消しゴムは「絡め取り」、砂消しは「削ぎ落とす」/すごい技術

消しゴムは「絡め取り」、砂消しは「削ぎ落とす」/すごい技術 pixta_28739429_S.jpg私たちは毎日身のまわりの「便利なモノ」のおかげで快適に暮らしています。でもそれらがどういう仕組みなのか、よく知らないままにお付き合いしていませんか?

身近なモノに秘められた"感動もの"の技術をわかりやすく解説します!

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●消しゴム

消しゴムといっても、今はゴムではなくプラスチック製のものが主流。そもそも、なぜ鉛筆の字は消しゴムで消せるのか。

最初の消しゴムは、1772年にロンドンで製品化されたという。一方、1564年に黒鉛が発見され、ほどなくそれを棒に挟んだ鉛筆が発明された。鉛筆の発見から消しゴムの発見までには大きなタイムラグがある。人類はベストの組み合わせを発見するのに、ずいぶんと時間を要したことになる。

さて、消しゴムで鉛筆の字が消せるのはなぜだろうか。その秘密は黒鉛粒子と紙との関係にある。鉛筆で紙に書いた点や線は、紙の表面に黒鉛の粉末が付着しているだけの状態だ。そこで、こすってはぎ落とせば字は消える。しかし、こするだけでは字は消えない。拡散してしまうからだ。消しゴムは黒鉛の粉末を中に絡め取り、消しくずとしてまとめてくれる。これが消しゴムで鉛筆の字が消える秘密だ。

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最近の消しゴムはプラスチックでできている。ゴムよりもよく消えるということで、急速にシェアを広げた。そこで、鉛筆の字を消すゴムやプラスチックは字消しと統一して呼ばれる。しかし、「消しゴム」のほうが通りがいい。

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プラスチック消しゴムの製法を示したが、完成品は一つひとつ紙ケースに収められる。消しゴムのプラスチックは接触すると、再結合してしまうからである。

周知のように、インクで書かれた文字は消しゴムでは消せない。インクの文字は紙の繊維に染み込んでいるからだ。これを消すには砂消しゴムが必要となる。ゴムに含まれる砂で、染み込んだインクを紙から削ぎ落とすのだ。もっとも、最近は修正液や修正テープのほうが手軽で人気ではある。

近年、消しゴムにもさまざまな工夫が凝(こ)らされている。例えば「カドケシ」と命名された消しゴムは何度も新しいカドで消すことができ、細かいところを消すのにたいへん便利だ。また「ブラック消しゴム」と呼ばれるものは、黒いプラスチックを利用して、ゴム部分の汚れが目立たずきれいに使える。また、消しクズが黒く見やすいため、片づけも容易である。

 

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<教えてくれた人> 

涌井良幸(わくい・よしゆき)

1950年、東京都生まれ。東京教育大学(現・筑波大学)数学科を卒業後、千葉県立高等学校の教職に就く。教職退職後の現在は著作活動に専念している。貞美の実兄。

 

涌井貞美(わくいさだみ)

1952年、東京都生まれ。東京大学理学系研究科修士課程修了後、富士通に就職。その後、神奈川県立高等学校教員を経て、サイエンスライターとして独立。現在は書籍や雑誌の執筆を中心に活動している。良幸の実弟。

 

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『身のまわりのすごい技術大百科』

(涌井良幸・涌井貞美/KADOKAWA)

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この記事は書籍『身のまわりのすごい技術大百科』からの抜粋です

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