「うつ病は心がは心が弱い人がなる」は誤解。逆に注意すべき「考え方」を精神科医の和田秀樹先生が解説

うつ病になりやすい「心に悪い考え方」とは

現在の精神医学では、うつ病のなりやすさは性格というより、考え方の問題だという説が強まっています。確かに性格というのは治すのが難しいでしょうが、考え方なら変えることができるはずです。

いま、認知症のカウンセリング治療でもっともさかんに行われているのが、「認知療法」といわれる治療法です。

ものの見方を変えることで、うつ病の症状を良くしようというもので、例えば、会社をクビになって「もう二度と、まともな社会人には戻れない」「これから一生、正社員になれない」などと思っている人に、「そうかもしれないが、そうとも限らない」と考える思考をもてるようにするだけで、うつ状態が少しましになるという治療法です。

これについて詳しい説明は省きますが、この治療のいいところは、心に悪い思考パターンを改めることで、うつ病を治していくだけでなく、再発が予防できるという点です。あるいは、うつ病でない人でも、このようなうつ病になりやすい考え方を改めることで、うつ病を予防できるところです。

この認知療法を開発したペンシルバニア大学のアーロン・ベック教授と、その弟子に当たるアーサー・フリーマンという心理学者のグループは、うつ病になりやすい人の特徴として、「心に悪い考え方」を12個想定しています。これらは日本人にありがちな思考パターンでもあるので、このうちのいくつかが当てはまる人は、それを修正した方がいいでしょう。

「なんでも白黒つけたがる」のは危険
【二分割思考】
物事を「白か黒か」というように、互いに相反する極端な二通りの見方で判断し、「中間の灰色の部分」がない思考パターンです。

例えば、世の中の人はすべて「敵か味方」と考え、どちらでもない中間の人がいることが想定できないのです。この場合、味方だと思っていた人がちょっとでも自分の意見に反対すると、「味方でも、ときには反対することもある」とは考えることができず、「この人は敵になったのだ!」と考えてしまうので、落ち込みやすいのです。

「みんな〇〇〇だから」と、思いがちではないか?
【過度な一般化】
特定の出来事を、多くの出来事の中の一つとして見ることができず、「みんな」「いつも」などと、広く一般的な特徴であるとみなす思考パターンです。

1人の高齢者が交通事故を起こすと、高齢者全員が危ない運転をするかのように考えるのは、分かりやすい例です。1人の事故をきっかけに、全ての高齢者に免許返納を求めたり、特別に運転技能が落ちたわけでもなく安全運転をしているのにも関わらず、「高齢になったら免許返納をしなければならない」と思い込むようなケースです。

こういう人は、一度でもミスをすると、「自分はダメな人間になった」と思うわけですし、一回でも待ち合わせを忘れると、「自分はボケてしまったのだ」などと考えて、落ち込みやすいのです。

悪い面ばかりを抜き出していないか
【選択的抽出】
「ある特定」の側面に注意を注いで、その状況に関係のあるその他の側面を無視してしまう思考パターンです。

普段はすばらしい演技力だと評価されている俳優が、一度でも不倫がみつかると、演技力は変わらなくても、「ダメな人間だ」と決めつけてしまうようなパターンです。こういう考え方をする人は、少し親切にされただけで、相手のことを「いい人」と思いやすく、騙されやすいところがあります。

他人の欠点が許せなかったり、騙されやすかったり、ものごとを一面的にしか捉えられないので、落ち込みやすい思考パターンと言えるでしょう。

 

<教えてくれた人>

和田秀樹(わだ・ひでき)先生

東京大学医学部卒業。精神科医。ルネクリニック東京院院長。高齢者専門の精神科医として30年以上にわたり高齢者医療の現場に携わる。近著『80歳の壁』(幻冬舎新書)は59万部を超えるベストセラー。他、著書多数。

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『65歳からおとずれる 老人性うつの壁』

(和田秀樹/KADOKAWA)

1078 円(税込)

幸福な高齢者になるには、65歳からおとずれる「老人性うつ病」の壁を乗り越えることが必須。30年以上にわたって高齢者の精神医療に携わってきた著者が教える「うつに強い人間になって、人生を楽しむための一冊」。

※本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

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