外陰部が乾いてヒリヒリ...「萎縮性外陰炎」「萎縮性膣炎」など閉経後の腟と外陰部の悩みに答えます/松峯寿美先生の婦人科相談室

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閉経以降はさまざまな体の不調を感じやすくなっていくもの。でも、下半身の悩みは誰にも言えないですよね。そこで、素朴な疑問や悩みについて、産婦人科医の松峯寿美先生に答えていただきます。今回は 「腟と外陰部の不快症状」についてのご相談です。

 

Q 陰部が乾いてヒリヒリしたり、痛みがあります。病院で「外陰部が委縮している」と言われました。外陰部の萎縮はもう治らないのでしょうか。東京都T・Kさん(70歳)

A 外陰部の萎縮は閉経後の女性なら誰しも経験すること

これは「萎縮性外陰炎」(いしゅくせいがいいんえん)という症状で、同様な症状に「萎縮性膣炎」があります。腟と外陰部はつながっていて、両方の組織が萎縮することで乾燥してヒリヒリしたり、かゆみを伴うなど、不快症状が起こりやすいのです。

どうして乾燥するのかというと、閉経するとエストロゲンという女性ホルモンが卵巣から分泌されなくなるからです。すると腟や外陰部の潤いがなくなり、しかも粘膜や皮膚の組織が薄くもろくなるため、萎縮してかさつき、炎症を引き起こしやすくなるのです。以前はなかった不快症状を経験し、きっと戸惑われたことと思いますが、これは閉経後の女性が誰しも経験することです。決してあなただけではないのですよ。

閉経とは生殖活動の役目を終えたサインです。つまり、卵巣が女性ホルモンを作らなくなることが根本的な原因なので、残念ながら医学の力で体の働きを若返らせたり、生殖器の萎縮を食い止めることはできません。でも、女性ホルモンを補充する治療を行ったり、日常生活に気を配ることで、不快症状が緩和されることがあります。

 

外陰部の痛み、ヒリヒリ。傷つけないように、工夫&ケアしましょう

症状には個人差がありますが、「排尿時に外陰部がしみる」「性行為の際に痛みがある」と相談にいらっしゃる方が多いですね。内臓の不調などと違って、食生活によって症状を改善することはできませんが、傷つけないように自分なりに工夫して、不快症状を和らげることは可能です。

腟と外陰部はもともとデリケートな部分ですから、まずは肌に優しい下着選びから始めましょう。素材は吸湿性と通気性のある綿100%がお薦めです。肌に食い込むような小さめな下着や化繊の下着、下半身にピチッと密着するきつめのジーンズは、ムレやすいので避けたほうがいいでしょう。 そして、清潔を心がけるのは大切なことですが、せっけんで洗い過ぎると外陰部を保護する皮脂膜を洗い流してしまうので注意してください。トイレの温水洗浄器も使い過ぎないようにしてください。そもそも腟や外陰部の皮膚は弱酸性に保たれているのですが、頻繁に洗い流していると腟内フローラ(正常な)のバランスが乱れてしまいます。すると普段は悪さをしない細菌が増殖して、においやかゆみ、炎症を招いてしまうのです。

 

外陰部や膣の不快症状が強い人は、女性ホルモンの腟座薬がお薦めです

外陰部や腟の萎縮は女性ホルモンの欠乏が原因なので、不快症状がつらいときは女性ホルモンを補うことによって改善することができます。女性ホルモン補充療法には注射、飲み薬、塗り薬、貼り薬、腟座薬という5つの方法があり、症状の程度に応じて使い分けされますが、私は萎縮性腟炎や萎縮性外陰炎の治療には腟座薬をお薦めしています。腟座薬は全身に作用するのではなく、局所を潤す目的で使用できるので、特に性交痛がつらい人、膣が乾燥している人に有効です。

腟座薬は通常1〜2日に1錠使うように処方されますが、1回の使用で2〜3日は効果が持続するので、週に2回使用するだけでも効果があります。内服薬の副作用とされる血栓の心配もないですし、ホルモン剤の服用が禁忌とされる子宮体がんや乳がんを経験した人も、治療を終えていれば主治医と相談の上、使用することが可能です。人によっては乳房の張り、外陰部のむくみ、不正出血などの副作用がごくまれに見られますが、使用頻度を調整することで、ある程度は緩和できます。

一方、相談者の方は医師から「治療方法としてステロイド外用薬剤を使用する方法もある」と説明を受けたそうですが、外陰部や腟が萎縮して炎症を起こしている場合はまず、女性ホルモンを腟座薬で補充するほうが安全で、効果的だと思います。かゆみ専門のクリームも市販されていますが、きちんと原因を確かめてから使用することをお薦めします。

もしも更年期症状の治療も兼ねて、内服による女性ホルモン補充療法を長期的に行う場合は、血液検査や肝機能検査を定期的に行い、血栓症の心配がないかどうかを医師が慎重にチェックします。自分がつらいと感じたときは、QOL(生活の質)を損なわないためにも、恥ずかしがらずに治療法や生活習慣の注意点を産婦人科医に相談してくださいね。

<まとめ>
誰にも言えない婦人科系の悩みや疑問。先送りせずにご相談ください。

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取材・文/大石久恵

  

松峯寿美(まつみね・ひさみ)先生
<教えてくれた人>
松峯寿美(まつみね・ひさみ)先生
東京生まれ。東京女子医科大学、同大学院卒業。医学博士。日本産婦人科学会専門医。東京女子医科大学非常勤講師。1980年に東峯婦人クリニックを開業して以来、妊娠・出産、更年期、老年期まで、女性の健康をトータルに支える医療をモットーとしている。加齢や出産よる骨盤底筋群の緩み、尿漏れに悩む女性たちの相談に乗る一方、更年期以降の女性の腟の緩みを改善する腟形成手術、子宮脱の経腟手術なども行っている。主な著書に『女性の医学BOOK』『顔よりからだ』など。
この記事は『毎日が発見』2016年1月号に掲載の記事です。

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