「排尿しようとすると下腹部が痛む」「トイレに行く回数が増えた」「残尿感がある」などの症状に悩まされたことのある人は少なくないのではないでしょうか? もしかしたらそれらの症状は「膀胱炎」のせいかもしれません。膀胱炎はその名のとおり、尿をためる膀胱で炎症が起きる病気です。診断もしやすく治療しやすい病気ですが、一方で人によっては繰り返すことも多い病気。そこで、膀胱炎になる原因や理由、予防法を、医療法人 東和会第一東和会病院 女性泌尿器科・ウロギネコロジーセンター長の竹山政美先生に教えていただきました。
細菌感染で起こる膀胱炎
女性は感染しやすいのでご注意を!
膀胱炎は、女性の2人に1人はかかることがあるとも言われるほどポピュラーな病気です。ですから、病名をご存じの方は多いことでしょう。ですが、膀胱炎とはどのような病気なのか、どんな症状が起こるのかといったことまで正しく理解している人は、多くないのではないでしょうか。
膀胱炎とは、文字どおり、尿をためる膀胱が炎症を起こす病気です。主に、大腸菌などの細菌が尿道を通って膀胱に侵入し、炎症を起こします。通常、膀胱の中は無菌状態です。ですが、何らかの理由で、尿道から菌が入り込んで、炎症を起こしてしまうことがあるのです。
膀胱の粘膜に炎症が起こると、頻尿や痛み、尿が濁るなど、排尿に障害が現われます。
膀胱炎は、女性に多い病気です。男性に起こることもありますが、男性の場合は、膀胱炎でなく前立腺炎になることが多いようです。では、なぜ膀胱炎は女性に多いのでしょうか?
「膀胱炎は、尿道から細菌が膀胱へと入り込むことで炎症が起こる病気ですが、細菌の入口である尿道のつくりが、男性と女性では異なるため、膀胱炎になるなりやすさが違うのです。男性の尿道は約15㎝と長いのですが、女性の尿道は約4㎝と短いため、尿道から膀胱へと細菌が侵入しやすいのです。また、女性の体は、尿道口と膣や肛門がとても近いため、肛門の周囲にある大腸菌などの細菌が尿道に侵入しやすくなっています(次のイラスト参照)。そのため、膀胱炎が女性に多く起こりやすいのです」(竹山先生)
●男性の膀胱と尿道
●女性の膀胱と尿道
ところで、膀胱の仕組みはご存じですか? 膀胱炎の具体的なお話をする前に、その病気が起こる膀胱についておさらいしてみましょう。
膀胱は、腎臓で作られた尿をためる臓器で、その壁は筋肉でできています。尿をためているとき、膀胱の筋肉はゆったりと広がっており、尿道はギュッと閉じられています。このとき、尿道を閉じる役目を担っているのが尿道括約筋で、膀胱の開け閉めをしています。 尿道括約筋が緩んで膀胱が収縮すると、膀胱にたまった尿は尿道を通って排泄される仕組みになっています。ですから、膀胱に少しずつ尿がたまっていっても、もれることはありません。
膀胱の中にたまった尿が200~300mlくらいになると、膀胱から神経を経由して「おしっこがたまったよ」という尿意の信号が脳へと送られます。次に信号を受けた脳から、「おしっこをしよう」という排尿の指令が出されます。すると、体も排尿のスタンバイを始めます。尿意を受けてもすぐにトイレに行けないときは、脳から「まだ!」という指令が出て、意識的に尿道を閉じておくことができます。ですから、通常はぎりぎりまで尿がたまっても、もらすことなくコントロールできるのです。
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取材・文/笑(寳田真由美) イラスト/添田あき