細菌性膣炎、性感染症、萎縮性膣炎...外陰部の病気を知りましょう/外陰部のトラブル

細菌性膣炎、性感染症、萎縮性膣炎...外陰部の病気を知りましょう/外陰部のトラブル pixta_19567192_S.jpgかゆみや痛み、腫れなど、外陰部(女性性器)のトラブルは、放置すると重大な病気につながることがあります。その反面、清潔を保ったり、日常生活を見直したりすることで、十分に予防できる病気や症状も少なくありません。まずは、外陰部についての正しい知識を身につけ、トラブルが起きているのかどうか判断できることが大切です。

自分の体を守るために知っておきたい外陰部の病気への対応や予防法を、セントソフィアクリニック婦人科院長の伊藤 知華子先生にお伺いしました。

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前の記事「外陰部の気になるかゆみ、放置すると不妊や肝炎の原因にも/外陰部のトラブル(3)」はこちら。 

 

下着、年齢、感染症...不調の原因はさまざまです!

周りの人にはなかなか相談できない外陰部のかゆみや不調。下着の締め付けや加齢によるものの他、自分でも気付かないうちに感染してしまう性感染症など、原因はさまざまです。まずは原因を知って、正しく対処しましょう。

●接触性皮膚炎
下着のラインに沿って赤くなったり、むれてかぶれたりしたことによってかゆみが起こります。おりものシートが原因になることも。治療は主に塗り薬を使います。日常生活では、皮膚への刺激を避けるため化繊素材の下着を避け、通気性のよい綿製品を選びましょう。

●細菌性膣炎
外陰部のトラブルでも特に多く、膣内の常在菌以外の細菌が増えることで起こります。おりものが増えたり、外陰部に痛みが生じたりと、カンジダ膣炎と似た症状がみられます。大腸菌が膣内で繁殖することでも起こるため、排便後にペーパーで拭くとき、後ろから前に拭かないように気をつけましょう。特に下痢のときには注意が必要です。

●萎縮性膣炎
女性ホルモンの分泌が低下することで起こります。膣が萎縮することで出血しやすくなり、性交時に出血したり、痛みを伴ったりします。また、外陰部にかゆみや痛みを感じることも。閉経後の女性や卵巣を摘出した女性であれば、誰でも発症する可能性があります。

●カンジダ膣炎
カンジダという真菌(カビのようなもの)が膣や外陰部で繁殖し、かゆみが出たり、カッテージチーズや酒粕のようなおりものが出ます。一度罹患すると、体力が落ちたときに再発を繰り返しやすいのも特徴です。

●トリコモナス膣炎
トリコモナスという原虫が膣内に寄生して膣に炎症が起きます。ほとんどの場合、性行為で感染しますが、まれに便器や浴場、下着、タオルなどによって間接的にうつることも。特に、多くの人が利用する公衆の場のトイレや浴場のイスなどは清潔にしてから使うようにしましょう。症状は、悪臭を伴う黄色っぽい泡のようなおりもの、膣の痛みなどがみられます。

●毛ジラミ
毛にシラミが住み着いて繁殖します。外陰部の毛ジラミは、主に性行為によって感染しますが、タオルなどに付着して家庭内で広まることもあります。よく見ると、毛に虫がいたり、卵 が付着しているのが分かります。毛を剃る他、毛ジラミを殺す専用シャンプーなどで駆除できます。

●バルトリン腺炎
膣の周りにある「バルトリン腺」という分泌腺に感染が起こり、炎症が生じます。バルトリン腺は、左右一対をなすエンドウ豆ほどのサイズの分泌腺で、性交時などに膣を潤す潤滑液として役割を果たしている粘液の一部は、ここからも分泌されます。

バルトリン腺炎はバルトリン腺の細菌感染による炎症が原因です。炎症の多くは片側のみに発症し、赤みや腫れが生じます。進行すると嚢胞ができ、痛みが強くなり、座ったり、歩行したりが困難になることも。一時的に太い針を刺して膿を抜くこともありますが、症状が激しい場合は、手術で嚢胞を切開開創します。再発を繰り返す場合や症状が長く続く場合は、バルトリン腺自体の摘出術が行われることもあります。

●特殊なケース
白板症やべージェット病 などは、前がん病変という、がんに移行する可能性がある疾患です。はじめは湿疹のようなものが現れ、次第に皮膚の色が変化していきます。

 

 
外陰部にいつもと違う感覚があったら、まずは婦人科を受診して、原因を調べることが大切です。恥ずかしいからと長く放置すると、治療が困難になることも。

「外陰部の病気は、膣剤、塗り薬、内服薬を使いながら根気よく治療していく必要があります。一度病院で薬をもらったけれども、治らないからと通院を中断してしまう人がいますが、そうすることでさらに状態を悪くしてしまうことがあります。なかなか治らないからと諦めるのではなく、気長に治療を続けましょう。また、薬だけに頼らず、通気性のよい下着を選ぶ、外陰部を締め付けないようにする、免疫力が低下しないよう生活リズムを整えるなどの工夫も大切です」(伊藤先生)

 

次の記事「女性5人に1人が経験!「カンジダ膣炎」ってどんな病気?/外陰部のトラブル」はこちら。

取材・文/寳田真由美

 

伊藤 知華子(いとう・ちかこ)先生

セントソフィアクリニック婦人科院長、医学博士。名古屋第二赤十字病院産婦人科、成田病院勤務を経て、1997年米国サウスカロライナ医科大学生殖遺伝学教室留学、1999年成田病院帰任、2008年より現職。専門は婦人科。生殖医療専門医。

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