かゆみや痛み、腫れなど、外陰部(女性性器)のトラブルは、放置すると重大な病気につながることがあります。その反面、清潔を保ったり、日常生活を見直したりすることで、十分に予防できる病気や症状も少なくありません。まずは、外陰部についての正しい知識を身につけ、トラブルが起きているのかどうか判断できることが大切です。
自分の体を守るために知っておきたい外陰部の病気への対応や予防法を、セントソフィアクリニック婦人科院長の伊藤 知華子先生にお伺いしました。
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性器や尿道がいつもと違うと思ったら
早めの受診で早期治療を
男性が性感染症に感染した場合、女性に比べて症状が出やすく、比較的早い時期に気がつくことができます。
【男性の性感染症の症状】
●尿道からうみのようなものが出てきた
●排尿時に痛みがある
●性器に痛みやかゆみを感じる
●性器に水疱やいぼができている
●性交時に痛みがある
上記のような症状があったら、性感染症に感染している可能性があります。泌尿器科を受診して、検査や治療を受けましょう。皮膚症状が強い場合は、皮膚科でも治療が可能です。病院では、排尿時の痛みや熱感、うみの排出などについての問診、性器の状態に変調がないかの診断の他、尿検査や血液検査、尿道の検査などを行います。検査により性感染症だと診断された場合は、女性と同様、飲み薬や塗り薬、注射などで治療を進めます。中には手術が必要となる場合もあります。
性感染症に感染しているのに治療をせずに放置を続けると、症状が重くなることがあります。男性の場合は、精巣の炎症や不妊症の原因になることも。また、完治しても免疫はできませんので、感染を繰り返すことがあります。治療後も、コンドームを正しく使用するなどの予防に努めましょう。
「最近はオーラルセックス(口腔性交)によるのどへの性感染症の蔓延も問題になっています。のどに感染しても症状が出ることは少なく、感染者の増加の原因となっています。予防のためには、セックスの前にはシャワーを浴びるなど清潔にすること、どんな場合にもコンドームをつけることを心がけてください。また、性感染症は自分だけが治療してもパートナーから再感染したり、その逆もあるので、パートナーと2人で完全に治す必要があります。少しよくなったからと薬の服用をやめたり、途中で通院をやめると再感染のリスクが高まりますので完治するまで気長に治療を続けましょう」(伊藤先生)
男性は30~49歳がピーク(※)
急増する梅毒にご注意
日本では過去の病気と思われがちな梅毒ですが、近年患者数が増えています。梅毒は、感染後約2~3週間の潜伏期間を経て、性器や肛門、口などにできもの、しこり、ただれなどが起こります。治療しなくても数週間で症状は消えます。最初の症状が消えてから3カ月ぐらい経つと、手のひらや足の裏など全身に発疹ができます。こちらも治療しなくても数週間~数カ月で症状が治まります。また、症状が何もないまま数年経過する場合もありますが、体の中で病気は静かに進行していきます。やがて、心臓や血管、神経などが侵されてしまうことがあります。
治療にはペニシリンという抗生物質が有効です。ただし、菌を死滅させることはできても臓器などに生じた障害を元に戻すことはできません。それだけに、早期発見、早期治療が重要です。梅毒は、血液検査をしなければ感染しているかどうか判断ができません。「もしかして...」と思ったら、すぐに医療機関を受診してください。
※東京都における梅毒男女別年齢別疾患報告数(2016年) 感染症サーベイランスシステムより
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取材・文/寳田真由美