炭水化物を冷ますとこんなメリットが! 腸活先生が教える「レジスタントスターチ」の基礎知識

炭水化物はダイエットの大敵で、糖質だから食べる量を減らしたほうがいい...そう思っている方、いませんか? でも、「腸活先生」と呼ばれる笠岡誠一先生は「これらの考え方は間違いで、冷まして食べるだけで、とても体によくなります」と言います。そこで、笠岡さんの著書『腸活先生が教える病気を遠ざける食事術 炭水化物は冷まして食べなさい。』(笠岡誠一/アスコム)より、「炭水化物を健康食に変える一工夫」や「冷ましたご飯が腸内環境改善につながる理由」などをお届けします。

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炭水化物を冷ますとレジスタントスターチに変わる

レジスタントスターチは、炭水化物に含まれる「でんぷん」の一種です。

普通のでんぷんは、食べると小腸までで消化吸収されます。

しかし、レジスタントスターチは、小腸で吸収されずに大腸まで行き着くことができます。

「消化されにくい(レジスタント)」、「でんぷん(スターチ)」であることから、日本では「難消化性でんぷん」と呼ばれています。

レジスタントスターチには、人工的に加工されたものを除くと、ぜんぶで3種類あり、RS1、RS2、RS3と名前がつけられています(RSはレジスタントスターチの意)。

RS1の代表は、玄米です。

玄米のように糠や表皮に包まれているでんぷんは、消化酵素によって物理的に消化吸収されないため、大腸まで行き着くことができます。

全粒粉でできたパンもこの仲間です。

RS2は、でんぷんそのものが消化されにくい性質を持っているタイプです。

生のジャガイモや、調理用の青いバナナなどがこれに当たります。

RS3は、もともと消化されやすい普通のでんぷんが、加熱調理後に冷ますことによって性質が変わり、消化されにくくなったものです。

つまり、パンやコーンフレークは、そのまま食べればRS3が含まれています。

RS3は「加熱したあと冷ます」と増加するため、「冷ましたご飯」「冷製パスタ」「冷やしうどん」「ポテトサラダ」などに、たっぷり含まれています。

炭水化物(でんぷん)をいちど加熱調理して、そのあと冷ますだけでOKです。

パスタの場合、アルデンテにゆでると、芯の部分がRS1のように物理的に消化されにくくなるため、さらにレジスタントスターチを増やすことができます。

なぜ、冷ますだけで性質が変化するの?

でんぷんは食べると消化吸収されるのに、なぜ冷ますだけでレジスタントスターチに変わるのでしょうか?

その仕組みはわりとシンプルです。

でんぷんは、たくさんのブドウ糖が集まってできています。

ブドウ糖を1本のひもとしてイメージしてみてください。

加熱後のでんぷんは、ブドウ糖のひもが絡まらずに伸びた状態。

そのため、消化酵素の働きで簡単にほどけてしまいます。

これが、「消化される」ということ。

しかし、加熱後のでんぷんを冷ますと、ひもが絡まりあってたくさんの結び目ができます。

こうなると、消化酵素が来ても、ブドウ糖のひもは解けなくなります。

この状態が「消化されない」ということ。

その結果、成分は同じまま、でんぷんを大腸まで届けることができます。

なんだ、それだけか、と思われましたか?

ですが、レジスタントスターチが大腸に届くことによって、腸は素晴らしいメリットを手に入れることができるのです。

なぜ、冷ますとレジスタントスターチに変わる?

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善玉菌が活躍するためには「家」が必要

レジスタントスターチが「ハイパー食物繊維」である理由の一つは、2種類ある食物繊維の役割を、両方とも担ってくれるからです。

食物繊維には、水に溶けない不溶性食物繊維と、水に溶ける水溶性食物繊維の2種類があります。

それぞれ別の役割を担っています。

まず、不溶性食物繊維は、便のかさを増やして腸のぜん動運動を促進する役割があります。

ぜん動運動とは、排便のために欠かせない、腸が収縮する動きです。

ぜん動運動がスムーズに行われると、腸内にたまった有害物質をくまなく体外に排出することができます。

不溶性食物繊維は、腸に刺激を与えて、ぜん動運動を促すことができるのです。

また、不溶性食物繊維には、腸内細菌の「家」になる役割もあります。

腸内細菌も生きています。

大腸の中で必死に何かにつかまって生きています。

腸内細菌は、不溶性食物繊維という「家」がないと、腸の中にやってきた「エサ」をうまく食べることができません。

そのため、不溶性食物繊維は、腸内細菌が増えるのを手助けしているといえます。

快便に欠かせないレジスタントスターチ

便秘は、ストレスや不規則な生活、運動不足や月経前症候群(PMS)など、さまざまな要因によって引き起こされますが、直接の原因は腸のぜん動運動がスムーズに行われていないことにあります。

ストレスで便秘になるのは、ストレスによって自律神経のバランスが崩れ、その影響で腸のぜん動運動が衰えているからです。

ストレスそのものを解消するのは難しいこともありますが、不溶性食物繊維をたっぷり摂取すれば、おのずと腸のぜん動運動が促進され、すると今度は自律神経のバランスが整い、心のストレスも改善するという、正のスパイラルが生まれます。

これが、腸は心とからだを繋いでいる臓器だといわれる所以です。

慢性的な便秘は骨盤内の血行不良をもたらし、全身の血流を悪化させてしまいます。

その結果、肩こりや腰痛、冷え性、肌荒れ、慢性疲労などの不調を引き寄せてしまいます。

不調どころか、便秘は深刻な病気を誘発する危険性も。

脂質異常症や糖尿病、大腸がんのリスクを高めることも指摘されています。

これらを回避するためにも、不溶性食物繊維は欠かすことができません。

不溶性食物繊維は穀類や豆類、根菜などに豊富に含まれていますが、わざわざそれらを覚えなくても、レジスタントスターチを摂取すれば十分です。

戦前の日本人の便は、1日約400グラムだったそうです。

小ぶりのバナナ3、4本分ぐらいの量。

一方、現在の日本人の成人の平均は200グラム。

足りない分は、レジスタントスターチの摂取で補っていきましょう。

【まとめ読み】『炭水化物は冷まして食べなさい。』記事リスト

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冷製の「炭水化物」が腸内環境を整え、日本人の健康につながる理由が全4章にわたって紹介されています。

 

笠岡誠一(かさおか・せいいち)
文教大学健康栄養学部教授、管理栄養士/「山之内製薬(現・アステラス製薬)健康科学研究所研究員→文教大学専任講師→アメリカ国立衛生研究所客員研究員」を経て現職。専門分野は栄養生理学、食品化学。レジスタントスターチに早くから注目し、このハイパー食物繊維「レジスタントスターチ」を増やした「ハイレジ食」の開発なども行う。テレビや雑誌などメディアでも幅広く活躍中!

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『腸活先生が教える病気を遠ざける食事術 炭水化物は冷まして食べなさい。』

(笠岡誠一/アスコム)

炭水化物は糖質が多いから体に悪い! そんな誤った情報に警笛を鳴らし、「日本人にはご飯が必要だ」と栄養生理学の観点から説明した話題作。「炭水化物を冷まして食べると太りにくい」という新しいご飯の食べ方をわかりやすく解説しています。日本人の主食であるご飯を中心にした炭水化物と腸内環境の関係を徹底解剖し、健康へと導く提案をしてくれる一冊です。

■『腸活先生が教える病気を遠ざける食事術 炭水化物は冷まして食べなさい。』の紹介動画もチェック!

※この記事は『腸活先生が教える病気を遠ざける食事術 炭水化物は冷まして食べなさい。』(笠岡誠一/アスコム)からの抜粋です。
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