帥会)」「岸田派(宏池会)」といったフレーズを頻繁に耳にするようになりました。
権力者の集団である自由民主党が、日々、政局に合わせて姿を変えていくのは今も昔も同じようです。
※2018年9月当時
全8章にわたってカリスマ塾講師が政治に関するさまざまな用語をわかりやすい図解で解説しています