「ガンコで融通がきかない! 」「思い込みが激しすぎる! 」...高齢になってきた親の行動に、毎日イライラしていませんか? 実は、それらの行動には理由があるのです。人気ブロガー、なとみみわさんの母と姑の"理解できない"行動を、大阪大学大学院教授の佐藤眞一先生が老年行動学で解明。理由が分かれば、あなたの親の行動も納得できるかも!
※この記事は『まいにちが、あっけらかん。―高齢になった母の気持ちと行動が納得できる心得帖』(なとみみわ 佐藤眞一/つちや書店)からの抜粋です。
1か月前の出来事はすっかり忘れてしまっているのに、「むかしはよかった」「私の若い頃はね......」など、何十年も前のことほど、よく覚えている高齢者は少なくありません。
一般的に人は、直近の出来事ほどよく覚えているものですが、高齢者自身の「自伝的記憶」だけは例外です。自伝的記憶とは、10代後半から30代前半までの出来事をよく思い出す現象のことで、30代後半以降のことは、それほど思い出しません。この若い頃の記憶を最も思い出す現象を「レミニセンス・バンプ」(自伝的記憶のこぶ・隆起)と言います。
なぜ、レミニセンス・バンプが起こるかというと、記憶には「強い感情をともなう出来事ほど忘れにくく、何度も思い出しやすい」という特徴があるからです。お姑さんがおにぎりの話を繰り返し話すのは、一生懸命に子育てをしていた頃の記憶がとても大切で、息子さんへの優しい愛情をともなう出来事だったからではないでしょうか。
また、高齢者が同じ話を繰り返す理由として考えられるのは、話題にできる目新しい体験が少ないことも挙げられます。高齢者は若い人に比べ、新しい出来事にそういくつも遭遇するわけではありませんから、ご家族との会話の話題にも困るわけです。そのため、むかしのよい思い出を何度も思い出して話すほうが楽しいのでしょう。また、「デイサービスで会った人の話をしても子どもたちには分からないし、つまらないだろうからやめておこう」と家族に気を使って話題を選んだ結果、同じ話を繰り返している可能性もあります。
いずれにしても、誰にでも会話の根底には「自分の話を聞いてほしい」という思いがあるものです。「何度も聞いたから」と話をさえぎるのではなく、どんどん質問して、その話題をきっかけに話を広げていきましょう。たとえ話の内容が苦労話やグチであっても反論せず、「そうだったんだ」「それは大変だったね」などと、まずは共感してあげてください。
なおレミニセンス・バンプは、高齢者だけではなく、45歳以上の人ならば誰にでも起こる現象です。
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