鉛筆の芯の成分元素は、ダイヤモンドと同じ/すごい技術

pixta_31029819_S.jpg私たちは毎日身のまわりの「便利なモノ」のおかげで快適に暮らしています。でもそれらがどういう仕組みなのか、よく知らないままにお付き合いしていませんか?

身近なモノに秘められた"感動もの"の技術を、書籍『身のまわりのすごい技術大百科』がわかりやすく解説します!

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●鉛筆

鉛筆という単語には「鉛」の文字があるが、本当に鉛は入っているのか。そもそも、なぜ鉛筆で紙に字が書けるのだろう。

鉛筆は「鉛(なまり)の筆」と書く。そのため「鉛筆の芯(しん)には鉛が含まれている」という迷信があった。しかし、実は鉛筆に鉛は含まれていない。その代わり、漢字で書くと「鉛」とまぎらわしい「黒鉛(こくえん)」が入っている。この黒鉛と粘土から鉛筆の芯ができているのだ。

黒鉛は炭素からできているが、同じ炭素からできているものに、ダイヤモンドがある。しかし、これらは似ても似つかない。このように、同一の元素からできているのに性質がまったく異なるものを同素体(どうそたい)と呼ぶ。

 

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ナノの世界で見ると、黒鉛はすべりやすい炭素の層構造をしている。このすべりやすさが大切で、筆圧で層が簡単にはがれ落ち、黒い粉となる。これが字やイラストの線になるのだ。

黒鉛はおよそ450年前にイギリスで発見され、すぐに筆記用具として利用されるようになった。これが鉛筆の始まりだ。もっとも、今のような鉛筆の形になるのは、それから200年後の話である。

では、紙に書けて鉄やガラスに書けないのはなぜだろうか。この理由は先に述べた黒鉛の性質にある。炭素の層が筆圧で剥がれ落ちるには、引っかかりがなければならないからだ。鉄やガラスの表面は、硬(かた)くスベスベしているため黒鉛の層が引っかからない。

一方、紙は植物繊維でできているため、表面はザラザラしている。この凹凸に黒鉛が引っかかり、黒い粉は繊維内部に入り込む。これが紙に鉛筆で字が書ける秘密だ。当たり前と思っていることに、こんなミクロの世界の理由があるのだ。

鉛筆の芯の濃さと硬さはBとHからなる硬度記号で表される。BはBlack、HはHard の頭文字で、Bにつけられた数が大きいほど軟らかく、Hにつけられた数が大きいほど硬い。鉛筆の硬さは黒鉛と粘土の割合によって決まる。例えば、HBでは黒鉛70%に対して、粘土30%である。Bの数が多いほど黒鉛が多く含まれることになる。ちなみに、HとHBの中間にFがある。FはFirm(ひきしまった)の頭文字だ。

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涌井良幸(わくい・よしゆき)

1950年、東京都生まれ。東京教育大学(現・筑波大学)数学科を卒業後、千葉県立高等学校の教職に就く。教職退職後の現在は著作活動に専念している。貞美の実兄。


涌井貞美(わくいさだみ)

1952年、東京都生まれ。東京大学理学系研究科修士課程修了後、富士通に就職。その後、神奈川県立高等学校教員を経て、サイエンスライターとして独立。現在は書籍や雑誌の執筆を中心に活動している。良幸の実弟。


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『身のまわりのすごい技術大百科』

(涌井良幸・涌井貞美/KADOKAWA)

身近なモノに秘められた“感動もの”の技術、一挙解説! 身近な文具から、便利すぎるハイテク機器まで…あれもこれも、すべて「科学技術」の結晶なのです。日ごろよく使う「モノ」の“すごい技術”を図解でわかりやすく解説します。

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この記事は書籍『身のまわりのすごい技術大百科』からの抜粋です

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