「歯周病」と「オーラルフレイル」を防ぐ! 「口の健康」新習慣【まとめ】

認知症や脳梗塞、動脈硬化などさまざまな病気の引き金になる歯周病や、筋力の低下などのリスクを高めるオーラルフレイル。口の健康を保つことは、老化の予防につながります。そこで今回は、幸町歯科 口腔外科医院 院長の宮本日出(みやもと・ひずる)先生に「口の健康を保つための新習慣」について伺いました。

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脳梗塞2108_P046_04.jpg

骨粗鬆症2108_P046_05.jpg

認知症2108_P046_06.jpg

糖尿病

口の老化は不調のはじまり
歯周病対策と口腔ケアが要!

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読者のみなさんのアンケートによると、「定期的に歯科に通っている人」は約6割と、口の健康への関心の高さがうかがえます。


どのくらいの頻度で歯科に通院していますか?

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定期的な通院は「3~4カ月ごと」「半年に1回」という人が多いようです。

口や歯について、悩んでいることは?2108_P046_02.jpg

「その他」は「歯間にものが挟まる」「歯ぐき下がり」などが目立ちました。


ですが、治療ペースはまちまちのよう。

「口の健康維持に必要なことは、まず第一に歯周病対策。歯周病は、一度発症すると自力で治すことはできません。全身の病気につながることも分かってきており、適切な治療と、予防のためのケアを同時に行う必要があります。調子が悪くなってからではなく、シーズンごとに歯科でメンテナンスを行うようにしてください」と、宮本日出先生。

私たち世代に必要な口のケアには、オーラルフレイル(口腔機能の低下)対策もあります。

「最近、食べこぼしが多くなったなと思ったら、口腔機能が低下しています。早めに対策することで、口の老化は防げます」(宮本先生)

口の衰えを防ぐことは、全身の健康につながります。

まずは次で口の状態を確認しましょう。

口の健康保てていますか?
大人世代が注意したいのはこの2つ!

1つめ:歯周病をチェック

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チェックの数が

0の場合
いまのところ心配なしですが、年に1度は歯科検診を受けましょう。

1~2の場合
歯周病の可能性あり。歯科で「歯周病でないか」確認してもらいましょう。

3以上
歯周病が進行しているかも。早めに歯科で相談をして対策しましょう。

※出典:8020推進財団「歯周病セルフチェック」より


詳しい記事はこちら:口の老化は「認知症」や「脳梗塞」のはじまり! 「歯周病」と「オーラルフレイル」セルフチェック

【次ページ:朝・昼・夜の口腔ケア】

口腔ケアを見直して
正しいお手入れを習慣化

「どの歯ブラシがよいですか?」

「歯磨き粉は何を使うとよいですか?」

「正しい歯の磨き方は?」

これらは、宮本先生が患者さんからよく聞かれる疑問だそうです。

「実はこれらの質問は、歯周病を間違って理解している方からよく聞かれるもの。口のケアは何か一つに決めるのではなく、それぞれの使い方や選び方を知り、トータルで正しく使うことが大切です」


1日のスケジュール

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朝はササッと歯磨き

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起床後の口の中は雑菌だらけ。まずは、朝食前にぶくぶくうがいで口の中を清潔にしましょう。大人の場合、歯の根っこが虫歯になりやすいものです。朝食後は、できれば虫歯予防用の歯磨き粉を使って歯磨きを。仕上げに洗口液を使うとより効果的です。

昼は食後のうがい

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自宅では昼食後も歯磨きをするという人も、外出先でのランチ後は、歯磨きがしにくいものでしょう。そんなときは、ぶくぶくうがいで口の中を清潔にしておきましょう。口の中に食べ物が残っていない状態にしておくことで、虫歯や歯周病の予防になります。

夜はていねいにフルコース

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歯周病は、寝ているうちに進行します。ですから、就寝前は歯周病予防用の歯磨き粉を使っての歯ブラシが必須。その後、デンタルフロスで歯と歯の間を清掃します。強く挟むと歯ぐきを傷めるので優しく行いましょう。歯間ブラシと洗口液もお忘れなく。

《歯磨き粉の選び方》

【朝】虫歯予防に効果のある歯磨き粉を使いましょう。

【夜】歯周病予防用のIPMP(イソプロピルメチルフェノール)配合のものを。IPMPは、菌膜に入り込んで、殺菌作用を施します。


上記の「1日のスケジュール」は、歯周病や虫歯予防に効果的な口のケア方法です。

「うがいをする」「夜は念入りに歯磨き」「歯ブラシ、歯間ブラシ、デンタルフロスは使い方のポイントを知る」といったことで、いまよりも質の高い口腔ケアができます。

「1日の中で行う口腔ケアを決めておくことで、正しいお手入れが習慣化できます。特に、歯周病は夜に進行しますから、寝る前の歯磨きは時間をかけて、ていねいに行うようにしてください」(宮本先生)

オーラルフレイル対策にはどんなことが必要でしょう?

「まずは正しい姿勢で食事をとること。よく噛んで、飲み込むまでの時間を長くします。そうすることで、誤嚥を防げます。加えて、唾液腺マッサージや舌の体操などを行うのもいいでしょう。口の機能の維持は、サルコペニア(筋力低下)やフレイル(※)、要介護などのリスク予防に直結します」(宮本先生)

これから紹介するセルフケアとプロのケアを合わせた新習慣で、一生元気な口を目指しましょう。

※健康な状態から要介護へと移行する中間の状態。

詳しい記事はこちら:「口の健康」新習慣! 口腔ケアは昼は「うがいのみ」夜は「しっかり」朝は「ササッと歯磨き」

【次ページ:歯ブラシの使い分け】

[歯ブラシの新習慣]

朝晩で使い分ける

「歯ブラシは朝晩1本ずつ用意するのがおすすめ」と、宮本先生。

朝は虫歯対策のラウンドタイプ、寝る前は歯周病対策のテーパータイプの歯ブラシを用意しましょう。

硬さは"柔らかめ"を選ぶのが正解です。

朝晩歯ブラシを使い分ける場合は、月1回を目安に新しい歯ブラシと交換しましょう。

(虫歯予防)ラウンドタイプ

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毛先が丸く加工されているもの

(歯周病予防)テーパータイプ

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先端に向かい細くなっているもの

持ち方は「えんぴつ持ち」

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歯ブラシを持つとき、グーの手で握る人は歯周病が進行しやすいと、宮本先生。

「力を入れてざっくりとしか磨けていないので、歯と歯ぐきの間の歯周病菌は掃除できません」。

歯ブラシはえんぴつを持つように、親指と人さし指、中指の指先で持つことで、力が入り過ぎず、細かく磨けます。

当て方を変える

歯を磨くときに大切なのは、歯と歯ぐきの境目をしっかり磨くこと。

「歯に対して、45度の角度をつけて歯ブラシを当てるようにしてください。また、毛先が少し曲がる程度の軽い力で磨くようにします」(宮本先生)。

ていねいなブラッシングの目安は、1本の歯につき20秒程度。

全ての歯を磨くには10分程度はかかりますので、テレビを見ながらなどの"ながら磨きでかまいません。

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毛先は歯に対して45度の角度で当て、歯と歯の間に毛先が入ることを意識しましょう。

2108_P052_05.jpg歯を磨くときは、歯ブラシの毛先が広がらない程度の軽い力(150~200g)で行います。

「ぶくぶくうがい」で筋力アップ

口の中には700種類の細菌が1000億個以上いるといわれ、その30%は粘膜の表面についています。

「寝起きや食後は、ぶくぶくうがいで口の中をきれいにして雑菌を取り除くようにします。歯の隙間など、隅々まで清潔にすることで、歯周病や虫歯の予防になります」(宮本先生)。

ポイントは、口をしっかり閉じて、歯の間に水を通すイメージで行うこと。

毎日の習慣にすることで、口周りの筋力アップにも役立ちます。

唇をギュッと閉じて強いうがいをする

2108_P053_01.jpg口をしっかり閉じて、歯の間に水を通すイメージで強く行き渡らせましょう。5秒間程度でOK。

【効果をアップしたい人は】

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左ほほ
左のほほを膨らませて、5~10秒ほどぶくぶくします。

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右ほほ
左ほほと同様に、5~10秒ほどぶくぶくします。

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上唇
上唇と歯ぐきの間で5~10秒ぶくぶくします。

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下唇
下唇の下を膨らませて、5~10秒ぶくぶくします。

詳しい記事はこちら:歯ブラシは朝晩で使い分け、持ち方と当て方にも工夫を! 「歯ブラシ」の新習慣と「ぶくぶくうがい」

【次ページ:「唾液腺マッサージ」で唾液量をアップ】

食事はゆっくりと姿勢よく嚙む

食事をしているとき、背中が丸まっていませんか?

「猫背で食事をすると、誤嚥を招きやすくなります」と、宮本先生。

食事をするときは、骨盤をしっかり立てて、姿勢よく食べることが大切です。

「食事中にむせる人は、無意識のはずです。姿勢を正して、食べ物をよく噛んでから意識して飲み込んでください。意識して飲み込むまでの時間を長くすることで、むせることや誤嚥を防げます」

よく嚙んで意識して飲み込みましょう。
飲み込むまでの時間は長めに。

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正しい姿勢で唇を閉じ、嚙んでから飲み込むと、舌が上顎に密着して食べ物をしっかりと喉に送り届けます。

【NG】

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中を丸めて食べると、嚙む力が弱くなり誤嚥しやすくなります。

毎晩の「唾液腺マッサージ」を

夜のリラックスタイムには、唾液腺のマッサージを。

唾液には、「口の清潔を保つ」「食べ物を飲み込みやすくする」など、さまざまな働きがありますが、加齢とともに出にくくなります。

口の中には、耳下腺、顎下腺、舌下腺と呼ばれる唾液の出やすいポイントがあり、これらを刺激することで唾液の分泌を促すことができます。

食事中にむせやすい人や噛みにくい人は、食前に行うのも効果的。

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唾液を増やすには、上の「耳下腺」「舌下腺」「顎下腺」の3つの部位を刺激しましょう。

マッサージをするときは
・力を入れ過ぎず、気持ちよい強さで行う。
・各部位5~10回を目安にリラックスして行う。

【顎下腺】

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耳の下からあご先まで、あごの内側の柔らかい部分を優しく指先で押す。

【耳下腺】2108_P055_03.jpg

左右の耳の付け根辺りを親指以外の4本の指でグルグル回すようにマッサージ。

【舌下腺】

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両手の親指をそろえ、あごの真下から舌を突き上げるようにゆっくり押し上げる。

《唾液の働きって?》
・口の清潔を保つ
・口の健康を保つ
・消化を助ける
・味を感じやすくする
・食べ物を飲み込みやすくする
・全身の健康を保つ

詳しい記事はこちら:食事はゆっくりと姿勢よく嚙んで! 夜のリラックスタイムには「唾液腺マッサージ」で唾液量をアップ

【次ページ:歯間ブラシの新習慣と「口のお悩み」質問コーナー】

歯間ブラシは正しいサイズを選ぶ

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歯磨き後、フロスで歯と歯の間を清掃したら、歯間ブラシで歯と歯の間の歯ぐきの近くをケアします。

歯間ブラシは、歯の隙間にちょうどよいものよりワンサイズ小さめが正解。

意外に毛先が硬く、ちょうどよい大きさだと歯ぐきが下がる原因になります。

歯間ブラシは洗口液につける

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歯間ブラシは、1カ所の隙間を掃除したら、その度に水で洗うのが基本ですが、裏技をプラスすることで効果がアップ。

「水洗後、歯間ブラシを洗口液につけてから歯間掃除をすると、歯間ブラシがもつ清掃力に加えて、洗口液の薬効も期待できます」(宮本先生)

仕上げの洗口液後はすすがない

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歯周病対策には、仕上げにIPMP(イソプロピルメチルフェノール)配合の洗口液を。

洗口液後は水ですすぐと、せっかくの薬用成分を洗い流してしまうので、そのまま終了。

ただし、洗口液は種類によって使い方が異なるので商品をよく確認してください。

舌の筋力をつける

ベロの中身は筋肉です。通常は、食べたり、しゃべったりすることで鍛えられますが、自然と衰えていきます。

舌を大きく伸ばすストレッチには、口呼吸の改善や口周りのたるみ改善などの効果が!

ポイントは舌を思い切り伸ばすこと。1日何度でも行いましょう。

舌をストレッチしましょう

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(1)舌を限界まで思い切り、下に伸ばす。3回。

(2)鼻に向かって舌を思い切り伸ばす。3回。

頼れる歯科医を見つける

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口の健康にはプロによるメンテナンスも重要。

「歯周病菌は菌膜の中に潜んでおり、歯ブラシでは除去できません。予防には定期的に歯科医院に通い、菌膜をはぎ取るバイオフィルム(※)治療を受けてください」と、宮本先生。

かかりつけ歯科医機能強化型診療所認定医院を利用するのもいいでしょう。

※バイオフィルムとは、歯垢が口腔内に長時間とどまり、膜のようになったもので、歯科医院のクリーニングで取り除くことができます。かかりつけの歯科医師に相談しましょう。

《かかりつけ歯科医機能強化型診療所って?》

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厚生労働省から認定された予防型歯科医院のこと。厳しい設置基準に合格し、感染予防に優れ、設備・スタッフが充実した歯科医院のみが該当します。インターネットで、お住まいの市町村と「かかりつけ歯科医機能強化型診療所」と入れると探しやすいです。

いまの歯科治療は昔と違う!
口のお悩みQ&A

Q.いま受けるべき、口の検査は?

A.唾液検査では、虫歯と歯周病の両方のリスクが分かるので、自分に合った治療選びに役立ちます。1度の検査で十分です

●唾液検査の費用:1,000円程度~
(保険診療外のためクリニックにより異なる)

Q.オーラルフレイルって治療できますか?

A.口の機能をチェックした上で、口腔機能低下症に該当すれば健康保険で治療ができます。主に口の機能を鍛えることが目的です。気になったら歯科で相談してください

Q.入れ歯とインプラント、どちらがよいでしょう?

A.食べる機能で考えればインプラントですが、適切なケアが必要です。特に70歳以上の方の場合は、慎重に検討を。インプラントには、ねじ式のスクリュー固定と一体型のセメント固定があります。手入れを考えるとねじ式のスクリュー固定の方が安心です

(セメント固定式)

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(スクリュー固定式)2108_P057_04_W500.jpg

詳しい記事はこちら:正しいサイズや使用方法は? 「歯間ブラシ」と「洗口液」の新習慣と「口のお悩み」質問コーナー

【まとめ読み】特集「『口の健康』新習慣」記事リスト

取材・文/オフィス・エム(寳田真由美) イラスト/かざまりさ

 

<教えてくれた人>
幸町歯科 口腔外科医院 院長
宮本日出(みやもと・ひずる)先生
歯科医師、歯学博士。愛知学院大学歯学部卒業。日本顎関節学会・代議員・指導医・専門医、厚生労働省認定歯科医師臨床研修医指導医・指導教官。国内外に160篇以上の論文を発表し多くのメディアで活躍中。

この記事は『毎日が発見』2021年8月号に掲載の情報です。

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