イヌに咬まれたら4~20%、ネコだと60~80%感染とも。ペットに咬まれたときの「リスクと対策」

ペットに舐められて死亡例も? 人獣共通感染症とは?

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・最も有名な人獣共通感染症は「狂犬病」、渡航の際はワクチンの検討も
・ペットに舐められたことがきっかけで亡くなったケースもある

人獣共通感染症(ズーノーシス)は「人と人以外の脊椎(せきつい)動物の間で自然に移行する病気または感染」と定義されています。

近年のペットブームに伴い、室内飼育や濃厚接触の増加もあり、ペットから感染する病気に関心が高まっています。動物から人、人から動物に伝播(でんぱ)可能な感染症は、すべての感染症の約半数を占めているといわれ、原因となる動物や媒介する動物は多種多様です。

最も代表的で、恐ろしい病気の一つである狂犬病などは、名前を知っている方も多いでしょう。媒介する動物は、イヌ、ネコ、コウモリ、アライグマ、キツネなどが有名で、ヒトが感染すると1~2カ月の潜伏期のあと、風邪のような症状からはじまり、錯乱、幻覚、恐水発作等の筋けいれんなどを経て、最終的には昏睡状態から呼吸停止で死に至る、一度発症すれば致死率ほぼ100%の恐ろしい病気です。狂犬病は日本では根絶され、輸入症例以外の狂犬病の発生は現在ありませんが、狂犬病がなくなった地域は、ごく一部に過ぎません。まだまだ、世界中で狂犬病は猛威をふるっており、我が国でも万が一の侵入に備えた予防対策がとられています。直接接触し感染の機会の多い国や、奥地・秘境などすぐに医療機関にかかることができないような国に渡航する際には、狂犬病予防のワクチンを打っておくことをおすすめします。

そのほかにも有名なものとしては、イヌやネコなどから感染するパスツレラ症、キツネなどから感染するエキノコックスなど、挙げていけばキリがありません。多くの場合、咬みつかれたり、ひっかかれたりすることが感染のきっかけとなりますが、ペットの飼育がブームとなり、より濃厚な接触が増えているためか、身近なペットに舐(な)められたことにより感染が起こり、結果として死に至ってしまったケースまであります。2019年には、ドイツの63歳の男性が、飼い犬に舐められたことがきっかけで感染症を発症し、重症化して死亡しました。イヌ、ネコの口内にいる「カプノサイトファーガ・カニモルサス」という細菌による感染症であると発表されています。こうした死亡事例は頻繁に起こることではないのですが、人獣共通感染症に対して、正しい知識と対策を立てていくことが大切です。人獣共通感染症を予防するには、まず、動物との過剰な接触を避ける必要があります。

口移しでご飯をあげたり、同じ食器を使ったりしないようにしてください。一緒に寝ることもおすすめはできません。動物に触ったあとは必ず手洗いなどをすることや、ペットの爪を切ることや、ブラッシングをすることなども必要です。また、ペットのトイレの処理を速やかに行うようにして生活環境を清潔に保つようにしましょう。最後に、動物を触ったり、動物が来るような公園などで遊んだりしたあとは、しっかり手洗いなどを習慣づけましょう。

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参考文献:CNN「飼い犬になめられて感染症に、63歳男性死亡 ドイツ」
https://www.cnn.co.jp/world/35145919.html

 

おると
整形外科専門医。診療にあたりながら、自身の転職経験をもとにしたブログ「フリドク」やX(旧Twitter)を2018年より開始。正しい医療をわかりやすく発信するスタイルや世間のネットニュースについての専門医目線での解説、ニセ医療解説などが大きな反響を呼び、現在12万人を超えるフォロワーを有する(2024年2月時点)

※本記事はおると著の書籍『整形外科医が教える 家族の身体を守る医学的ライフハック』(KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました。
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