かゆみや痛み、腫れなど、外陰部(女性性器)のトラブルは、放置すると重大な病気につながることがあります。その反面、清潔を保ったり、日常生活を見直したりすることで、十分に予防できる病気や症状も少なくありません。まずは、外陰部についての正しい知識を身につけ、トラブルが起きているのかどうか判断できることが大切です。
自分の体を守るために知っておきたい外陰部の病気への対応や予防法を、セントソフィアクリニック婦人科院長の伊藤 知華子先生にお伺いしました。
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性感染症には、さまざまな種類があります。代表的な病気の症状と検査、治療法などをご紹介します。万が一、思い当たる症状があったら、すみやかに婦人科を受診しましょう。
【性感染症の種類と特徴】
●クラミジア感染症
最も発症頻度が高い性感染症で、とりわけ20代の女性に多くみられます。感染してしばらくはおりものが多少増える程度で、大半が無症状のため自覚しにくい病気です。進行すると子宮や卵管、骨盤内にまで感染症を起こし、不妊の原因にもなります。上腹部まで達すると肝周囲炎を引き起こすことがあります。
【検査】子宮頸管擦過検査
【治療】抗生物質の服用
●性器ヘルペス感染症
外陰部に口内炎のような水疱ができ、やがて排尿ができないほどの激しい痛みを感じるようになります。人によってはリンパ腺の腫れが起こることも。一度感染すると脊髄神経節にウイルスが潜み、ストレスや風邪、妊娠などで免疫力が低下したときに再発することがあります。妊娠中に発症すると、出産時に産道で新生児に感染する恐れがあります。
【検査】血液検査
【治療】抗ウイルス剤の点滴、内服薬、外用薬を使い分ける。
●梅毒
近年、増加傾向にあり大変注意が必要な感染症です。感染から2~3週間後に外陰部に小さないぼのような塊ができ、自然に治ってしまいますが、無治療だと2~3カ月後には全身に発疹などの症状があらわれます。早期に治療をすれば完治しますが、進行すると脳の神経まで侵されることがあります。感染力が大変強く、採血検査をしないかぎり発症の有無は分かりません。痛みがなくてもいぼのようなできものがある場合、STIの心配がある性交が思い当たるときは、婦人科を受診しましょう。潜伏期もありますので、受診は必ずしも速やかではなくてもかまいません。
●淋病
淋菌という細菌によって起こります。子宮の入り口で炎症を起こすと、異臭を伴う黄色いうみのようなおりものが増え、外陰部がかゆくなります 。尿道感染すると、尿道炎や膀胱炎になり、排尿時に痛みを感じるようになります。感染が拡大して骨盤内で炎症が広がると、発熱や下腹痛が起こることも。これを放置していると、不妊の原因となります。
【検査】子宮頸管内擦過検査
【治療】抗生物質を服用、または注射。薬剤の効果を確認し、淋菌が陰性(いなくなる)になったことを確認するため、治療後14日以上の休薬期間をおいてから再検査をします。
●尖圭(せんけい)コンジローマ
性行為のときにヒトパピローマウイルスに感染して起こります。膣や外陰部、子宮頸部に薄茶色や灰色のいぼができ、次第にカリフラワー状に数が増えていきます。抵抗力が落ちたときに再発しやすくなります。出産時に発症すると、産道で新生児に感染し、のどにできものができて外科手術が必要となります。
【検査】肉眼での診断 わかりにくいときは組織を生検(少し取る)して病理学的に診断
【治療】塗り薬。ただし、いぼが大きくなっている場合は、電気メスやレーザーで焼き切ったり、液体窒素で凍結させることもあります。
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取材・文/寳田真由美