炭水化物はダイエットの大敵で、糖質だから食べる量を減らしたほうがいい...そう思っている方、いませんか? でも、「腸活先生」と呼ばれる笠岡誠一先生は「これらの考え方は間違いで、冷まして食べるだけで、とても体によくなります」と言います。そこで、笠岡さんの著書『腸活先生が教える病気を遠ざける食事術 炭水化物は冷まして食べなさい。』(笠岡誠一/アスコム)より、「炭水化物を健康食に変える一工夫」や「冷ましたご飯が腸内環境改善につながる理由」などをお届けします。
ご飯を冷ませば、簡単に摂取目安量をクリア
まず、1日にどれくらいの量を食べればいいのか考えていきましょう。
「食事摂取基準(2020年版)」によると、日本人の食物繊維の摂取目標量は、男性が21グラム、女性は18グラムです。
実際の食物繊維の摂取量は平均約14グラムなので、女性ならば約4グラム、男性ならば約7グラムの食物繊維を摂る必要があります。
日本人は、一日のうちに米から炭水化物を約112グラム摂取しています。
炭水化物のほとんどがでんぷんですので、100グラムほどのでんぷんを食べていると仮定できます。
米を含めたいろいろなでんぷんの調理直後のレジスタントスターチ量は、平均するとでんぷん全体の約3パーセントだという報告があります。
また、それらを冷ますと、約12パーセントまでアップする、という報告もあります。
計算すると、3食すべて温かいご飯の場合は1日に3グラム、すべて冷ましたご飯の場合は1日に12グラムのレジスタントスターチが摂れることになります。
仮に、これまで3食温かいご飯を食べていた人が、すべて冷ましたご飯に変更した場合、増やせるレジスタントスターチの量は、約9グラム。
これだけで、食物繊維の摂取目標量をクリアできることになります。
まずは1日1食から始めてみよう
しかし、突然毎食のご飯を冷まして食べるのは大変ですし、そこまでしなくても摂取目標はクリアできます。
まずは、1日1食、実践するだけで十分です。
オススメは、毎日の昼食をレジスタントスターチメニューに変えてみること。
昼食にレジスタントスターチを食べると、血糖値が急激に上がらないため、午後にダルさや眠気を感じにくくなり、快適に過ごすことができます。
また、「セカンドミール効果」もあるため、夕食にレジスタントスターチを摂らなくても、夕食後に血糖値が上がりにくく、肥満の予防にもつながります。
お昼ならば、朝にお弁当を作っておけば、お米のレジスタントスターチはお昼には増えているので特別な手間が必要ありません。
また、うどんやそば、パスタなどの冷製メニューも、お昼ならば取り入れやすいでしょう。
お昼ご飯にレジスタントスターチメニューを取り入れると、始めたその日から、ダルさや眠気がとれるのを実感できるでしょう。
血糖値の上昇抑制やインスリンの分泌抑制は、食べてすぐ効果が表れるからです。
また、早ければ1~2日で、便の量が増えて排便がスムーズになるでしょう。
1日1食のレジスタントスターチ生活に慣れてきた方は、朝食や夕食にレジスタントスターチを取り入れてもまったく問題ありません。
レジスタントスターチに「食べすぎ」はないので、3食すべてをレジスタントスターチに変えるのが理想です。
いつもの炭水化物を冷まして、コツコツ摂取量を増やしていくことが大切です。
必ずしも冷蔵庫で冷ます必要はない
長らくレジスタントスターチは、加熱調理後に4℃まで冷ますと増えるといわれてきました。
冷蔵庫の冷蔵室は約3~6℃なので、レジスタントスターチを増やすには冷蔵庫に入れる必要があるという研究者もいます。
しかし、宮城教育大学の亀井文(かめいあや)教授らの研究によると、常温による冷まし方でも十分にレジスタントスターチ量が増えることがわかっています。
亀井先生によると、炊きたてご飯のレジスタントスターチ量を100とすると、1時間常温で冷ますと157程度まで増加。
逆に冷蔵庫で冷ました場合、6時間冷ましても140程度までしか増えず、24時間冷ましてようやく180程度に上昇したとのこと。
このデータを加味すると、実際に生活の中でご飯を冷ますならば、「常温で1時間冷ます」のが現実的であり効果的であるといえます。
具体的には、炊飯ジャーから茶碗にご飯をよそい、そのまま1時間放置してください。
水分を飛ばしたほうがよりレジスタントスターチが増えるため、ラップをするなら軽くすき間を開けて、そのまま置いておくのがいいでしょう。
ただし、4時間以上、常温で置いておくと、雑菌が増えてしまう可能性があるため、長時間常温に置いておくのはやめてください。
1時間で十分です。
また、炊飯ジャーの中に入れたまま、保温機能を使わずに置いておくと、水分が飛ばずにレジスタントスターチが増えにくくなってしまいます。
そのため、茶碗によそって冷ますようにしてください。
もし、常温で冷ますのに抵抗感のある人は、もちろん冷蔵庫で冷ましていただいても構いません。
お弁当の場合はどうする?
お弁当の場合、ご飯を詰めてから食べ始めるまで、4時間程度経過していることが多いと思うので、何もしなくてもレジスタントスターチが増えています。
雑菌の繁殖を抑えるために、できれば冷蔵庫で保存しておくのが望ましいでしょう。
弁当箱に詰める際も、時間に余裕があれば、1時間冷ましたご飯を詰めることをオススメします。
冷凍ご飯は大丈夫? 電子レンジは使っていい?
あまったご飯を冷凍保存して、電子レンジで再加熱して食べている人がいるかと思います。
このときのポイントは2つ。
冷凍保存してもいいのか。
電子レンジを使ってもいいのか。
まず、冷凍保存について。
炊きたて、冷蔵保存後、冷凍保存後のお米のレジスタントスターチ量を調べる実験では、炊きたてが100だったとすると、冷蔵保存後は161程度、冷凍保存後は124程度になりました。
つまり、冷凍ご飯は、炊きたてよりレジスタントスターチが増えるものの、冷蔵(常温)ご飯よりは増えないのです。
冷凍ご飯は、保存に便利ですが、レジスタントスターチを効率よく摂取するという意味ではオススメできません。
ただし、冷凍ご飯でも効果が認められることは確かです。
次に、電子レンジの使用についてです。
一度冷ましたご飯を電子レンジで再加熱すると、レジスタントスターチはやや減ってしまいます。
しかし、炊きたてご飯よりは多く含まれています。
このことは、サツマイモを使った実験でも明らかになっています。
これは、これまで知られていなかった事実です。
もっとも効率よくレジスタントスターチを摂取するには、冷ましたご飯を食べるのがベストですが、「今日は温かいご飯が食べたいな」という日は、一度冷ましてからレンジで温め直すという方法があります。
炊きたてご飯よりもたくさんのレジスタントスターチを摂取することができるでしょう。
レンジを使う際は、全自動の「あたため」ボタンを選んでください。
温かい汁物をかけてもレジスタントスターチは減らない
また、レジスタントスターチに温かい汁物をかけて食べても、レジスタントスターチの量は減りません。
お茶漬け、カレー、温かいダシやスープなど、何をかけてもOKです。
レジスタントスターチに温かいものをかけると、レジスタントスターチが減ってしまうと言う人がいますが、それは間違いです。
そもそもお米をご飯に炊き上げるとき、100℃の高温を最低20分は維持する必要があります。
そのくらいの高温にしなければ、でんぷんの分子構造を変化させることができないからです。
仮に、冷めたご飯にお茶をかけたとしても、上昇するお米の温度はたかが知れています。
分子構造を変化させるほどのエネルギーではありません。
冷めたご飯を食べるのが苦手な方は、温かい汁物をかけて食べるようにしましょう。
ご飯の温度とレジスタントスターチ量のまとめ
冷製の「炭水化物」が腸内環境を整え、日本人の健康につながる理由が全4章にわたって紹介されています。