娘が学校の裏サイトで「援交してる」と中傷された...「度を越した悪口や噂」への対処法/おとめ六法(5)

DVやハラスメント、性犯罪に娘のいじめ...「女性が巻き込まれやすいトラブル」は数多くあります。でも、そうした悩みを解決したくても、「誰かに相談したら逆に悪化するかも...」とどうしていいかわからない人も多いと言います。そこで、弁護士の上谷さくらさんと岸本学さんの著書『おとめ六法』(KADOKAWA)より、女性の味方になってくれる「法律」についてご紹介。ぜひ、ご自身やお子さんがトラブルの参考にしてください。

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【事例①】
学校の裏サイトに、私のことを「うざい」「きもい」と中傷する内容や、「援交をしている」など事実ではないうわさが書き込まれた。

【ANSWER】
サイトに問い合わせフォームなどがあれば、まずそこに状況を記載して削除を求めてみましょう。法的措置を取るなら、まずは中傷やうわさを、証拠として保全する必要があります。そのうえで、裏サイトを運営している管理者に、中傷やうわさの削除を求めることができます。


愚痴や悪口、噂話なども、度が過ぎれば名誉毀損罪や侮辱罪に該当します。

まず名誉毀損罪は、以下の条件を満たす場合に成立します。

①「公然と」......大勢の人の前などで

②「事実を適示して」......「本当の事実」や「虚偽の事実」を示して

③「人の社会的評価を低下させた」......世間や周囲からの評価を下げた

ここでいう「事実」は、その内容が本当かどうかは関係ありません。

そのため、嘘の内容でも名誉毀損罪の要件にあてはまります。

侮辱罪は、名誉毀損罪と同様「公然と」「人の社会的評価を低下させる」ことですが、名誉毀損罪とは異なり、「事実を摘示」せずに悪口を言った場合などに成立します。

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●ポイント
密室でも 「公然と」 になる

二人きりの会議室で相手を罵倒するなどの場合は「公然と」にあたりません。

しかし二人きりであっても、聞いた人が第三者に伝えることが明らかなのに、その場にいない他人の悪口を伝えれば、「公然と」に該当する場合があります(伝播可能性)。


【事例②】
就活中の学生。無事内定は出たものの、あまり満足していない会社。思わず「サービス残業多いブラック」「セクハラあるらしい」など、内定先の会社の悪口を会社名を出してSNSに投稿。もしこの投稿が内定先にバレたら問題になる?

【ANSWER】
SNSでこのような会社の悪口を書き込むと、名誉毀損に該当します。書き込んだのがあなたと特定されれば、内定先企業の判断次第で内定の辞退を求められたり、内定が取り消されたりする可能性があります。


SNSバレで内定取り消し

内定とは、開始時期の定められた解約権留保つきの雇用契約です。

雇用契約なので、会社は簡単に解除(内定取り消し)はできませんが、入社までにやむをえない事由が発生した場合には内定を取り消されることがあります。

たとえば、学校を卒業できなかったり、犯罪行為で逮捕されたりなどした場合です。

事例のような書き込みは、内定先企業に対する名誉毀損行為にあたる可能性が高いものです。

もっとも、この書き込みだけで、法的に内定取り消しが認められるかは微妙なところです。

裁判になれば「内定取り消しは重すぎる」との判断が裁判所から下される余地もあります。

しかし法的に内定取り消しが認められなかったとしても、内定先企業がこの書き込みを発見し、書き込んだ人を特定すれば、なんらかのトラブルになる可能性は高いでしょう。

匿名アカウントであっても完全な匿名はありえません。

「発言には責任を伴う」ということを意識する必要があります。


【事例③】
会社の取引先に苦手な人がいる。ストレス発散に、その人の悪口を盛大にSNSに投稿していた。自分の名前を明かさない匿名アカウントで、相手の実名も出していなければバレても犯罪にならない?

【ANSWER】
匿名アカウントで、なおかつ相手の実名も出していないとすれば、名誉毀損罪や侮辱罪などの犯罪が成立したり、慰謝料を請求されたりする可能性は低いと考えられます。しかし匿名アカウントであっても、その持ち主の個人情報が特定されて、インターネット上で晒される場合もあります。内容によっては、重大なトラブルを引き起こしてしまう可能性もあります。


誰のことかわからないようにしていればセーフ?

名誉毀損罪や侮辱罪という犯罪は、その投稿をした人が、「相手の名誉を毀損してやろう」という「故意(わざと)」または「相手が特定されて相手の名誉が毀損されてもかまわない」といった「未必の故意」がなければ成立しません。

慰謝料請求するにも、投稿した人に「故意」か「過失」があることが必要です。

相手が誰かわからない表現で書き込みを行っていれば、相手の社会的評価を下げようという「故意」や「未必の故意」「過失」があるとは認められにくいと考えられます。

万が一、投稿を見たほかの人が、悪口の相手を特定してネットで晒すことがあっても、刑罰を受けたり慰謝料を請求されたりする可能性は高くありません。

もっとも、裁判などの法的手続きでは、故意があるかどうかは書き込んだ内容から総合的に判断されます。

外見について書くなどして、悪口の相手が誰か、読んだ人が想像つく表現であれば、故意があると認められてしまう場合もあります。


【事例④】
カフェに行ったらサービスが最悪。あまりにも腹が立つからSNSで悪い感想を書き込んだら、バズってしまった。誹謗中傷になる?

【ANSWER】
内容によっては名誉毀損罪にあたる場合があります。少なくとも、ひどい悪口を書き込むと、トラブルに巻き込まれる可能性もあることを念頭に置いておきましょう。苦情は直接そのお店に伝えるのがよいでしょう。


誹謗中傷への対応は、大きく分けて2つあります。

①削除請求......匿名掲示板やサイトの管理者に対して書き込みの削除を求める

②発信者情報開示請求......書き込んだ人物を突き止めて、その人物に損害賠償請求などをする

まずは削除依頼フォームなどの問い合わせ窓口を通じてサイトやSNSの運営者、管理者に、問題の書き込みの削除を求めるという方法があります。

しかし、それでもサイト側が削除しない場合は、サイトを運営している会社に対して書面を送って削除を求めます。

それでもだめなら、裁判所に訴えることで削除を求めることになります。

また、警察に被害を訴えるほか、加害者を特定して民事上の損害賠償請求を行うこともできます。

誹謗中傷の相手を特定する「発信者情報開示請求」

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●ポイント
加害者を特定するには、裁判所に対し、運営会社などを相手取って「発信者情報開示」の仮処分の申し立てや訴訟を提起します。

この「発信者情報開示」は「プロバイダ責任制限法」に定められているもので、「自己の権利を侵害された者」が、運営会社やインターネット・サービス・プロバイダ(ISP)など一定の事業者に対し、投稿や書き込みをした者の個人情報を開示するように、裁判所から命じてもらう手続きです。

匿名アカウントは被害にあっても守られない?

「匿名アカウント」が誹謗中傷などの被害を受けたときは、その相手に法的責任を問えるでしょうか?

というのも、匿名アカウントに対しての誹謗中傷は、その持ち主の「本人」に対するものではない、とも考えられるからです。

匿名アカウントは、法的には保護しなくていいという考え方もありえます。

この問題にはまだ最高裁判所による判例はありませんが、加害者に法的責任を問える場合もあると考えられます。

なぜならば、その行為が名誉毀損をされたアカウントの「社会的な評価」を低下させるからです。

SNSなどの限定された「世界」でも、そのアカウント自体の評価はあり、その評価は「社会的な評価」といえる可能性があります。

アカウントの「社会的な評価」が低下すれば、そのアカウントを使った活動に差し障りが生じるなど、「本人」にとって実害が発生する場合もあるからです。

最高裁判所ではありませんが、実際に匿名アカウントに対する名誉毀損を認めた裁判例もあります。


【あなたを守る法律】
刑法 第230条 名誉毀損

1 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役、もしくは禁錮、または50万円以下の罰金に処する。
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

刑法 第231条 侮辱

事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留、または科料に処する。


ほかにも書籍では、恋愛・くらし・しごと・結婚など6つの章だてで、女性に起こりうる様々なトラブルに「どう法的に対処すべきか」が解説されていますので、興味がある方はチェックしてみてくださいね。

【まとめ読み】『おとめ六法』記事リスト

おとめ六法_帯あり.jpg六法やDV防止法、ストーカー規制法...。女性の一生に寄り添う大切な法律が、6章にわたって解説されています。

 

上谷さくら(かみたに・さくら)
弁護士(第一東京弁護士会所属)。犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務次長。第一東京弁護士会犯罪被害者に関する委員会委員。毎日新聞記者を経て、2007年弁護士登録。保護司。

岸本学(きしもと・まなぶ)
弁護士(第一東京弁護士会所属)。第一東京弁護士会犯罪被害者に関する委員会委員。人権擁護委員会第5特別部会(両性の平等)委員。民間企業のコンプライアンス統括部門を経て、2008年横浜国立大学法科大学院を卒業。同年司法試験合格。金融庁証券調査官を経て、2010年弁護士登録。

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『おとめ六法』

(上谷さくら、岸本学/KADOKAWA)

恋愛、インターネット、学校、生活、仕事、結婚など、生活に必要な法律の概要を解説しています。従来の一般向けの法律書とは違い、女性の生活各場面に関連する法律をピックアップして分かりやすく解説しています。また、生じたトラブルにへの対処法もあわせて説明しています。女性の一生に寄り添う法律を網羅した、すべての女性の味方になる実用的な一冊です。

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※この記事は『おとめ六法』(上谷さくら、岸本学/KADOKAWA)からの抜粋です。

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