家族が「老人性うつ病」になったらやるべきこと。精神科医の和田秀樹先生が解説

うつに気づいたら家族がすべき5つのこと

次に、うつ病の疑いがあって精神科や心療内科を受診したり、いま、現実にうつ病の診断を受け、治療も受けている場合の家族の対応についてお伝えしたいと思います。

【1】病院に連れて行く
先のような異変に気づいたときは、まずは精神科や心療内科の受診をおすすめします。その際は、「お父さん、前と比べて、顔つきも良くないし、ご飯もあまり食べていないみたいだから、心配なので病院に行こうね」という風に声をかけ、あえて精神科や心療内科に連れて行くことは伝えず、連れ出すのが賢明でしょう。

治療がスタートしたら、基本的には、プロである医師にまかせます。診断はもちろん、薬の選び方にしても、患者との接し方にしても、担当医を信頼するのが原則です。ただし、高齢者を診慣れていない医師の場合、正確な診断ができないこともあります。私の経験から考えると、若い人に出すのと同じ感覚で薬を処方すると、高齢者には効き過ぎてしまい、逆によぼよぼになってしまうこともあるので要注意です。医療機関を選ぶ際は、都市部の大きな病院ではなく、地域の高齢者を診慣れた医師を選ぶことが肝要です。かかりつけ医でもいいのですが、日本ではまだまだ精神科関係の知識が乏しい医師が多いのが実情です。そのため、やはり、精神科や心療内科を受診するのがいいでしょう。

【うつ病を疑ったら、まずは病院へ】
うつ病の疑いを感じたら、まずは精神科や心療内科の受診をすすめます。その際は、家族が付き添って行くといいでしょう。

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【2】薬をしっかりと飲ませる
高齢者のうつ病は抗うつ薬での治療が効くことの多い病気ですが、薬の効果はすぐに出るわけではありません。治療を始めた当初は、あまりうまくいっていないように見えても、1カ月くらい薬を飲み続けると、症状が回復してくるというのが通常のパターンです。さらに具体的にいうと、最初の2週間くらいはあまり効果が出ず、それ以降に効き始めるのが一般的です。ですから、最初のうちは、多少、「だるい」「胃腸の調子が悪い」と訴えても、胃薬などを足して様子を見ながら、「きちんと薬を飲んでもらう」、そのサポートが家族の一番大切な役割になります。

間違えて薬を多く飲んでしまったり、飲んだふりをして全然薬を飲んでいないということを避けるため、服薬開始から2カ月くらいは、できれば一緒に住んで、きちんと薬を飲むように見守ってもらうことが理想です。

【3】患者の代わりに相談を
問題は、1カ月くらい経っても、あまり薬が効いてこない、かえって調子が悪いという場合です。うつ病の薬はかなり多くの種類がありますので、一つの薬が合わなくても、別の薬が効くことは珍しくありません。「薬を飲んでも良くならない」とか、「調子が悪い」なら、別の薬に変えてもらうのが原則だと思います。しかし、うつ病の場合、患者さん本人は「薬が効いていないようだ」「薬を飲むと調子が悪い」といったことを医師に強く伝えられないケースが多いものです。

そこで、本人に代わって、家族が医師に状況を伝えるといいでしょう。もちろんそのためには、1カ月くらいは様子を見る必要がありますが、それでも様子が変わらなければ、やはり薬の種類を変えてもらうように相談するのが、家族の仕事だと思います。

 

<教えてくれた人>

和田秀樹(わだ・ひでき)先生

東京大学医学部卒業。精神科医。ルネクリニック東京院院長。高齢者専門の精神科医として30年以上にわたり高齢者医療の現場に携わる。近著『80歳の壁』(幻冬舎新書)は59万部を超えるベストセラー。他、著書多数。

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『65歳からおとずれる 老人性うつの壁』

(和田秀樹/KADOKAWA)

1078 円(税込)

幸福な高齢者になるには、65歳からおとずれる「老人性うつ病」の壁を乗り越えることが必須。30年以上にわたって高齢者の精神医療に携わってきた著者が教える「うつに強い人間になって、人生を楽しむための一冊」。

※本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

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