【本作を第1回から読む】50代が「新NISA」で取り組むべき「王道の商品」は? 初心者が知っておきたいたった一つの選択肢
『1冊でまるわかり 50歳からの新NISA活用法』 (中野晴啓/PHP研究所)第3回【全4回】
資産形成は、50歳からでも遅くない? 2024年1月から始まった「新NISA制度」は一見、初心者に優しそうですが、じつは正しい知識がなければ「損をして終わり」になる可能性もあります。そんなリスクを減らすべく、なかのアセットマネジメント社長の中野晴啓氏が執筆したのが『1冊でまるわかり 50歳からの新NISA活用法』。50代にターゲットを絞った入門書で、「新NISA制度」をフル活用するための基礎知識をしっかり学びましょう。
※本記事は中野晴啓著の書籍『1冊でまるわかり 50歳からの新NISA活用法』(PHP研究所)から一部抜粋・編集しました。
アベノミクスで増えなかった個人消費が新NISAで増える!?
アベノミクスによって、株価は上昇しました。しかし、ほとんどの国民は所得も資産も増えませんでした。それは、ほとんどの国民は投資をしていないからです。
もし、国民の大多数が投資をしていれば、株価が上がったことによって、資産や金融所得が増えた人が多くいたはずです。そして、今後もそれが続くと思えば、個人消費を増やしたでしょう。すると、景気がよくなり、GDPも上昇したはずです。
日本は、バブル経済が崩壊した後、30年にわたる非常に長いデフレを経験しました。「もう少し待てば、もっと値段が下がるだろう」という考え方からなかなか抜け出すことができず、結果、日本人の消費マインドは、とんでもないレベルにまで落ちてしまいました。
もちろん、日本経済がここまで駄目になった原因は、消費者に蔓延したデフレマインドだけではありません。究極的にいえば、産業界の責任も大きいと思います。
なぜ日本の産業界が競争力を失ったのかというと、その答えはひとつです。日本の産業界が、さらに努力することを怠ったからです。
1980年代の日本は、自他ともに認める技術立国でした。そこからさらに努力をすれば、日本は第2位に大きな差をつけた世界トップの技術大国になれる可能性が十分にあったのです。そうであるにもかかわらず、今の体たらくを見ると、自分たちの技術力に胡坐をかいていたとしか思えません。そして、この駄目になった産業界に活を入れられるのは、日本の消費者を除いて他にいないと思います。
新NISAが普及して、大勢の個人が資産形成に取り組めば、恐らく、日本人一人あたりの金融所得が増えていきます。すると、消費が刺激されます。それによってGDPも押し上げられます。その結果、税収も増えていくでしょう。「損して得とれ」という表現が正しいかどうかはともかく、国からすれば、新NISAによって金融所得から得られる税金は減るものの、回りまわって税収が増えることになるわけです。
そして、このロジックが正しいということになったら、1800万円という非課税保有限度額が2000万円、3000万円というように引き上げられ、やがて完全に撤廃されるかもしれません。そうなった時、日本経済は再び成長軌道に乗っているはずです。
日本はこの30年間で成熟社会になりました。成熟社会で生きている人たちは、ものを見る目が肥えています。食事ひとつをとっても、何でもとにかく腹に入ればいいということではなく、美味しいことはもちろん、健康にいいなど、付加価値の高いものを優先させます。
企業としては、こうしたものを見る目が肥えた消費者を相手にしなければなりませんから、商品開発競争が激しくなり、生き残った企業は非常にレベルアップしていきます。つまり日本の消費者が持っている厳しい目が、日本の産業界を再び強くしていくのです。
国内の消費者の期待に応えるべく日本の産業界がレベルアップをしていけば、結果として、対外的な競争力も高まります。
こうして産業界がスケールアップしていけば、着実にGDPが上がり、国民の勤労所得も増えていくでしょう。
こうして金融所得と勤労所得が両輪で回るようになると、日本はいよいよ失われた30年から脱却できるのです。