スプレーするだけでOK?やっぱりこする?「お風呂掃除」の化学

「ジェルと炭の消臭剤ってどっちがいい?」「部屋干し用洗剤って普通のと何が違う?」など、ふだんの暮らしで浮かんでくる日用品の小さな疑問。化学成分と洗浄化学の専門家・かずのすけさんの著書『秒でわかる! 最強の家事―暮らしは、化学でラクになる!』(ワニブックス)から、その答えを連載形式でお届けします。これさえ分かれば「何となく...」で買っていた日用品の選び方が変わってくるかも。

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スプレーするだけでOK?お風呂洗剤はこすり洗いが推奨

お風呂掃除に手間をかけたくないという主婦の気持ちに寄り添うかのように、「スプレーするだけで汚れが落ちる」と書いてあるお風呂洗剤をよく見かけますが、個人的にはこれには疑問です。

なぜなら、洗剤の主成分である界面活性剤は、汚れを分解したり溶かしたりして落とすわけではなく、"剥がし取って落とす"しくみだからです。汚れの表面に界面活性剤がくっついて、徐々に下の方に回り込んでいき、ボコッと剝がし取るようなイメージです。このような現象を専門的に「ローリングアップ」と呼びます。

つまり、界面活性剤入りの洗剤を上からかけて放置するだけでは汚れは十分には取れず、こすったり振動させたりと、何らかの刺激を与えて界面活性剤の働きを助けなければなりません。

それでも「スプレーするだけで汚れが落ちる」と表示がしてあるのは、"注意書きの力技"と言えます。表示に「※汚れがひどい時はこすってください」と一言添えれば、堂々と「こすり洗いの必要なし!」と書けてしまいます。浴室用洗剤は「こすり洗いが一番!」と覚えておいてください。

陰イオン系洗剤は不要?お風呂洗剤は両性系がお勧め!

界面活性剤の最もポピュラーな成分は「陰イオン界面活性剤」で、そのうち「直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム」などは、古くからお風呂用洗剤の主成分として利用されてきました。ただ、個人的にはお風呂の浴槽用洗剤としてはこれらの成分はあまり相応しくないのではないかと考えています。

というのも、最近のお風呂用洗剤は洗い流し・泡切れが簡単になるように、極力界面活性剤が低濃度で配合されるようになっていますが、そうだとしてもその後にお湯を張って身体全体が浸かることを考えると、できるだけ流しやすく、さらにもし流し残しがあったとしても肌への刺激になりにくい成分、例えば「脂肪酸アミドプロピルベタイン」等の「両性イオン界面活性剤」が用いられているお風呂洗剤が理想的と言えます。

洗浄力はマイルドですが、毎日浴槽を掃除するのですから、これくらいで十分です。

実際には多量のお湯に薄まるのでほとんど心配はありませんが、それでも陰イオン系は刺激の懸念のある洗浄成分ですので、浴槽洗剤としては控えたいところです。

汚れを落とすしくみ

汚れを落とすためには界面活性剤の働きが必要です。どのようにして汚れを落としているのか見てみましょう。

1 汚れに吸いつく

界面活性剤が汚れに吸いつく。

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2 汚れを引き離す

界面活性剤が汚れを取り囲む。こうなるとこする力や水の力で汚れが離れやすくなる。

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この時の界面活性剤の働きが、汚れを巻き上げているようなので、「ローリングアップ」と呼ばれる

3 汚れを細かくする

離れた汚れを界面活性剤が分解する。しかも、界面活性剤に取り囲まれているので汚れが付着しない。

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4 すすぐ

参考資料:日本石鹸洗剤工業会公式ウェブサイト「汚れ落ちのプロセス」

◎POINT
界面活性剤の汚れ落としのメカニズムは化学的な溶解や分解のようなものではなく、「ローリングアップ」と言って物理的に剥がし取るようなイメージです。界面活性剤の洗浄力を十分に発揮するには、しっかりこすり洗いをした方が効果的です。

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かずのすけ

1990年、福井県生まれ。京都教育大学教育学部を経て、2016年に横浜国立大学大学院環境リスクマネジメント専攻・洗剤洗浄科学研究室を卒業(環境学修士・教育学学士)。研究活動のかたわら、化粧品の企画開発、セミナー講師、執筆業などにも携わる。

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『秒でわかる! 最強の家事―暮らしは、化学でラクになる!』

(かずのすけ/ワニブックス)

「除菌と抗菌と殺菌の違い」「部屋干し用洗濯洗剤の効果」「Ag+とは何か」答えられますか?ふだんの暮らしで何となく使っている日用品の小さな疑問に、化学成分と洗浄化学の専門家がズバリ回答。一読すれば、食器用洗剤からシャンプーまで日用品選びの手間と時間から解放されます。

※この記事は『秒でわかる!最強の家事―暮らしは、化学でラクになる!』(かずのすけ/ワニブックス)からの抜粋です。

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