幅広い年齢層の女性を悩ます病気の一つに「関節リウマチ」があります。体内の免疫が関節を包む「滑膜(かつまく)」を敵と見なして攻撃し、炎症を引き起こす自己免疫疾患です。全身のどの関節にも炎症は起こりますが、早期段階では、手足の指など小さな関節の痛みや腫れが特徴的な症状といえます。いったいどのような病気なのでしょう? 東京女子医科大学医学部膠原病リウマチ内科教授の針谷正祥先生に、詳しく教えていただきました。
症状と段階に応じて適切な治療法がある
関節リウマチと診断され、最初に選択される第一選択薬として活用されているのが「メトトレキサート」です。
患者の約8割に処方され、その半数で関節破壊が止まると報告されています。
また、腎機能低下などで「メトトレキサート」が使えない人や、効果が得られない人は、別の薬が処方されます。
「半年間で目標を達成するように治療のスケジュールを立てます。第1段階の抗リウマチ薬で効果が得られないときには、作用機序(作用の仕組み)の異なる生物学的製剤を用いた治療法を行います」
生物学的製剤は、細胞から分泌されるサイトカイン(たんぱく質の一種)の中でも、免疫を活性化するようなものを阻害します。
大まかに分けて3種類あり、薬は合計8種類の選択肢があります。
抗リウマチ薬で効果が得られなかった人の約半数に効果があるとされています。
「7年ほど前から、新たな作用機序のJAK阻害剤も登場して、さらに治療の選択肢が広がりました。JAK阻害剤は、細胞内に入ってサイトカインの信号を阻害する"飲む生物学的製剤"と呼ばれる薬です。近年、治療法はさらに劇的に進化しています」と針谷先生。
早期発見・早期治療で病気の進行を食い止め、症状を治すことが大切なのです。
関節リウマチの治療に使われる主な薬
●抗リウマチ薬
[主な特徴]
メトトレキサートなどがある。現在は第一選択薬。免疫の異常に作用して病気の進行を抑える。
[注意すべき点]
効果が出るまでに1カ月から半年くらいかかるために、消炎鎮痛薬を併用することもある。効果が不十分な場合は複数の抗リウマチ薬の使用も。
●消炎鎮痛薬
[主な特徴]
関節の腫れや痛みを和らげる。即効性がある。症状が長期間続く場合には、継続的に使用する場合が多い。
[注意すべき点]
炎症を根本から取り除くことはできない。副作用である胃潰瘍や十二指腸潰瘍には注意が必要。
●ステロイド
[主な特徴]
炎症を抑える作用が強く、関節の腫れや痛みを和らげる。
[注意すべき点]
有効な薬剤だが副作用もあるため、必要最小限の使用にとどめる。早期に中止することがすすめられる。
●生物学的製剤
[主な特徴]
免疫の働きを抑える薬。炎症を引き起こす物質の働きを妨げ、関節破壊が進行するのを抑える。点滴または皮下注射で、週に2回~2カ月に1回投与。通院回数やライフスタイルによって選択可能。
[注意すべき点]
重い感染症にかかっている場合は投与できない。皮膚に異常が見られる場合も投与が見送られることがある。副作用として肺炎や結核などの感染症が起こることも。投与の際にアレルギー反応が起こることもある。
一方、関節リウマチの原因は、遺伝的な要因があるといわれています。
両親や兄弟姉妹などの親族に関節リウマチを発症している人がいると、発症リスクは高くなります。
ただし、生活環境の影響も大きいとされています。
「関節リウマチの遺伝的な要因は約2割といわれています。残りは環境要因です。その2大要因が、喫煙と歯周病です。喫煙している人は禁煙し、口腔内ケアを心がけることが大切です。特に、親族に関節リウマチの人がいて、遺伝的な要因を持つ人は、禁煙と歯周病予防に努めていただきたいと思います」と針谷先生は警鐘を鳴らします。
日頃の予防の心がけは禁煙と口腔ケア。
朝起きたときの指のこわばりや痛みが続くときには、早めにリウマチ科へ。
そして、関節リウマチの人は関節をいたわる生活の心がけもお忘れなく。
似ている症状で違う病気は?
変形性関節症
軟骨の変形や摩耗で関節に炎症が起こり、腫れや痛みを伴います。加齢とともに指の第1関節、ひざなどに症状が現れやすいといえます。
外反母趾(がいはんぼし)
幅の狭い靴を履き続けて親指の付け根が変形し、関節の飛び出したところが痛むのが特徴。重度では裸足のときも痛みます。
腱鞘炎(けんしょうえん)
指などが曲がるときに関わる腱鞘に炎症が起こり、強い痛みを引き起こすのが腱鞘炎です。スマホの長時間操作でも起こります。
症状改善!関節のトレーニング
指先つまみ体操(1セット10回 1日3セット)
親指とほかの指で輪を作り、5秒ほど力を入れた後に開き、次に関節を伸ばして指を合わせて力を入れます。片手ずつ10回を1セットで、1日3セットを目安に。
グーパー体操(1セット10回 1日3セット)
両手でグーをしたときに力を入れ、パーと開いたとときにも力を入れます。これを交互に行います。
脚とひざの運動(1セット5回 1日3セット)
いすに座って交互に両足を上げ下げします。また、両ひざを曲げる、伸ばすを繰り返します。5回を1セットで、1日3セットを目安に。
悪化を防ぐ!優しい暮らしの知恵
ドアノブは手に負担の少ないものを
ドアノブをねじるのは関節に負荷がかかり、たいへんです。楽に開けられるドアノブにしましょう。
拭き掃除のやり方を変えてみる
手首を曲げて力を入れるのは良くないので工夫を。補助具をうまく使うと楽になります。
手すりを付ける
玄関の段差はバランスを崩しやすいので、手すりを付けましょう。いすを活用するのも◎。
【まとめ読み】アラフィフ世代が気になる病気はここからチェック!
取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史