「ジェルと炭の消臭剤ってどっちがいい?」「部屋干し用洗剤って普通のと何が違う?」など、ふだんの暮らしで浮かんでくる日用品の小さな疑問。化学成分と洗浄化学の専門家・かずのすけさんの著書『秒でわかる! 最強の家事―暮らしは、化学でラクになる!』(ワニブックス)から、その答えを連載形式でお届けします。これさえ分かれば「何となく...」で買っていた日用品の選び方が変わってくるかも。
キッチンの汚れの正体は油脂。固まった油にはアルカリ剤を
キッチンの代表的な汚れといえば、油汚れでしょう。ベタベタ、ギトギトしてなかなか落ちないイメージがありますが、その正体は「食用油脂」です。油には様々な種類がありますが、キッチンで使っている油は食用油脂しかありません。
本来、日常の料理程度で出る油脂汚れなら、洗浄力の高い洗剤を使わなくても手肌に優しい両性イオン系の住居用洗剤をふきんに湿らせて拭くだけでもキレイに落ちます。できればキッチンは、汚れたらその都度このようにしてキレイにしておくことをお勧めします。
というのも油脂汚れは放置すると空気中の酸素によって酸化してしまい、固まって固着汚れになってしまうからです。こうなると優しい界面活性剤の力のみでは落とし切れず、アルカリ剤を使う必要が出てきます。固まった油脂でもアルカリ剤を作用させると加水分解という反応が起こり除去できます。ただし、この反応にはある程度強いアルカリが必要なので、セスキ炭酸ソーダや炭酸ソーダを用意しましょう。
キッチン汚れに「重曹」は×。アルカリ剤より洗剤の方が低刺激!
最近では「洗剤(界面活性剤)は良くないものだ」という考えから、固まっているわけでもない普通の油脂汚れにも「重曹」や「セスキ炭酸ソーダ」を使用する人も増えているのだとか。これらのアルカリ剤は下にまとめているようにナチュラル洗剤とはいっても「炭酸水素ナトリウム」や「炭酸ナトリウム」などの化学成分です。
重曹の主成分である炭酸水素ナトリウムは水に非常に溶けにくいのでアルカリの効果も弱く、もはや単なる粉末の研磨剤のようなものですし、キッチン汚れに使用するには不適です。
セスキ炭酸ソーダは炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの混合物で、アルカリもやや強め。固着した油脂汚れもある程度落とせるものの、手肌に付着すると皮膚表面を溶解してしまう懸念があります。炭酸ソーダ(炭酸ナトリウム)はさらに強力なので、素手で使用してはいけません。両性イオン界面活性剤なら素手で触っても刺激はないので、アルカリ剤を積極的に使用するより低刺激な洗剤を使用した方が手肌には優しいです。
ナチュラルクリーニング成分一覧
自然の成分でお掃除をしよう!という発想から生まれたナチュラルクリーニングには「重曹」「セスキ炭酸ソーダ」「炭酸ソーダ」「過炭酸ソーダ」「クエン酸」などが利用されています。これらの成分の性質をまとめました。
●重曹
[炭酸水素Na]pH=8.2
微アルカリ性のアルカリ剤。水に溶けにくく、アルカリ性による洗浄剤としてよりも研磨剤としての効果の方が高い。手肌への刺激はマイルドだが、洗浄力は高くない。
●セスキ炭酸ソーダ
[炭酸Na+炭酸水素Na]pH=9.8
重曹と炭酸ソーダの混合物。弱い加水分解作用により油脂汚れにある程度有効。弱い皮膚刺激がある。
●炭酸ソーダ
[炭酸Na]pH=11.2
やや強めのアルカリ剤で、油脂に使用すると弱い加水分解が起こり、ある程度洗浄できる。弱い皮膚刺激がある。
●過炭酸ソーダ
[過炭酸Na]pH=10.5
炭酸ソーダに酸素系漂白剤の「過酸化水素」を混合したもの。過酸化水素はアルカリ性で酸化力が上昇するため、より強力な酸素系漂白剤となる。皮膚や粘膜への刺激は強力。
●クエン酸
[クエン酸]pH=2.1
果物にも含まれる酸味成分。酸性でアルカリ性金属の固着汚れを中和して洗浄できる。キレート作用もあるので水垢などには最適。酢酸と異なり比較的低刺激で、かつ無臭。目への刺激は強い。
●お酢
[酢酸]pH=2.4
食用酢の主成分。クエン酸と同様の使い方で良いが、キレート作用は持たず、揮発性があり刺激臭を放つ。また低濃度なら刺激は弱めだが無刺激ではない。目への刺激は強い。
※pHは全て1%、25℃の値
◎POINT
これらの成分を使えばキッチンの油の固着汚れなども、ある程度お掃除しやすくなります。ただしナチュラルにこだわりすぎて通常の洗剤類を一切使わずにお掃除するには効果がイマイチだったり、かえって手肌に刺激になる場合もあるので、長所短所を把握して上手く活用しましょう。
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