「日本人の約8割は歯周病」という衝撃の調査結果をご存じでしょうか?その原因は「だ液が足りない」こと。だ液が減少すると、歯周病や虫歯だけでなく、生活習慣病やがんといった重大な病気のリスクも増大するといわれています。豊富にだ液を分泌させるためには「ベロを鍛えることが大切」という歯科医師・坂本紗有見さんの著書『歯周病、口臭、むし歯を防ぐ 1分間「殺菌ベロ回し」』(アスコム)から、その理由とベロを鍛え方について連載形式でお届けします。
こんなにスゴい!だ液が持つ8つの働きとは?
子どもの頃、転んでひざを擦りむいたときなど、「つばをつけておけば治るよ」と言われたことが誰しもあるのではないでしょうか。
つまり、だ液には殺菌や消毒の効果があるというのは、昔から信じられてきたことです。
そもそもだ液とは何のためにあるのでしょうか?
だ液がなければ私たちの口のなかはカラカラに乾いてしまい、食べ物を咀嚼したり、言葉を話すのに支障をきたすのは言うまでもありません。
しかし、単に口のなかを潤すためだけにだ液が存在するのかというと、そうではありません。
日頃なにげなく飲み込んでいるだ液は、実は次のような重要な役割を担っているのです。
● 自浄作用
● 歯の再石灰化作用
● 咀嚼補助
● 免疫作用
● 抗菌作用
● 消化作用
● 歯の保護(円滑)作用
● pH緩衝作用
こうしただ液の働きが解明されるにつれ、近年、口内環境は全身の健康と長寿にかかわる重要な要素であることがわかってきました。
言い換えれば、だ液は人が健やかに長く生きるために不可欠なものであり、天然のスーパー消毒液なのです。
だ液がたっぷり出れば、歯周病やむし歯の予防につながるワケ
犬や猫などの動物が、ケガをした傷口の部分をペロペロとなめていることがよくあります。
これは単に流れる血をふき取っているのではなく、だ液によって傷を消毒するための行動であると言われています。
実際、だ液はばい菌を撃退する消毒効果を備えています。
具体的には、リゾチームやラクトフェリンやラクトペルオキシダーゼという、舌を噛みそうな抗菌成分の働きによって細菌の繁殖を抑え、傷口の悪化や化膿を防いでいます。
歯磨きをしない動物が、人間のようにむし歯に悩まされることがないのも、こうした働きによるものでしょう。
だ液はむし歯はもちろん、口臭や歯周病のリスクを防ぐ役割を担っているのです。
口内に複数あるだ液腺が正しく機能していれば、だ液は本来、潤沢に分泌されるものです。
そして口のなかに豊富な水分が送り込まれれば、食事のあとの食べかすや汚れが洗い流され、むし歯や歯周病の原因となるプラーク(歯垢)の発生を防ぐことができます。
だ液が天然の消毒液であるとされるのは、まさにここに理由があります。
さらに見逃せないのは、口のなかのpH値です。
みなさんも化学の実験で、いろいろな物のpHを測ったことがあると思いますが、口のなかは本来、中性に保たれています。
ところが、食事によって糖(ごはん、パン、麺など)を摂取すると、口内のpH値は酸性に大きく偏ります。
これがむし歯予防において大きな問題となるのです。
むし歯とはその原因菌であるミュータンス菌がつくりだす酸によって、歯が溶かされていくもの。
そのため酸性に偏った口内はミュータンス菌にとって好都合で、歯はどんどんむし歯に侵されてしまうことになります。
そこで、もともと弱アルカリ性の性質を持つだ液を大量に分泌させると、口のなかのpH値が中和され、むし歯菌が悪さをしにくい環境を整えることができるのです。
口内フローラと病気の関係に詳しい歯科医師・坂本紗有見さんがさまざまな病気を防ぐベロの鍛え方「殺菌ベロ回し」について教えてくれます