DVやハラスメント、性犯罪に娘のいじめ...「女性が巻き込まれやすいトラブル」は数多くあります。でも、そうした悩みを解決したくても、「誰かに相談したら逆に悪化するかも...」とどうしていいかわからない人も多いと言います。そこで、弁護士の上谷さくらさんと岸本学さんの著書『おとめ六法』(KADOKAWA)より、女性の味方になってくれる「法律」についてご紹介。ぜひ、ご自身やお子さんがトラブルの参考にしてください。
いじめは単なる"悪ふざけ"ではない
いじめをしてはいけないことは、はっきりと法律で明記されています。
またいじめとはなにかについても、法律で定義されています。
「いじめ」の中には、犯罪行為にあてはまる行為も含まれます。
たとえば、次のようなものです。
● 他人の物を壊す......器物損壊罪(刑法第261条)
● 他人の物を盗む......窃盗罪(刑法第235条)
● 他人を脅してお金を払わせる......恐喝罪(刑法第249条)
● 他人を殴る、蹴る......傷害罪(けがをした場合、刑法第204条)暴行罪(けがのない場合、刑法第208条)
● 他人に水をかける......暴行罪(刑法第208条)
● 他人の悪口を言いふらす......名誉毀損罪(刑法第230条)
● 他人にしたくないことをさせる......強要罪(刑法第223条)
いじめに含まれる行為の多くが、刑法で禁止される犯罪行為にあたることがわかるはずです。
いじめの被害を受けたら、警察へ被害届を提出することも視野に入れましょう。
上記以外のいじめ、たとえば、「集団で無視をする」「口をきかないように仕向ける」といった行為は、犯罪とまではいえません。
しかし、慰謝料の請求が可能な不法行為(民法第709条)には該当します。
それらの行為が原因で学校に行けなくなったり、転校を余儀なくされたり、心身の不調が出た場合などには、民事裁判などの法的措置を取ることも考えられます。
【事例】
学校の教室で数名に囲まれて脅され、服を脱ぐように強要された。何人かがその様子を携帯で動画撮影していた。
【ANSWER】
18歳未満の者の性器やおしり、胸などが写っている画像や動画は「児童ポルノ」に該当します。児童ポルノを所持したり提供したりすると「児童ポルノ禁止法違反」という犯罪に問われる場合があります。所持や提供をするのが18歳未満の者であっても同じです。このケースでは、動画撮影という行為が、児童ポルノ禁止法違反に該当する可能性があります。また、刑法の強制わいせつ罪、強要罪にあたる可能性もあります
学校には安全配慮義務がある
学校教育の現場では、校長をはじめとする教師には、生徒の生命・身体の安全を守る義務(安全配慮義務)が課せられているといえます。
いじめに関しても、生徒からその訴えを聞いたのになにもしなかったり、不注意な言動で生徒に余計に大きな被害を与えた場合には、安全配慮義務違反による責任が問われる場合があります。
たとえば、次のようなケースです。
● いじめ被害の訴えを受けたのに「握り潰し」て報告等をしなかった
● いじめ被害の訴えを受けたのに、加害者から聞き取りをしただけで被害者を「嘘つき」呼ばわりして、被害者から加害者へ謝罪させた
● いじめ被害の訴えを受けたのに、被害者からの訴えを聞いただけで、被害者に「あなたにも落ち度がある」などと言って無理に納得させて、いじめ被害の訴えを取り下げさせた
教師等の責任を後で追及するためには、証拠が必要です。
いつ、どこで、誰に対し、誰が、どのような内容をどのように伝えたかについて、記録を残しておくことが重要です。
会話はできるだけ録音しておくのがベストです。
いじめを誰かに相談したら、悪化しそうで不安
いじめをやめてもらうためには、まずは親、担任やそのほかの教師、または教育委員会に相談するといった方法が考えられます。
問題は、相談した相手がなにもしてくれなかったり、誤った対応をして、ますますいじめがひどくなることです。
中途半端な対応をされることで、被害を相談したことがいじめの加害者に知られ、いじめ防止につながるような対応をしてもらえないばかりか、いじめの加害者からさらに仕返しされてしまうのでは、という不安もあるでしょう。
実は、それを防ぐ手立てはあまり多くないのが現状です。
しかし、親や教師、教育委員会以外にも相談する相手はいます。
弁護士です。
教師や教育委員会よりも先に弁護士に相談をして、その弁護士から教師や教育委員会に相談するという方法があります。
第三者であり法律の専門家である弁護士が介入することで、学校や教育委員会による慎重でしっかりとした対応が期待できます。
また、警察やいじめ問題に取り組む民間団体などに相談することも考えられます。
勝手に会話を録音してもいいの?
いじめのみならず、パワハラやセクハラなど、さまざまな被害にあっていることを最も直接的に、わかりやすく証明することができるのが発言の録音です。
録音することがプライバシー侵害にならないかが問題となりますが、正当な目的のためであり相当な範囲であれば、不法行為とはなりません。 証拠としても有用性が認められます。
その内容を外部へ知らせることもプライバシー侵害の問題となりますが、これもパワハラやセクハラ、いじめを防止するために公的な相談部署へ知らせるなど、正当な目的があり、必要かつ相当な手段を取るならば、不法行為とはならないでしょう。
ただし、その録音を使って相手に仕返しなどをした場合は、違法となる可能性があります。
録音した会話を公開すると脅して謝罪や金品を要求したら、強要罪や脅迫罪、恐喝罪にあたりますし、会話を公開して発言者の社会的地位を低下させたら名誉毀損罪にあたる可能性があります。
【あなたを守る法律】
いじめ防止対策推進法 第4条 いじめの禁止
児童等は、いじめを行ってはならない。
ほかにも書籍では、恋愛・くらし・しごと・結婚など6つの章だてで、女性に起こりうる様々なトラブルに「どう法的に対処すべきか」が解説されていますので、興味がある方はチェックしてみてくださいね。
六法やDV防止法、ストーカー規制法...。女性の一生に寄り添う大切な法律が、6章にわたって解説されています。