100%環境に優しいとはいえない!? 洗剤不要の布とスポンジ/身のまわりのモノの技術(26)【連載】

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手が荒れる、環境汚染をもたらす、といった理由で洗剤を嫌う人がいる。そんな人にうってつけなのが「洗剤のいらないスポンジ」と呼ばれる商品。さまざまな種類があり、どれを購入すべきか迷うが、汚れを落とすしくみは基本的に同じである。ミクロの世界で見ると、繊維や樹脂、ゴムや研磨剤がゴミを削り取っているのだ。

最初に、「眼鏡拭き」用の布について調べてみよう。通常、眼鏡の油膜汚れの厚さは1〜2ミクロン。約15ミクロンの太さを持つ普通の繊維で完全に拭き取ることは不可能である。そこで開発されたのが「超極細繊維」である。高分子化学の技術により、約2ミクロンの繊維が実現されている。この繊維でメガネを拭くと、油膜も削り取れる。使用後に軽く洗剤で洗えば再利用できるので環境にもいい。この「超極細繊維」、当初は眼鏡や携帯電話などの小物の掃除に使われたが、現在では台所の掃除や車磨きにも利用されている。

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一方、極細繊維は固くこびりついた油汚れに対して非力だが、そうした汚れを強引にそぎ落とす製品が生まれている。メラミンフォームと呼ばれる、樹脂を利用した製品だ。

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メラミンは石油からできるプラスチックの一種。熱に強くて硬いが、特殊な熱加工を施して空気を含ませると、ミクロの金属たわしのような樹脂になる。これがメラミンフォームだ。電子顕微鏡で見ると、確かに固いメラミン樹脂の繊維が針金細工のようにからみ合っているのがわかる。その針金状のメラミンが汚れをナイフのように削り取るのである。

最近人気なのは、スポンジや繊維に研磨剤やゴム粒子をしみ込ませたタイプだ。これらは素材にしみ込ませたミクロの粒子でゴミを剥がし落とす。

ところで、洗剤を利用しないから環境にいいかというと、100%「イエス」とはいえない。ゴミを削るのと同時に自分自身も削られ、ミクロなゴミとなって排出されるからだ。別の意味で環境に負荷を加える可能性がある。

涌井 良幸(わくい よしゆき)
1950年、東京都生まれ。東京教育大学(現・筑波大学)数学科を卒業後、千葉県立高等学校の教職に就く。現在は高校の数学教諭を務める傍ら、コンピュータを活用した教育法や統計学の研究を行なっている。
涌井 貞美(わくい さだみ)

1952年、東京都生まれ。東京大学理学系研究科修士課程を修了後、 富士通に就職。その後、神奈川県立高等学校の教員を経て、サイエンスライターとして独立。現在は書籍や雑誌の執筆を中心に活動している。

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「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術」
(涌井良幸 涌井貞美/KADOKAWA)
家電からハイテク機器、乗り物、さらには家庭用品まで、私たちが日頃よく使っているモノの技術に関する素朴な疑問を、図解とともにわかりやすく解説している「雑学科学読本」です。

この記事は書籍「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術」(KADOKAWA)からの抜粋です。
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