65歳以上の認知症患者は、なんと、およそ5人に1人! 人生100年と言われる現在、身体の寿命と同じように、脳の健康を延ばすことが人間の長生きの幸せなのではないでしょうか。そこで今回は、順天堂大学名誉教授で、アルツハイマー治療で日本トップの新井平伊先生による『脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法』(文藝春秋)より、「脳の健康」を保つ方法を連載形式でご紹介します。
【前回:認知症になる確率が上がる高血圧。実は気にすべきは高さよりも...】
アルツハイマー病の予防には、口腔内のケアがきわめて大事
最近の九州大学の研究によれば、重度歯周病の罹患と認知機能低下には相関関係があるといいます。
さらに調べると、人の歯周病の歯茎にあるジンジバリス菌(※1)が、脳内のアミロイドβ(※2)の生産に関与していることがわかりました。
これはたいへん驚くべき発見です。
また、松本歯科大学と国立長寿医療研究センターによる最近の実験では、マウスの口腔内にジンジバリス菌を投与したところ、マウスの認知機能が著しく低下し、アルツハイマー病の病態も悪化していたといいます。
さらに、歯周病は糖尿病を悪化させることもわかっていますから、「歯周病│糖尿病│アルツハイマー病」といった三つ巴の負のスパイラルが形成される可能性があるわけです。
アルツハイマー病の予防には、口腔内のケアがきわめて大事ということになります。
※1:ジンジバリス菌:ポルフィロモナス・ジンジバリス。700種以上ある口内の常在菌のうち、歯周病の発症に最も関連が深い種の菌の中の一つ。
※2:アミロイドβ:タンパク質の一種で、脳の神経細胞に沈着してアルツハイマー病を引き起こすとされている物質
【次回:名医が勧める認知症予防の有酸素運動。意外と「貧乏ゆすり」も有効!?】
「脳の状態を把握することは、全身の健康を把握することと同じです」と新井先生。いますぐできる頭のメンテナンス、18の方法を解説します