私たちの「目」は加齢とともに見え方の質が少しずつ低下していきます。自分では気が付きにくいですが、見え方の変化や不快な目の症状は、病気のサインかもしれません。長年、目の治療を行っている二本松眼科病院の平松類先生に、「かすみ目」の基礎知識についてお聞きしました。
目のピントが合わず視界がぼやけて見える
かすみ目とは、ぼやけてピントが合わない状態のことです。「かすみ目は白内障や緑内障、網膜剥離など、さまざまな病気が原因で起こることがあります。『どの距離のものを見てもかすんで見える』『かすんだ状態がずっと続いている』という場合は、病気の可能性があるので受診します」と平松先生。
原因の多くは目の使い過ぎ
病気以外のかすみ目の原因には、目の筋肉である毛様体筋の疲労によって起こることがあります。スマートフォンの操作や読書など、近い距離のものを長時間、見続けると毛様体筋が緊張した状態が続きます。毛様体筋が疲労してピント調節がうまくいかなくなり、かすみ目になるのです。
「かすみ目は、目の血流が一時的に悪くなって起こるケースもあります。ほとんどの場合、5分ほどで自然に回復します」と平松先生。目の疲労を回復させるには下で紹介する回復法や、「ガボール・アイ」という視力回復法を行います。
毛様体筋の働きが低下するとピントが合わせにくくなる
遠くを見るときのピント調節
毛様体筋の緊張が緩んだ状態。水晶体は引き延ばされて薄くなり、遠くにピントが合う。
近くを見るときのピント調節
毛様体筋が緊張している状態。水晶体には厚みが出て、近くにピントが合う。
毛様体筋をほぐす2つの回復法
遠近ストレッチ
最初に、2m以上離れた外の景色などを数秒間見ます。次に、人差し指を立てて目から30〜40㎝離した位置に固定し、指先を数秒間見ます。この動作を10回ほど繰り返します。
簡単ホット・アイ
①両手を10回ほどこすり合わせます。
摩擦で手のひらがよく温まるように、しっかりとこすります。
②手のひらを器のように丸めて、手のひらがまぶたに触れないようにして、閉じた目の周りに30秒ほど押し当てます。
これら2つの回復法「遠近ストレッチ」と「簡単ホット・アイ」は、視力回復法「ガボール・アイ」と一緒に行うと効果的です。
■「かすみ目」のまとめ
原因は?
白内障や緑内障などの病気が原因の場合や、目の疲労、目の血流悪化によって起こることがある。
受診の目安
「どの距離を見てもかすむ」「常にかすんでいる」という場合は病気の可能性があるので受診する。
改善法
「遠近ストレッチ」「簡単ホット・アイ」「ガボール・アイ」などを行って毛様体筋の緊張をほぐす。
取材・文/松澤ゆかり イラスト/はせがわめいた