加齢による「体のだるさ」や「やる気の低下」は、病院に行っても「老化」の影響と診断されることが少なくないそうです。しかしこの「老化」、実はホルモンとミネラルの不足による「熟年期障害」という病気の可能性があります。そこで、専門医が最新研究を基に解説した話題書『熟年期障害』(平澤精一/アスコム)から、今すぐ知っておきたい「熟年期障害の症状と原因」を連載形式でお届けします。
熟年期障害の症状を「ただの加齢」と考えてはいけない
お話を始める前に、みなさんにぜひやっていただきたいことがあります。
以下の図表3のチェックリストと、ご自身、もしくはご家族の状態とを照らし合わせてみてください。
●各設問に当てはまる症状の程度をチェックし、点数を合計してください。
17~26点:熟年期障害ではない
27~36点:軽度熟年期障害の可能性
⇒一度テストステロンの値を測定してください
37~49点:熟年期年期障害の可能性
⇒泌尿器科にご相談ください
50点以上:重度熟年期障害の可能性
⇒ぜひ泌尿器科にご相談ください
このチェックリストは、男性更年期(こうねんき)障害の問診(もんしん)に使う「AMS(Aging Male's Symptoms)スコア」を加工し、男女を問わず、熟年期障害のチェックに使えるようにしたものです。
いかがでしょうか?もし「熟年期障害の可能性がある」という結果が出ても、心配はいりません。適切な治療を行えば、症状が改善する可能性が十分にあるからです。
まずはこの本をお読みいただき、必要な知識を手に入れたうえで、お近くの泌尿器科などに相談してみてください。
さて、いきなり「熟年期障害」という耳慣れない単語が出てきて、みなさんの中には戸惑っている方もいらっしゃるかもしれませんね。
熟年期障害とは、60歳から80歳にかけての「熟年期」に、「テストステロンというホルモンの分泌量の低下」もしくは「亜鉛という栄養素(ミネラル)の不足」によって引き起こされる、さまざまな心身の不調のことであり、加齢やストレス、食生活の乱れなどがその原因となります。
また、熟年期障害の主な症状としては、
・何に対しても興味が持てず、やる気が起こらない
・外出する気になれず、引きこもり状態になっている
・判断力が低下した
・物忘れがひどくなった
・昔は簡単にできたことが、できなくなった
・イライラや不安感に襲われやすい
・疲れがなかなか取れず、だるい
・肩や腰などが痛い
・肌荒れや脱毛がひどく、見た目が急激に老け込んできた
・よく眠れない
・性欲がない
といったものが挙げられます。
もしかしたらみなさんは「なんだ、大したことないじゃないか」「年をとればよくあることじゃないか」と思われるかもしれません。
しかし、テストステロン不足、亜鉛不足によってもたらされるこうした症状を「加齢のせい」と軽く考え、放置してはいけません。
適切な治療を行わずにいると、心身の健康状態がどんどん悪化し、あっという間に寝たきりになってしまうこともあるからです。
熟年期障害は誰がかかってもおかしくない、日本の新たな国民病
熟年期障害は、単なる「老化現象」ではなく、れっきとした「病気」です。
そして、高齢化社会の進展および、食生活の変化やストレス過多などにより、男女を問わず、現代日本人の多くがテストステロン不足、亜鉛不足に陥っていることから、今後、熟年期障害を患う人は増えていくと考えられ、いずれは日本人の約8割がかかるのではないかともいわれています。
熟年期障害は、まさに「日本の新たな国民病」であるといえるでしょう。
また、テストステロンは、一般的には「男性ホルモン」として知られていますが、第2章で詳しくお話しするように、女性の体内でもテストステロンは分泌されています。
特に閉経後の女性は、エストロゲン(女性ホルモン)の分泌が急激に減少してホルモンバランスが変化するため、テストステロンの影響をより強く受けるようになります。
熟年期障害は、男女を問わず、熟年期を迎えれば、誰がかかってもおかしくない病気なのです。
最新の研究、データに基づき、5章にわたって「熟年期障害」の正体を解説。自分で予防ができるセルフケア法も