炭水化物はダイエットの大敵で、糖質だから食べる量を減らしたほうがいい...そう思っている方、いませんか? でも、「腸活先生」と呼ばれる笠岡誠一先生は「これらの考え方は間違いで、冷まして食べるだけで、とても体によくなります」と言います。そこで、笠岡さんの著書『腸活先生が教える病気を遠ざける食事術 炭水化物は冷まして食べなさい。』(笠岡誠一/アスコム)より、「炭水化物を健康食に変える一工夫」や「冷ましたご飯が腸内環境改善につながる理由」などをお届けします。
なぜ、炭水化物を食べると健康になれるのか?
私たち日本人は、長年「ご飯」を主食として食べてきました。
しかし近年、糖質制限ダイエットがブームとなり、糖質を含んだ「ご飯」はダイエットの大敵とされています。
そして、あたかも糖質(炭水化物)そのものが、「からだに悪いもの」と見なされていることに強い危機感を覚えています。
それは間違いです。
炭水化物は、「からだに悪いもの」ではなく「からだに絶対必要なもの」。
炭水化物を食べなければ、人は健康になれません。
「炭水化物を食べて健康になる」と聞いて、腑に落ちない方もいるでしょう。
しかし、もしあなたが今、からだに不調や病気を抱えていたり、なかなか体重が減らなかったりと悩んでいたら、ご飯やそば、パスタやうどん、ジャガイモといった炭水化物を、たっぷり食べていないことが原因かもしれないのです。
アメリカのスコット・サロモン博士らが25年にわたって15万人に行った調査では、炭水化物(糖質)の摂取量が総カロリーの40パーセントに達しない人たちは、死亡リスクが高まり、寿命が短縮することが示されました。
また、炭水化物の摂取を大幅に減らすと、動脈硬化のリスクが高まり、心臓病による死亡率が50パーセント近くも増加するとの報告もあります。
さらには、がんによる死亡率の増加や脳梗塞への影響も指摘されています。
このことからも、「炭水化物を食べないと危険」なことがご理解いただけるでしょう。
炭水化物が健康維持に欠かせないのは、糖質がエネルギー源になるためだけではありません。
「炭水化物=糖質」と認識している人が多いですが、実は炭水化物の中には「食物繊維」がたっぷり詰まっています。
食物繊維と聞くと、野菜をイメージするかもしれません。
ですが、お米は摂取している食物繊維量のうちの10パーセント以上を占めており、これは全品目の中で第1位です。
グラム当たりの含有量は1位ではありませんが、主食として毎日のように食べるため、結果として、お米から食物繊維をもっとも摂取していることになります。
つまり、炭水化物を食べないことは、そのまま食物繊維不足に陥ることを意味しているのです。
糖質制限中に便秘になる人が多いのはこのためです。
さらに、炭水化物には普通の食物繊維とは異なる、ハイパー食物繊維「レジスタントスターチ」まで含まれています。
「腸活」には、炭水化物が必要
昨今、腸の重要性は広く知られ、「腸活」という言葉も定着してきました。
腸内細菌を増やす発酵食品や、食物繊維を多く含んでいる野菜を食べている人も少なくないと思います。
しかし、これだけ腸活の必要性が叫ばれていながら、日本人の食物繊維の摂取量は年々低下しており、現在は14グラム程度になっています。
摂取目安量は18~21グラムであるため、4~7グラム程度不足していることになります。
ちなみに戦後すぐ、1947年の食物繊維の摂取量は約27グラムでした。
なぜ、野菜を積極的に食べている現代人の食物繊維量は減っているのか?
それは、食物繊維たっぷりの炭水化物を毛嫌いして、遠ざけていることが原因にほかなりません。
健康のカギを握る腸内環境を良好にするには、野菜を食べるよりも、まずは「ご飯」を食べるべきなのです。
冷ますだけで炭水化物は「ハイパー食物繊維」に変わる!
炭水化物のすごいところは、食物繊維を多く含んでいるだけではありません。
炭水化物の糖質(でんぷん)の中には、レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)という成分があります。
カッコイイ名前ですが、レジスタント(消化しにくい)スターチ(でんぷん)という、そのままの名前です。
このレジスタントスターチがすごいんです。
レジスタントスターチは糖質ではありますが、食物繊維と同じような、いやそれ以上の働きをします。
食物繊維には、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類があり、腸内環境を良好にするには両方を摂取することが大切です。
水溶性食物繊維は腸の善玉菌の栄養になったり、不溶性食物繊維は腸にたまった有害物質を回収したりと、2種類とも腸内環境を整える上でなくてはならないものなのです。
実は、レジスタントスターチは、水溶性と不溶性、両方の食物繊維の機能を兼ね備えています。
そのため、非常に効率よく腸内環境を良好にしていくことができます。
しかし、すごいのはそれだけではありません。
ふつうの食物繊維は、大腸と肛門を繋ぐ直腸を素通りしてしまうため、直腸に腸内細菌を増やすことは容易ではありません。
しかし、レジスタントスターチなら、直腸にもしっかりアプローチして、からだにいい善玉菌を届けることができます。
つまり、レジスタントスターチは、腸全体をくまなく掃除しながら腸内細菌に栄養を与え、腸を隅から隅まで元気にしてしまう「ハイパー食物繊維」なのです。
しかも、同じ量の炭水化物を食べても、レジスタントスターチならばカロリーが半分。
腹持ちがいいため、食べすぎを抑えることにも役立ちます。
レジスタントスターチの存在が発見されたのは、1980年代のこと。
それまでは、その存在に誰も気づかずにいたのです。
毎日食べていたのにもかかわらず。
しかし、研究技術の進歩により、レジスタントスターチには腸内環境を良好にする大切な役割があることがわかってきたのです。
レジスタントスターチは、ご飯やうどん、ジャガイモや豆類などの炭水化物に含まれていますが、不思議な特徴があります。
それは、「冷ますと増える」ということ。
例えば、炊きたてご飯よりも、冷ましたご飯のほうが、約1・6倍もレジスタントスターチの量が増えます。
お弁当はレンジでチンしないで食べよう
レジスタントスターチの測定法が確立されたのは最近であるため、昔の人がどれだけ摂取していたかはわかりません。
しかし、考えてみると、現在より保温技術が整っていなかった昔は、「冷たいご飯」をたくさん食べていたことは間違いないでしょう。
つまり、昔の日本人は意識しなくてもたくさんのレジスタントスターチを食べていたことになります。
なぜ、昔の人はたくさんご飯を食べていたのに、やせていたのでしょうか。
その答えは、レジスタントスターチをたくさん摂取していたため、腸内環境が常に良好な状態にあり、脂肪の蓄積を防いでいたからといえます。
調理機器の進化で、私たちはいつでもどこでも「温かいご飯」を食べられるようになりました。
炊飯ジャーは、いつでもホカホカご飯を用意してくれて、冷蔵や冷凍したご飯だって、電子レンジを使えばすぐに温め直すことができます。
お弁当を食べるときは、コンビニや職場のレンジでチンしている人がほとんどではないでしょうか。
しかし、その代償としてレジスタントスターチの摂取量が減り、また、炭水化物を遠ざける食生活によって食物繊維全般の摂取量も減ってしまいました。
それがもたらしたのは、腸内環境の乱れによる肥満、血液の質の悪化、免疫力の低下、生活習慣病の恐怖です。
でも、大丈夫。
やることは簡単。
冷ますだけです。
いつも食べているご飯やうどん、そば、パスタ、ジャガイモなどの炭水化物を冷まして、レジスタントスターチを最大限に増やす方法をお伝えします。
また、レジスタントスターチが私たちの健康にどんなメリットをもたらしてくれるのかを、さまざまな角度から解説していきます。
私たち日本人は、数千年前からずっと炭水化物をたっぷり食べて生き延びてきました。
炭水化物を食べる量を減らすようになったのは、長い歴史の中でここ数十年のこと。
時代の変化は食の変化をもたらし、食の変化は健康状態に大きな影響を与えます。
【まとめ読み】『腸活先生が教える病気を遠ざける食事術 炭水化物は冷まして食べなさい。』記事リストはこちら!
冷製の「炭水化物」が腸内環境を整え、日本人の健康につながる理由が全4章にわたって紹介されています。