「日本人の約8割は歯周病」という衝撃の調査結果をご存じでしょうか?その原因は「だ液が足りない」こと。だ液が減少すると、歯周病や虫歯だけでなく、生活習慣病やがんといった重大な病気のリスクも増大するといわれています。豊富にだ液を分泌させるためには「ベロを鍛えることが大切」という歯科医師・坂本紗有見さんの著書『歯周病、口臭、むし歯を防ぐ 1分間「殺菌ベロ回し」』(アスコム)から、その理由とベロを鍛え方について連載形式でお届けします。
磨き残しを避ける、「一筆書き」の歯磨き法
歯の磨き方というのは人それぞれで、歯科医が指導する磨き方を完璧に実践している人はおそらく少数派でしょう。
大切なのは、歯のひとつひとつの形状をイメージして、1本の歯のすべての面をブラッシングすることです。
歯の表面。裏側。両サイド。そして上面。
この際、自分の歯や歯ぐきの状態に合わせて、歯ブラシの当て方をアレンジする必要があります。
特に歯と歯の間は重要で、歯間ブラシやフロスを活用し、しっかり磨きましょう。
歯周ポケットのある人は斜め45度にブラシを当て、ポケット内の歯周病菌をかき出すように磨きます。
そうでない人は、歯ぐきを傷つけないように、歯に対して垂直にブラシを当てて磨けばよいでしょう。
そして歯並びの悪さが気になる人は、その部分のみ縦にブラシを当てて磨くなど、ケースバイケースで磨き方を変えることで、より効果的なブラッシングを行うことができます。
こうしてすべての面をブラシで十分にこすり、食べかすや脂などをしっかり落とせば、プラークの発生を抑えることができます。
なお、一筆書きの要領で右から左に、あるいは左から右にと順に磨いていくのが、磨き残しを避けるコツ。
頭のなかで、U字型に配列されている歯並びをイメージしてみてください。
まずは下の歯列の裏側を、右からじっくり左にかけて磨いていき(逆方向でも可です)、左端まで到達したら表面側に折り返して右へ向かう。
右端に到達したら、上の歯へ移動して同じように裏側から表側へと順に磨きます。
とくに規則性を持たずにブラシを上下左右に動かすだけでは、どうしても磨き残しが発生してしまいます。
その日の汚れはその日のうちに除去するために、ぜひ覚えておいてください。
そして、これに加えて定期的に歯科クリニックに足を運び、歯石を取ってもらったり、歯周ポケットのなかをクリーニングしてもらえば万全でしょう。
ちなみに、こうした歯磨きによってプラークを完全にゼロにすることは、まず不可能です。
大切なのはプラークの増殖を、健康に悪影響を及ぼさない程度に抑えることで、これをプラークコントロールと呼びます。
他方、糖質がむし歯の原因を呼び込むとはいえ、完全に糖質ゼロで生活をするのもやっぱり不可能。
糖質不足はむしろ不健康です。
そこで重要なのは、日頃からむし歯や歯周病になりにくい食生活を心がけることで、こちらを「シュガーコントロール」と呼びます。
具体的には、余計な間食を避けたり、甘いものの過剰摂取を控えるなど、食事以外での糖質摂取をしっかり制御することが大切。
つまり、むし菌の養分になるものを少なくし、菌の繁殖を抑えることが重要です。
私たちが、普段よく口にする食べ物や飲み物に含まれる砂糖などは、むし歯菌の大好物。
糖分の含まれる食べ物や飲み物をとる回数が少なければ、むし歯になるのを予防できます。
ちょっとした心がけで十分です。
甘いジュースやコーラなどは、回数を減らすか、ノンシュガーのお茶にかえたり、コーヒーは砂糖をいれないだけで、十分変わります。
プラークコントロールとシュガーコントロール。
この2つをぜひ、日常のなかで意識してみてください。
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口内フローラと病気の関係に詳しい歯科医師・坂本紗有見さんがさまざまな病気を防ぐベロの鍛え方「殺菌ベロ回し」について教えてくれます