「老化を加速させる糖化と酸化」を糖尿病専門医・牧田善二先生が解説

老化対策には日頃の運動なども大切ですが、特に食事に関わる、食材や食べ方の工夫で影響があることが分かってきています。今回は、AGE牧田クリニック院長の牧田善二(まきた・ぜんじ)先生に「老化を加速させる糖化と酸化」についてお聞きしました。

酸化とは
体の中で活性酸素が増え過ぎてしまった状態のこと。もともと活性酸素は免疫細胞と同様に体に入ってきた細菌を排除する働きをもちますが、増え過ぎると細胞を傷つけます。喫煙や古くなって酸化した油などの摂取、ストレスなども原因。

⇒免疫力が低下する

糖化とは
食事などから摂った余分な糖質が体内のたんぱく質と結びつき、細胞などを劣化させる現象。たんぱく質は体を作る材料なだけに、糖化が進むと多くの不調が起こります。さらに、老化を促すAGE(最終糖化物質)を作り出します。

⇒体と脳の老化が進む

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白内障/認知症/心筋梗塞/骨粗鬆症/シミ しわ たるみ/がん/薄毛/動脈硬化

ベスト体重で老化を防ぐ

体内で過剰なブドウ糖(糖質)が脂肪となり蓄積されると、太って不調の原因に。「ベスト体重を決めて、オーバーしたら炭水化物を減らすなど調整を」と、牧田先生。下記は先生おすすめの年齢別目標BMI 。健康管理に役立てましょう。

45~64歳:目標BMI /女性 20~25、男性 22~30
糖質を制限する必要はありません。目標値を超えたら糖質制限を。

65歳以上:目標BMI /男女とも30以下
目標値を超えたり、超えそうになったら糖質を制限する。

老化の大敵AGE(エージーイー)って?

AGEは、糖がたんぱく質と結びついて生まれる最終反応物質で、シミやしわなどの老化やさまざまな病気の原因になります。食事などでひっきりなしに糖質を摂取していると、糖化が進みAGEも増えてしまいます。「糖質を摂り過ぎたら次の食事は節制する」といった工夫をすることでAGEの増加を抑えることにつながります。


食材や食べ方の工夫で老化のスピードが変わる?

日々の食事が、老化に大きく影響することが、近年の研究で明らかになっています。

特に注目したいのが「糖化」と「酸化」です。

「糖化は体のコゲ、酸化は体のサビといわれ、どちらも老化の原因になります。かつては、体内に取り込んだ酸素の一部が活性酸素に変わる酸化が老化の元凶といわれていましたが、近年は糖化の影響の方が注目されています」と、牧田善二先生。

老化すると、肌のシミやしわが増えるのはもちろん、動脈硬化や心筋梗塞、認知症、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)などさまざまな病気が引き起こされるリスクも。

では、どうしたら老化の原因である糖化や酸化を予防できるのでしょう?

「糖化を防ぐには、まずは食事で糖質やAGEを摂り過ぎないこと。1日の糖質摂取量は100g程度を目標にしたいですが、例えば、ご飯1杯分の糖質は約55g 。主食は大量に糖質を摂れてしまうので、朝・昼に軽く1人分を摂り、夜は抜くなど調整を。また、果物は糖質が多いので食べ過ぎは禁物です」

《糖化は「食べ方」で防ぐ》

⇒糖質を減らす

糖質は、甘いものだけでなく、ご飯やパン、麵、いも類などにも多く含まれています。1日の摂取量は100g程度を目安にしましょう。

こんがりさせない

同じ食材でも、調理時の温度が高いほど、AGEの量が増えます。煮る、蒸す、レンチンなど、AGEが増えにくい調理法を心がけて。

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たんぱく質から食べる

糖化を抑えるには、血糖値がゆるやかに上昇することが重要。たんぱく質から先に食べることで血糖値の上昇を抑えられます。

酢やレモンをプラスする

揚げ物や焼き物は、酢やレモンに漬けてから調理するとAGEが増える量を約半減。調理後にかけるのも効果があるのでぜひ活用を。


調理の工夫も大切です。

「AGEは、焼く、揚げるなどの高温調理によって増えるので、焼き肉よりはしゃぶしゃぶ、焼き魚よりは刺身や煮魚の方がおすすめです。また、紫外線はAGEを増やす原因の一つ。季節にかかわらず、日傘やUVカットクリームなどを活用して予防に努めてください」

前述に加えて、抗糖化・抗酸化作用の高い食材を積極的に摂ることで、体と脳の若々しさを取り戻すことができます。

 

AGE 牧田クリニック院長
牧田善二(まきた・ぜんじ)先生

北海道大学医学部卒業。糖尿病専門医、医学博士。1996年北海道大学医学部講師、2000年久留米大学医学部教授。03年より現職。新刊『医者に殺されない 病院・医者の正しい選び方』(新星出版社)他、著書多数。

この記事は『毎日が発見』2023年6月号に掲載の情報です。

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