新NISAが景気改善のカギに? 投資のプロが、日本経済の停滞を「産業界の責任」と言う「納得の理由」

NISA・新NISAは確定拠出年金よりも自由度が高い

ところで、個人が利用できる投資非課税制度には、NISAの他に、「確定拠出年金(DC)」もあります。そこで、本章の最後に、確定拠出年金についても簡単に触れておきましょう。

両者とも、投資信託を中心にして、その運用益に対する課税を非課税にする制度であるため、ともすれば混同してしまいがちですが、明らかに両者は異なる制度なので、きちんと整理しておく必要があるでしょう。

確定拠出年金とNISAを実際に始めてみて分かる大きな違いは、制度設計の自由度だと思います。NISAは比較的手軽に利用できる投資非課税制度ですが、確定拠出年金はあくまでも「年金」なので、NISAに比べてさまざまな縛りが多いのです。

所管省庁も、NISA・新NISAは金融庁ですが、確定拠出年金は厚生労働省で、全く別です。

たとえば、NISA・新NISAの場合、非課税投資枠を満たすところまで絶対に投資をしなければならない、という決まりはありません。「今月は厳しいので積立を一時中止しておこう」と思うなら、本人の意思で自由に一時中止にできます。それまで購入した投資信託を解約することも、いつでも可能です。

ところが、確定拠出年金の場合、それができません。

確定拠出年金には「企業型」と「個人型(iDeCo)」があります。企業型は、勤務先企業の福利厚生として、企業が掛け金を拠出する形になるため、加入している個人の負担感はないでしょう。しかし、iDeCoの場合は、個人が自分の財布から掛け金を拠出する形になるため、「今月は家計が厳しいので払いたくない」という時もあると思います。でも、それが非常に難しいのです。

もし、iDeCoの毎月の掛け金を払えなくなった場合は、その額を減額するか、もしくは拠出を停止するかのいずれかを選ぶことになりますが、拠出額を変更する場合は、運営管理機関というところに「加入者掛金額変更届」を提出しなければなりませんし、拠出を一時停止するためには同じく「加入者資格喪失届」を提出しなければならないという、面倒な手続きが必要です。解約するとなると、原則として60歳になるまで、よほどの理由がない限り認められません。

確定拠出年金は資産形成のためのツールではありますが、公的年金と同様、社会保障制度に近い性質を持っているため、自由度が極めて低いのです。


※健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
※記事に使用している画像はイメージです。

 

中野晴啓(なかの はるひろ)
なかのアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長 

1987年、明治大学商学部卒業。セゾングループの金融子会社にて債券ポートフォリオを中心に資金運用業務に従事した後、2006年セゾン投信株式会社を設立。2007年4月代表取締役社長、2020年6月代表取締役会長CEOに就任、 2023年6月に退任。

2023年9月1日なかのアセットマネジメントを設立。
全国各地で講演やセミナーを行い、社会を元気にする活動とともに、積み立てによる資産形成を広く説き「つみたて王子」と呼ばれる。公益社団法人経済同友会幹事他、投資信託協会副会長、金融審議会市場ワーキング・グループ委員等を歴任。
著書に『1冊でまるわかり 50歳からの新NISA活用法』(PHPビジネス新書)他多数

※本記事は中野晴啓著の書籍『1冊でまるわかり 50歳からの新NISA活用法』(PHP研究所)から一部抜粋・編集しました。

この記事に関連する「暮らし」のキーワード

PAGE TOP