40代を過ぎて、肩が痛い、腕が上がらないという時にまず思い浮かべるのが、四十肩・五十肩ではないでしょうか。「そのうち治るだろう」「年をとったから痛くなっただけ」と自分で判断し、放っておく人も多いですが、実は、いつ爆発するかわからない「爆弾」を抱えているのと同じ。気づかないうちに重症化していて、手術が必要となる場合もあるので、軽く考えるのは禁物です。
肩の仕組みをはじめ、四十肩・五十肩の原因や症状、予防法などを、麻生総合病院 スポーツ整形外科部長で、肩関節の治療を専門とする鈴木一秀先生にお聞きしました。
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自己判断はせず、気になったら病院へ
肩は複雑でデリケートな部位。治療法や日常生活においての注意点など、わからないことがたくさんあります。今までなかなか聞けずにいた素朴な疑問について、鈴木先生に教えてもらいました。
Q.四十肩・五十肩は一度発症したら、何度も再発する?
A.通常は、一度起こると、同じ側の肩に再発することはありません。反対側の肩に起こることはあります。また、両方同時に起こることはありません。以前、四十肩・五十肩を起こしたときと同じ側の肩が痛む場合は、腱板断裂などほかの疾患の可能性も考えられるので、早めに医療機関を受診しましょう。
Q.利き腕が四十肩・五十肩になることが多いの?
A.そうとは限りません。利き腕も、そうでないほうの肩も四十肩・五十肩になる可能性があります。
Q.痛い時は温める? 冷やす?
A.急性の場合は冷やし、慢性の場合は温めるのが、一般的な痛みの対処法ですが、実は、湿布薬は温・冷のどちらを使っても効果は同じ。温湿布は温かく感じるカプサイシン、冷湿布にはひんやり感じるメントールの成分が含まれていますが、患部そのものを温めたり冷やしたりして治すわけではありません。皮膚を通して抗炎症成分が吸収されることで炎症や痛みを抑えるのです。自分が心地いいと感じるほうを使ってOKです。
Q.応急処置として、市販の薬は使ってもいい?
A.緊急の場合は、市販の貼り薬や湿布薬を貼ったり、消炎鎮痛薬を服用したりしても構いません。「ロキソニン」のように、医療機関で処方される薬と同じ成分が使用されている市販薬もあります。ただし、通常の四十肩・五十肩でなく、腱板断裂や心筋梗塞など重篤な症状である可能性も考えられるので、頻繁に使うのはやめましょう。2週間以上、様子を見ても症状が改善しなければ、医療機関を受診するのが鉄則です。
Q.肩を動かすと、音がするのですが?
A.音だけなら、特に心配はありません。轢音症(れきおんしょう)といって肩甲骨を動かした時に自然と音が鳴ることがあります。ただし、痛みも伴う場合は、医療機関へ。
Q.痛みと言うより、びりびりとしびれるような感覚があるのですが?
A.この場合、四十肩・五十肩ではなく、頸椎などの病気も考えられます。長く続く時は、医療機関を受診しましょう。
取材・文/岡田知子(BLOOM)