総理大臣、選挙、憲法改正など話題の尽きない日本の政治。とはいえ、話が大きすぎてよく分からないという人も少なくないでしょう。そこで、カリスマ塾講師・馬屋原吉博さんの著書『今さら聞けない 政治のキホンが2時間で全部頭に入る』(すばる舎)から、「わかりやすい政治用語の基本」の一部を抜粋してお届け。基本を知ると、今の世の中がよくわかります。
「行政」とは
学生相手に「行政」の意味を説明するときは、「国会が作った法律に基づいて政治を行うことです」と説明することが多いですが、実際はもう少し複雑です。
たとえば、法律を改正して「消費税率を上げる」と決めたとしても、それを日本の隅々において実現させるには、具体的に、どれだけのことを決めて、どれだけのことを実行していかなければならないでしょうか。
想像するだけでクラクラしてきそうですが、そのすべてが「行政」という言葉でくくられているわけです。
行政=国家作用-(立法+司法)
「立法(法律を作ること)」や「司法(裁判を行うこと)」に比べると、「行政」の内容はあまりにも多岐にわたるため、むしろ、あらゆる国家のはたらきから「立法」と「司法」を除いたものを「行政」と呼ぼう、という考え方が有力です。
三権分立が実現するまでの歴史は、すべての国家権力を一手に握っていた絶対君主から、立法権と司法権を引きはがしてきた歴史だと見ることもできるため、この定義はあながち無理やりな定義でもないようです。
日本国憲法は、行政は「内閣」が担当すると定めています。
そして、行政を司る内閣の長が「内閣総理大臣」です。
多くの大臣は各省庁のトップ
では、行政を担当する「内閣」とは、いったいどんな組織なのでしょうか。
内閣とは、内閣総理大臣(以下、総理大臣)と国務大臣の集まりです。
国務大臣とは、財務大臣や外務大臣といった、総理大臣以外の大臣をまとめて呼ぶ言葉です(総理大臣を含めて使用することもある)。
財務大臣は財務省の、外務大臣は外務省の責任者であるように、多くの国務大臣は省庁のトップを務めています。
また、総理大臣を補佐する「内閣官房」の長である内閣官房長官、「沖縄及び北方対策担当大臣」や「金融担当大臣」のような、内閣府に所属する特命担当大臣も国務大臣に数えられます。
国会議員でない人も大臣になれる
国務大臣の数は内閣法で14~17名と定められていますが、2018年9月には(東日本大震災)復興大臣と東京オリンピック・パラリンピック担当大臣の2名を加えた、最大19名が国務大臣に任命されています。
誰を何大臣に据えるかを決める権限(「国務大臣の任命権」)は、総理大臣が持っています。
国務大臣は、全員が「文民」(軍人ではない人)でなければならず、かつ、その過半数が「国会議員」でなければなりません。
ちなみに、総理大臣は国務大臣を辞めさせる権限も持っています。
これを「国務大臣の罷免権」と呼びます。
「サイン会」と呼ばれることもある!?
総理大臣と国務大臣による会議を「閣議」と呼びます。
定例の閣議は、毎週火曜日と金曜日の午前中に開かれており、法案を提出するかどうかといった内閣の意思は、この場で最終的に決められます。
とはいえ、閣議は、大臣たちが毛筆で「花押」と呼ばれる署名をしている時間が長く、活発な議論の場にはなっていないのではないか、という批判がなされることもあります。
総理に反対する大臣はクビになる!?
閣議の大きな特徴は、非公開であること、そして「全会一致制」であることです。
一定の数の人が賛成すれば決まる「多数決制」とは異なり、参加者全員が賛成しないと決まらないのが「全会一致制」の会議です。
日本国憲法は、「内閣は、行政権の行使について、国会に対して連帯して責任を負う」と規定しています。
「連帯して」とは「全員で」という意味ですから、閣議も「全会一致制」で運営されるべきだと考えられます。
会議の参加者が対等である限り、ひとつの議題に関して全員が賛成するという状況は考えにくいものです。
しかし、総理大臣には「国務大臣の罷免権」があるので、総理が進めたい政策に反対する国務大臣がいる場合、総理大臣はその大臣をクビにすることができます。
そのため、閣議は全会一致制で進めることが可能となっています。
全8章にわたってカリスマ塾講師が政治に関するさまざまな用語をわかりやすい図解で解説しています