「拭く」ときは前から後ろに。温水洗浄式便座には要注意⁉ 膀胱炎にならないためのヒント集

寒い冬にはトイレが近くなりがちですが、排尿後の痛みや尿の濁りなどの異変があったら要注意。膀胱に炎症が起きた「膀胱炎」が疑われます。その原因と対策、予防法などについて、膀胱炎に詳しい東邦大学医療センター 大森病院泌尿器科講師に伺いました。

「拭く」ときは前から後ろに。温水洗浄式便座には要注意⁉ 膀胱炎にならないためのヒント集 名称未設定-1.jpg前の記事「閉経後の女性がリスク高! 膀胱炎になりやすい理由とは(2)」はこちら。

 

細菌の侵入を防ぎ、膀胱から速やかに排出

加齢とともに女性に発症しやすい膀胱炎は、予防を心がけることで未然に防ぐことが可能です。重要なのは、尿道への細菌の侵入を防ぎ、仮に侵入したとしても増殖させないことです。

「閉経後の人の膣には細菌が繁殖しやすいので、トイレットペーパーを膣の方から尿道へ向かって拭いてしまうと、膣で繁殖した細菌が尿道に侵入しやすくなります。前から後ろへ拭くことを意識するだけでも。予防の一つになります」と青木先生。

仮に細菌が侵入しても、尿と一緒に速やかに排出できれば増殖はできません。水分補給やトイレを我慢しないことなどの予防法が役立ちます。また、風邪を引くなどして免疫力が低下していると、侵入した細菌を駆逐する力が弱くなります。日頃から病気を防いで健康管理を心がけることが重要です。

「動脈硬化などで膀胱機能が低下して膀胱内に尿意が残っている場合は、膀胱炎の治療薬と同時に、残尿を改善する薬による治療も必要になります」

「もう一つ大切なのは、初回の膀胱炎の治療をきちんと受けることです。かかりつけ医などから『膀胱炎です』と診断を受けると薬を出されますね。薬を飲むと頻尿や排尿痛が2〜3日で治まるため、薬の服用を途中でやめてしまう人がいます。このとき生き延びた細菌が、薬の効かない耐性菌となってしまうことがあるのです」

耐性菌は最初に出された薬に抵抗力を持つようになり、再び膀胱炎になったときに同じ薬を飲んでも死滅しません。薬が効かないので膀胱炎を治しにくくしてしまうのです。症状が治まっても、薬をきちんと飲むことを心がけましょう。また、抗生剤の種類によっては、3日間の内服を推奨しているものもあるので、主治医の指示に従いましょう。

「腸内にはたくさんの細菌が生息していますが、その中に耐性菌がすでに潜んでいて膀胱炎になる人もいます。1週間経っても症状が良くならないときには、薬を変える必要があるのです。また、細菌に関係のない間質性膀胱炎という病気もあります」

 

間質性膀胱炎は、膀胱の壁の内側で炎症が起こって組織が硬くなり、膀胱が萎縮してしまう原因不明の病気です。女性に発症することが多く、急性膀胱炎は排尿の後に痛みますが、間質性膀胱炎は尿がたまってくると痛みが生じ、排尿すると和らぐのが特徴です。抗菌薬とは異なる治療法となるため、急性膀胱炎が治らないときには、その原因をきちんと確かめることが重要になります。

「糖尿病や高血圧などの持病をお持ちの方は、動脈硬化の進行や免疫力の低下などで急性膀胱炎を起こしやすいといえます。日頃から健康管理を心がけることに加え、膀胱炎の予防にも努めていただきたいと思います」

膀胱炎になると外出するのも控えがちという人がいます。予防に努め、適切な治療を受けることで膀胱炎を遠ざけましょう。

 

 
◆知っておきたい膀胱炎予防のツボ

1:前から? 後ろから? 他人に聞けない「拭き方」のハナシ

閉経後の膣は、バリア機能が失われて細菌が繁殖しやすくなります。排尿後にトイレットペーパーで膣の方から尿道へ向けて拭いてしまうと、膣の細菌が尿道に入りやすいのです。
 
拭くときには尿道から膣の方へ、つまり「前から後ろへ」を意識すると、膣の細菌を尿道へ導くことを防げます。この拭き方が慣れずに難しいという場合は、トイレットペーパーを尿道口に押し当てるようにしましょう。ゴシゴシ拭くことを避けることが予防につながります。

 

2:温水洗浄式便座には要注意!

排尿や排便のとき、温水式洗浄便座を使用する人が増えています。ただし、温水によって細菌がしぶきと一緒に飛び散り、膣や尿道に付着しやすいので注意が必要です。膀胱炎を繰り返す人は、温水式洗浄便座の使用を控えた方が無難といえます。

 

次の記事「水分を多めにとる、下半身を冷やさない...6つの生活習慣で膀胱炎を遠ざけよう(4)」はこちら。

取材・文/安達純子

 

 

<教えてくれた人>
青木九里(あおき・くり)先生

東邦大学医療センター 大森病院泌尿器科 講師。東京女子医科大学卒。東邦大学大学院博士号取得。東邦大学医療センター佐倉病院などを経て、2009年より現職。日本泌尿器科学会専門医・指導医。日本性感染症学会専門医。膀胱炎の研究・治療に詳しい。

この記事は『毎日が発見』2019年1月号に掲載の情報です。

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