高校生活もそろそろ終わりのころ、大昔のことです。
あくびをして大きく口を開けると、顎がズキンと痛むことがありました。しばらくすると硬いもの噛む時に「カクン」と顎から音がするように。変だなぁと思っていても日常生活にさほど影響はなかったので、親にも言わずそのまま放置していました。
ある日、友人達と学食でのこと。ごはんを口に運ぼうとしたとき、口が開かなかったのです。「え?」普通に話はできるのに、箸も入らないくらいしか口が開かないのです。無理に開けようとすると顎に激痛が走ります。
ただ、不思議なことに、しばらくすると何もなかったかのように口を開けることができ、そのままランチタイムを楽しく過ごすことが出来ました。
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そしてある時、大きな口を開けた後に顎が動かなくなると気がついたのです。はじめはごくまれだったのに、頻繁に口が開かなくなり、そうなってから親に相談をしました。そして、歯科大学病院の口腔外科を受診したのです。
もともと歯は丈夫で健康でしたので、歯医者さん知らず。ドキドキしながらユニットにもたれ口を大きく開けたり閉じたり。レントゲンで歯の噛み合わせをチェックしたり。おもしろかったのは口をあけ自分の指が縦向きに何本入るかテストしたこと。理想は4本だそうですが、2本しか入らなかったのです。病名は顎関節症。原因は歯の噛み合わせが深いからと言われました。噛み合わせを変えるために24時間マウスピースをつけて、脳に新たな噛み合わせ位置を認識させるのです。マウスピースは硬くて厚みがあり前歯までしっかりガードして、装着に違和感を感じる代物でした。そして、自分の見た目を気にする年頃でしたのでその姿も気に入らない。
装着後は、何度か状態チェックのため通院生活。ある時大きく口を開けるとそのまま閉じなくなったのです。ここは大学病院、先生は研修生を呼んで私の周りを囲ませ治療の様子を見学させました。顎の関節部分、耳の付け根辺りから痛い注射を一本。まだ若かった私は、その自分の姿が恥ずかしくて、そして注射が怖くてそのあとすぐに治療を中止してしまいました。
「大きな口さえ開けなければ大丈夫」と、私はあくびをするのにも用心しましたし、大好きなお寿司も大きく口を開けずに食べていました。
以前、妹から「姉ちゃんは口のあきが小さいな」「おちょぼ口でしゃべる」と指摘されたことがあります。きっとそれは防衛本能から自然とそうなったのかもしれません。
あれから30年以上。時々顎関節が「カクン」と音をたて引っかかるようになったのですが、たまたま手で顎を前の方に押してみると「カクン」と音と共に治せるではありませんか。これはいい、と素人判断で続けていましたが、去年その方法で顎関節が元に戻らなくなり、顎に激痛が走り食べ物を噛むことが出来なくなったのです。そして30年以上ぶりに再び歯科大学病院で診てもらうことに。
原因は歯の噛み合わせが深いこともありますが、歯の食いしばり、そして顎関節に負担をける姿勢にもあることがわかりました。日本には「歯を食いしばって耐える」なんて言葉がありますが、まさに仕事や介護でイライラしたら、ぐっと口に力が入って歯を食いしばっていることに気がついたのです。何かに集中しているときもそうです。それが顎関節に負担をかけていたのです。
何気なく見ているネットも頬杖をついてみていたり、考えごとをするときに机に立て肘をして手に顎を置いていたり、よくよく観察してみるとその姿勢は顎に負担がかかるものでした。歯科技術が進歩したのか昔にくらべてマウスピースは薄くなり、装着時間は就寝時のみとなりました。これなら他人の目も気になりません。はじめは違和感がありましたが慣れてくると朝の目覚め時にはフェイスラインがとても楽なのです。凝り固まっていない感じです。やはり就寝中にも歯ぎしりなどの症状があったのかもしれません。数か月治療後、顎関節は「カクン」と音を鳴らすことはなくなり痛みもありません。
あれから1年たちました。
時々舌で上と下の歯の間の隙間をチェックして、顎を緩めるようにしています。就寝時にお布団の上でリラックスする時、口も一緒に緩めます。無意識の頬杖も気が付いたらやめるよう繰り返しています。ソファーでうたた寝するときも横向きの腕枕は顎関節に負担がかかるので上向きに寝そべるようにしたりして、とにかく顎関節に力がかからないようにしています。今のところ顎関節症の症状はありません。危険な自己流の処置などせずもっと早く治療すればよかったなと反省をしています。
肩の力を抜いて歯を食いしばらない。これが人生のモットーです。
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