リモートワークが続き、ねこ背の人が増加中です。これは自律神経の不具合、血流障害、内臓の圧迫...体内からさまざまな不調を起こします。そういう不調に悩む人を数多く改善に導く整体師・片平悦子さんの著書「きれいな姿勢に生まれ変わる ねこ背伸ばし」(アスコム)から、ねこ背のメカニズム、改善メソッドをご紹介します。
その不調、「ねこ背」が原因かも!?
小学生の頃、机にかじりつくようにして勉強していると、先生から「姿勢をよくしなさい!」と叱られた記憶はありませんか?
昔の子どもなら「背中をまっすぐに!」とおばあちゃんに怒られ、背中をパシッと軽く叩かれたり、背中に物差しを差し込まれる、なんてこともよくありました。
ところが、大人になると「背筋を伸ばして!」「背中が丸まっているよ!」なんて注意してくれる人もいなくなってきます。
そして、今やパソコンにスマホの操作と、いつの間にか背中が丸まってしまうようなことばかりが増えてきたように思います。
その結果、昔だったらおばあちゃんにパシッと叩かれるような背中の持ち主に......。
ところで、「ねこ背」ってどういうものでしょう。
初めにお断りしておきたいのですが、たとえば机に向かっているときだけ背中が丸くなってしまう、というだけでは「ねこ背」とはいいません。
それは単なる「ねこ背予備軍」。
もちろん、ねこ背に進行してしまう可能性はゼロではありませんが、ちょっと気をつけていれば簡単に治ります。
そうではなく、本当の「ねこ背」はどういったものでしょう。
それは、次のような特徴があります。
●背骨が丸くなる
●肩が前に出る
●首が前に出る(ストレートネック予備軍)
●胸が縮こまり、女性はバストが垂れる
●顎が突き出る
●腰が丸まっている
●お腹がぽっこり出ている
●お尻が垂れている
●太ももの内側に力がない
ねこ背は単に「姿勢が悪くてカッコ悪い」だけの問題ではありません。
ねこ背を続けることで、体のあちこちに影響が出るのです。
まずはざっとあげてみましょう。
●頭痛
●肩こり
●腰痛
●内臓全般の不調
●肺活量の低下
●精神的な不調
●O脚
いかがですか?
頭痛・肩こり・腰痛までは「そうでしょうね」という気がしますよね。
ところが、内臓や肺活量、さらに精神的な不調や美容的にまで損となると「それは違うのでは?」と思ったのではないでしょうか。
ねこ背が招く"老け見え"
背中が丸くなるだけでなく、顎が出る、お尻が垂れる、お腹が出るなど全体的に老けた印象に。
ところが、これが大いに関係があるのです。
まず、下の図をご覧ください。
ねこ背は背骨と骨盤に負担大
左の正しい姿勢では背骨は骨盤にまっすぐ立ち、カーブを描く。ねこ背は骨盤が倒れ、背骨が丸くなる。
左の正しい姿勢をご覧ください。
まず、正しい姿勢では背骨が自然なゆるいカーブを描き、肋骨と骨盤の間が広く開いています。
それと同時に首の骨、すなわち頸椎にも自然なカーブがありますね。
ところが、右のねこ背はどうでしょう。
まず、骨盤が倒れ、背骨が丸まってしまいます。
こうなると肋骨と骨盤の間隔が狭せばまり、頸椎もまるで頭蓋骨に突き刺るよう。
このふたつが体にとって大きな問題を引き起こしているのです。
まず、肋骨と骨盤の間が狭くなっていることに注目してください。
ここには胃や腎臓、肝臓といった内臓が入っています。
これが肋骨と骨盤に挟まれて押しつぶされ、圧迫され続けているのがねこ背の状態です。
それだけではありません。
頸椎もカーブがなくなると、背骨の中を通る神経や血管に負担がかかりやすくなります。
このことがさまざまな不調を招いてしまうのです。
人の頭はボウリングの球くらいの重さがあると言われています。
先に説明したとおり、背骨は横から見るとゆるいカーブを描くように湾曲しており、これによって頭の重さを前後に逃がし、負担を軽くしています。
ところがねこ背は背中のカーブが強くなり、頭が前に出てしまっています。
そのため頭の重さがダイレクトに首や肩、背中の筋肉にかかってしまうのです。
首には脳へとつながる神経の束が通っています。
ここに負担がかかることは、自律神経の乱れをはじめとするさまざまなトラブルの引き金となりかねません。
また、血管に負担がかかることで血管がもろくなり、ちょっとした動作で血管が裂けてしまう危険性まで生まれてしまうのです。
それだけではありません。
ねこ背は心にも大きな影響を与えます。
さあ、ここで実験してみましょう。
立って両手を大きく上げ、思い切りの笑顔で「バンザーイ!」と言ってください。
そして、その体勢・笑顔のまま悲しいことを思い出してください。
続いて、今度はその場でしゃがみこみ、膝を抱えてください。
そして、その体勢のまま今まで一番楽しかったこと・おもしろかったことを思い出してください。
いかがですか?
万歳をしたときは悲しいことは思い出すのが難しく、膝を抱えた体勢では楽しいことを思い出すのが難しかったのではないでしょうか。
私たちの心は体の状態、姿勢に大きく影響されています。
背中を丸くしたねこ背の状態では前向きなことは考えづらくなります。
がんばろうという気持ちより、逃げようという気持ちのほうが強くなってしまうのです。
明るく前向きな人生を送りたいと考えているなら、ねこ背になんか、ならないのがいちばんなのです。
「ねこ背難民」が急増中!
ちょっとした空き時間があると肩を縮こめるようにしてスマホをいじったり、背中を丸めて長時間パソコン作業をしたりするなど、現代人は背中を痛めつけるようなことばかりしています。
しかも、近年のコロナ禍により、その傾向はさらに高まっています。
それは、仕事だけではなく、終業後も休日も家で過ごす時間が増えたから。
仕事中は椅子に座って机に向かい、リラックスタイムはリビングのソファに背中を預けてだらりと座りながらテレビを観る......。
そんな姿勢で毎日を送っていたら、健康に悪影響が出ないわけがありません。
実際、コロナ禍になってから、肩こりや頭痛、腰痛で悩む人が急増しています。
そのほかにも、心配なのが「垂れ首」です。
垂れ首とは、立っていても真っ直ぐ前を向けないほど、首が前に曲がってしまっており、頭を上げるのがツラくなります。
前が見えにくくなるだけではなく、覇気がない、老けて見えるといった容姿にも影響してきます。
垂れ首は、首から背中をつなげる筋肉が弱まってしまい、絶えず顎を引いているようになってしまうのです。
このまま筋肉が固まってしまうと、骨の形が変わってしまい、ずっと首が垂れた状態になるのです。
特に、パソコン作業やスマホの操作をし過ぎると、垂れ首になりやすいので、姿勢を変えるのが一番良い対策です。
特に、成長期にある子どもや若い人は、要注意。
これから体ができていくという時期に垂れ首が悪化してしまうと、最悪の場合、一生首が曲がったままになる可能性があります。
日頃の運動不足を解消しつつ、座り方を改善し、ストレッチを取り入れて何らかの対処をすることが大切なのです。
「腰痛解消」や「姿勢矯正」を謳うグッズもたくさん登場しています。
テレビの通販番組でタレントが「背中がシャキッとする!」と驚きの声を上げて腰に巻くベルトや座椅子を紹介することもありますし、整骨院で「院長開発」と銘打った健康器具や椅子を勧められることもあります。
実際に腰痛や頭痛、肩こりで悩んでいるのですから、わらにもすがる思いでそれらを買ってしまう、そんな人が増えています。
これで抱えているトラブルや痛みがなくなるなら、それはよい買い物だったといえるでしょう。
しかし、得てしてそうはいかないものではありませんか?
効果を感じられても一時のことだったり、装着が面倒で三日坊主になるなどして、いずれ使わなくなってしまう......。
私もそうだったから、よーくわかります。
もちろん、痛みはなくなりません。
「全然効かなかった」とか「続けられなかった」といいながら、そうした器具やグッズは納戸や押入れの中にしまいこまれます。
そして、また通販番組や新しく通い始めた整体院などで勧められるままに、新たな「腰痛対策グッズ」を買ってしまう......。
同じ展開になることをすっかり忘れて......。
こうした人たちを、「ねこ背難民」と呼んでみたいと思います。
体調をよくしたい一心とはいえ、トラブルの原因に気づかないままではどんなグッズを買っても残念ながら意味がないのです。
しかも、こうしたグッズは高価なものがたくさん。
「高いほうが効きそう!」と思ってしまうのが常なので、家計への負担も大変!新しく登場するものに目がなく、人に勧められるとその気になってしまう、そんなピュアな人が「ねこ背難民」になりやすいのかもしれません。
もし、ツラい腰痛などの体のトラブルや、老け込んで見えるねこ背がお金をかけずに治るなら、こんなにうれしいことはありませんね。
それを可能にするのが、「ねこ背伸ばしの座り方」です。
この方法なら、始めるのも一瞬。
しかもお金は一切かかりません。
それなのに続けていくと背筋がスッと伸び、体が勝手に「よい姿勢」を覚えてしまいます。
いつでもどこでもできて、効果は絶大。
道具は一切不要です。
いつも腰痛や肩こり、頭痛で悩んでいた人。
いつもどんよりとした気分でいる人。
また、いつも体のどこかが不調で、健康への不安が消えない人。
そうしたすべての方にオススメできるのが、「ねこ背伸ばしの座り方」なのです。
いよいよ「ねこ背伸ばしの座り方」をご紹介します。
あまりに簡単なのでびっくりするかもしれませんが、ぜひ今日から始めてください。
きっと、その効果に驚いてしまいますよ!!
全8章にわたって『ねこ背』になる理由、そのメカニズム、そして、改善方法などをわかりやすく解説