胸やけ、おなかの張り、胃もたれ、げっぷ...こんな症状がある人は逆流性食道炎かもしれません。実は、年齢に関係なく、若い人にもこの病気が増えているそうです。そこで、逆流性食道炎の手術を500例ほど手掛けた外科医・関洋介先生の著書『胸やけ、ムカムカ、吐き気、胃痛、げっぷ・・・・・・それ全部、逆流性食道炎です。』(アスコム)より、症状のチェックから、治療法まで、知っておきたい「逆流性食道炎」の情報をご紹介します。
Q.逆流性食道炎は、なぜ起こるのですか?
胃と食道の間には、下部食道括約筋というゲートがあります。
ふだんこのゲートはかたく閉じていて、強酸性の胃液が食道のほうに上がってこないようになっています。
そして、食べ物が食道を下りていくと、その刺激でそのときだけゲートが開きます。
また、食道は蠕動運動によって食べ物を胃に送り出しますが、何かの理由で胃の内容物が食道に逆流してくると、それを胃に送り戻すはたらきもしています。
逆流性食道炎とは、下部食道括約筋が緩んで、胃液や胃の内容物が頻繁に食道に逆流するようになることで起きます。
これを一過性下部食道括約筋弛緩といいます。
食道の蠕動運動が弱っていると、それを助長します。
また、胃酸過多になっていると、逆流による刺激が強まります。
病気そのものの定義は、「胃内容物の、食道内への逆流によって起こるわずらわしい症状、あるいは合併症があるもの」となっています。
ここでいう合併症とは、たとえば食道粘膜の炎症で、それが起きていると逆流性食道炎という病名がつきます。
病気発生の原因は、生活習慣、食生活、肥満、加齢、遺伝、メンタル面などです。
Q.最近になってよく聞くようになったのですが、なぜですか?
今では日本人の3人から4人に1人が罹患しているといわれる逆流性食道炎ですが、病名を聞くようになったのは最近です。
その理由は、日本社会の高齢化と食生活の欧米化といわれています。
あるデータによると、1990年ごろから患者数が急激に増加しています。
逆流性食道炎の原因のひとつに肥満があります。
太っている人は腹圧が高いので、胃から逆流しやすいのです。
一日中パソコンに向かっているなど前かがみの姿勢を続けている人も腹圧が高くなるため、逆流を起こしやすくなります。
また、胃がんの原因といわれているピロリ菌ですが、これの除菌が進んだことも逆流性食道炎の患者数増加に関係があるといわれています。
ピロリ菌がいると、胃酸の分泌が抑えられるため、その菌がいなくなると胃酸過多の傾向になるからです。
Q.年をとると逆流性食道炎になりやすくなるのですか?
残念ながら加齢とともに胃液が逆流しやすくなるのはしかたがないことです。
ただし、症状を緩和する方法はいくつもあります。
年をとると、食道と胃のつなぎ目にある下部食道括約筋が緩んできます。
この筋肉は食道と胃の間のゲートの役割をしていて、ふだんは閉まっていますが、食べ物が食道から下りてきたときだけ開いて、胃に食べ物を送ります。
しかし加齢などでこの筋肉が緩んでくると、食べ物が下りてきていないのにゲートが開き、胃液が逆流するのを許してしまうようになります。
これが逆流性食道炎の原因です。
また、加齢で横隔膜に開いている食道裂孔という隙間が大きくなってしまうことがあります。
すると、胃袋の一部がそこから押し上げられ、食道の位置までせり上がってきます。
こうなると下部食道括約筋がうまくはたらかなくなり、胃液の逆流が頻繁に起こるようになります。
この状態を食道裂孔ヘルニアといい、手術でないと治せないほど進行してしまうケースもあります。
さらに、加齢による背骨の曲がりが猫背を招き、それが胃液の逆流の原因になることもあります。
【まとめ読み】『それ全部、逆流性食道炎です。』記事リストはこちら!
逆流性食道炎の症状、自己対処法、診察、治療など全4章にわたって詳しく解説しています。