「ジェルと炭の消臭剤ってどっちがいい?」「部屋干し用洗剤って普通のと何が違う?」など、ふだんの暮らしで浮かんでくる日用品の小さな疑問。化学成分と洗浄化学の専門家・かずのすけさんの著書『秒でわかる! 最強の家事―暮らしは、化学でラクになる!』(ワニブックス)から、その答えを連載形式でお届けします。これさえ分かれば「何となく...」で買っていた日用品の選び方が変わってくるかも。
マイルド表示の正体は「非イオン界面活性剤」
結論から言うと、「手荒れしない洗剤」というものは存在しません。ただし、主成分の界面活性剤の種類によっては肌そのものへの刺激がマイルドになっている場合があります。
界面活性剤には4つの種類があり、食器用洗剤には主に「陰イオン界面活性剤」が配合されています。「陰イオン界面活性剤」は泡立ちに優れ、様々な汚れを幅広く落とせる一方で、手肌への刺激性が懸念されるのが欠点。
対して"マイルド"や"手肌に優しい"といった表示のある食器用洗剤は、「非イオン界面活性剤」が主成分の場合が多いです。この成分は泡立ちや洗浄機能は限定的ですが、手肌そのものへの刺激は非常にマイルド。しかし、「非イオン界面活性剤」は「油汚れ」を落とすのは比較的得意なので「脱脂力」自体はそれなりに強く、手肌への刺激はないのですが、皮膚表面の皮脂などのバリア成分を除去します。結果として、通常の陰イオン系よりはいくらかはマシなものの「手荒れしない」とは言えないということになります。
優しすぎるとお皿が洗えない...!?
食器用洗剤の中には稀に「両性イオン界面活性剤」が用いられているものもあります。ただし、このタイプの界面活性剤は洗浄力が非常に低く、確かに手肌には優しいのですが、どれだけ流してもお皿やフライパンの油が残ってしまうなんてことも......。忙しい家事の中でお皿洗いに時間がかかるのはとてもストレスですし、どれだけ優しくても長時間触れ続ければ当然手荒れは進行します。結局のところ「肌に優しい洗剤」でも手は荒れてしまうのです。
手荒れを改善させたい場合、洗剤の刺激は洗剤濃度に比例するので、"予め洗剤を薄めて使用する"という方法もあります。食器用洗剤は界面活性剤濃度が40%近くととても濃いものも多いのですが、界面活性剤は1%~5%程度が最も洗浄力を発揮するので、この場合20倍以上に薄めても十分洗浄可能です。予め水を加えて5倍くらいに薄めておくと、コスパも良くなりますし、手肌への負担を減らせます。
界面活性剤の種類
陰イオン界面活性剤(弱い皮膚刺激あり)
洗浄機能に優れ、泡立ちが良く洗濯洗剤、食器用洗剤などに主に配合。洗顔料やシャンプーの主成分でもある。マイナスの静電気を帯びる性質があり弱い皮膚刺激を持つ。有名なものに「石鹸」「直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩」「アルキルエーテル硫酸エステル塩」などがある。
非イオン界面活性剤(毒性・皮膚刺激なし)
油分の可溶化・乳化作用に優れるため洗濯洗剤や食器用洗剤の補助洗剤として主に利用。化粧品の場合は塗布化粧品の乳化剤などに。毒性や刺激を持たず、食品添加物として利用されることも。有名なものに「ポリオキシエチレンアルキルエーテル」「アルキルグリコシド」「ステアリン酸グリセリル」「ポリソルベート」などがある。
◎POINT
「マイルド」「手肌に優しい」などの表示のある食器用洗剤には非イオン界面活性剤が主成分として配合されているケースが多め。ただし油汚れを落とす力(脱脂力)はそれなりに強く、全く手荒れしないわけではありません。
陽イオン界面活性剤(毒性・皮膚刺激あり)
陰イオン界面活性剤とは逆にプラスの静電気を帯びる性質があり、柔軟剤やトリートメントとして利用される。帯電を防止し潤滑性を与えるが、毒性や皮膚刺激が強いため殺菌剤に利用される成分もある。「エステル型ジアルキルアンモニウム塩」「アミド型アルキルアミン塩」「塩化ベンザルコニウム」などがある。
両性イオン界面活性剤(毒性・皮膚刺激なし)
1つの成分内に陰イオン・陽イオン両方の性質を持つが、分子内で電気的バランスが取れているため毒性や皮膚刺激は極めて弱い。ベビーソープやマイルド系の洗浄成分として様々な洗浄系アイテムに配合。「アルキルアミンオキシド」「アルキルベタイン」「レシチン」など。
◎POINT
消臭スプレーには、陽イオン系のものと両性イオン系のものがありますが、毒性などを考えると安全性の高い両性イオン系を選びたいものです。殺菌・消臭効果は弱め。寝具や衣類はなるべく洗濯しましょう。
イラスト/nobushiro
生活雑貨、洗濯用洗剤、掃除用品、ボディケア用品といった4テーマを解説。著者が推薦する25のアイテム紹介も