消せるボールペンのインクの中で起こっていること/身のまわりのモノの技術(10)【連載】

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文具店の筆記コーナーに立ち寄ると、色の鮮やかさと形の豊富さから、ついつい買いたくなってしまうのがボールペンである。その豊富さは外見だけではない。内部のインクや構造もバラエティーに富んでいて面白い。

まずボールペンの基本構造を押さえておこう。ボールペンという名称が示すように、先端には金属ボールが埋められている。それが筆の役割になってインクを紙に運ぶのだ。安価なボールペンでも、先端にはミクロ単位の加工が施されている。一見頑丈そうだがデリケートで、突いたり落としたりすると破損するので注意しよう。

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最初にも述べたように、ボールペンのインクや構造はバラエティーに富む。技術的には飽和しているように見えるボールペンの世界だが、さまざまな工夫が新たに加えられている。

一例として加圧ボールペンを見てみよう。普通のボールペンは、芯を上に向けて書くとインクが出なくなってしまう。上に向けると自らの重みでインクが下がろうとし、筆記中に空気を巻き込んでしまうからだ。インクとボールとの間に空間ができると、字が書けなくなる。そこで、インクの芯の空気圧を高め、常にインクがボールに向かうようにしたのが加圧ボールペンである。これならば、上向き筆記をしても大丈夫である。

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もう一つの例として消せるボールペンを見てみよう。その名の通り、消しゴムでこすると書いた文字が消せる不思議なペンである。その秘密は、消しゴムでこするときに発生する摩擦熱にある。インクとしてロイコ染料、顕色剤、変色温度調整剤を一つのマイクロカプセルに入れた顔料を用いている。摩擦で温度が上がると、この調整剤が働いて色を消すのだ。本来は無色のロイコ染料が、顕色剤と結合することで発色する性質を応用している。

ドラッグストアなどでポイントを記録するプラスチックカード、リライトカードとの違いは、ロイコ染料と顕色剤の間に調整剤を添加したことである。これによって、低温でも字を消せるのだ。

涌井 良幸(わくい よしゆき)
1950年、東京都生まれ。東京教育大学(現・筑波大学)数学科を卒業後、千葉県立高等学校の教職に就く。現在は高校の数学教諭を務める傍ら、コンピュータを活用した教育法や統計学の研究を行なっている。
涌井 貞美(わくい さだみ)

1952年、東京都生まれ。東京大学理学系研究科修士課程を修了後、 富士通に就職。その後、神奈川県立高等学校の教員を経て、サイエンスライターとして独立。現在は書籍や雑誌の執筆を中心に活動している。

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「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術」
(涌井良幸 涌井貞美/KADOKAWA)
家電からハイテク機器、乗り物、さらには家庭用品まで、私たちが日頃よく使っているモノの技術に関する素朴な疑問を、図解とともにわかりやすく解説している「雑学科学読本」です。

この記事は書籍「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術」(KADOKAWA)からの抜粋です。
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