「ジェルと炭の消臭剤ってどっちがいい?」「部屋干し用洗剤って普通のと何が違う?」など、ふだんの暮らしで浮かんでくる日用品の小さな疑問。化学成分と洗浄化学の専門家・かずのすけさんの著書『秒でわかる! 最強の家事―暮らしは、化学でラクになる!』(ワニブックス)から、その答えを連載形式でお届けします。これさえ分かれば「何となく...」で買っていた日用品の選び方が変わってくるかも。
汚れも雑菌も分解する「酵素」の働き
部屋干し用と普通の洗濯洗剤の一番の違いは、生乾きの臭いの原因となる菌類の繁殖を抑える工夫がされているかどうかです。菌類の繁殖を抑えるというと「抗菌剤」が使われていそうですが、洗濯洗剤の場合は少し意外な成分が。実は洗濯洗剤で生乾きの臭いを撃退してくれている成分は「酵素」。
洗濯洗剤に入っている酵素は主に「タンパク質分解酵素」と呼ばれるもので、名前の通りタンパク質を分解する働きがあります。本来は衣類に付着した襟垢や角質汚れ、血液汚れなどの「タンパク質汚れ」を洗浄する働きをする成分ですが、雑菌もタンパク質で構成されているため同時に分解してくれます。ミクロな雑菌にとってはタンパク質分解酵素が殺菌剤として働くのです。
ちなみに洗剤に用いられている酵素の効果が最も高まるのはおよそ50℃程度のお湯と言われています。普通の水でも十分効果は期待できますが、より汚れを落として臭いを防止したい場合はお湯洗いがお勧めです。
酵素が残留すると肌荒れの原因にも...
酵素入りの洗剤は汚れや臭いがよく落ちますが、デメリットもあります。それは、酵素は皮膚刺激になりやすく、衣類に残留しやすい成分であること。
タンパク質分解酵素はタンパク質汚れや雑菌を分解できる、という話をしましたが、タンパク質でできているのはなにも汚れや雑菌だけではなく、人の皮膚などの組織も同じくタンパク質です。そのため皮膚に付着すると皮膚にも悪影響になる場合があります。
また、酵素は分子量が大きく繊維などにも付着しやすいため、水で流しても100% 落ちるとは言い切れず、衣類に残留してしまう場合が多いのです。肌への影響を危惧する場合はより入念にすすぎをした方が良いでしょう。
酵素洗剤は洗浄力の向上や臭いの防止作用などで良い面も多くありますが、アトピーや、肌が荒れやすい敏感肌の人にはあまりお勧めできません。赤ちゃんなど小さいお子さんの衣類を洗うのにもあまり適しません。肌に優しく臭いを防止したい場合は、やはり天日干しや乾燥機が一番です。
主な酵素の働きと種類
酵素とは「特定の物質を分解する作用を持つタンパク質」です。合成する酵素もありますが、基本的には分解作用が一般的。以下は主な酵素の種類です。
<酵素作用メカニズム>
●主な酵素―――――――――→分解できるもの
アミラーゼ―――――――――→デンプン(ご飯)
マルターゼ―――――――――→マルトース(麦芽糖)
インベルターゼ(スクラーゼ)→スクロース(砂糖)
リパーゼ――――――――――→油脂(脂質)
ペプシン、トリプシン――――→タンパク質
ペプチダーゼ(プロテアーゼ)→タンパク質
◎POINT
酵素入り洗剤には、主にタンパク質分解酵素が入っているので、タンパク質が主成分の血液汚れ、襟垢汚れなどを落とすことができます。膠(にかわを)含む「墨汁」も、実はタンパク質なので墨汁汚れにも有効。ただし人の皮膚もタンパク質なので、肌が弱い人は注意。
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イラスト/nobushiro
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