かゆみや痛み、腫れなど、外陰部(女性性器)のトラブルは、放置すると重大な病気につながることがあります。その反面、清潔を保ったり、日常生活を見直したりすることで、十分に予防できる病気や症状も少なくありません。まずは、外陰部についての正しい知識を身につけ、トラブルが起きているのかどうか判断できることが大切です。
自分の体を守るために知っておきたい外陰部の病気への対応や予防法を、セントソフィアクリニック婦人科院長の伊藤 知華子先生にお伺いしました。
◇◇◇
長引くかゆみ、痛みは婦人科へ
放置すると深刻な病気を発症することも
女性の体の中でもとりわけデリケートな部位である外陰部。それだけに、かゆみや痛みなど、いつもと違う症状があっても周囲に相談しにくく、病院へ行くのをためらってしまうという人も少なくないのではないでしょうか。
「外陰部のトラブルで考えられる病気は、さまざまです。代表的なものでは、おりものが増えたり痛みを感じたりする細菌性膣炎の他、下着があたるところだけ赤くなる接触性皮膚炎、疲れやストレスなどによって抵抗力が落ちることで発症しやすくなるカンジダ膣炎、更年期以降に多くみられる萎縮性膣炎、そして性行為によって感染する性感染症などがあります。これらの病気は、20代から閉経後まで年代にかかわらず発症しますので、自分には関係ないことと思わず、ちょっとした体の変化を見逃さないことが大切です」と、伊藤先生。
外陰部のトラブルでよくある症状には、下記のようなものがあります。
●外陰部がかゆい
●外陰部がヒリヒリとする
●外陰部が痛む
●外陰部のかぶれ、ただれ
●おりものが増加する
●おりものの色がいつもと違う
●おりもののにおいがいつもと違う
女性の外陰部は皮脂腺や汗腺が多いうえに、おりものや経血といった膣や子宮からの分泌物などで、常に刺激にさらされやすくなっています。これらが原因となって、かゆみやかぶれなどが起こることも。これらの症状は、放っておいてかまわない場合もありますが、放置することで深刻な病気を招くこともあります。
「外陰部のトラブルで病院を受診される方は、個人差が大きいものです。気になる症状が出てから1週間ぐらいで受診される人もいれば、1年前から気になっていてようやく病院に足が向いたという方も。カンジダ膣炎のように何度も同じ症状を繰り返す場合、市販薬を利用して症状が落ち着くこともありますが、自力では治らないものも多いので、おりものの状態がいつもと違う、我慢できないかゆみが続く、見た目に腫れている部位がある、感じたことのない痛みを感じるなどの症状が続いたら、我慢せずに婦人科を受診してください。早期に適切な治療をすることで、深刻な事態になることを防ぐことができます」(伊藤先生)
基本的に、トラブルを感じて婦人科を受診する場合の治療は保険が適用されます。1人で不安を抱え込まずに、まずは婦人科で相談してみましょう。
次の記事「あなたは大丈夫? おりものの色や量で、健康チェック/外陰部のトラブル」はこちら。
<教えてくれた人>
伊藤 知華子(いとう・ちかこ)先生
セントソフィアクリニック婦人科院長、医学博士。名古屋第二赤十字病院産婦人科、成田病院勤務を経て、1997年米国サウスカロライナ医科大学生殖遺伝学教室留学、1999年成田病院帰任、2008年より現職。専門は婦人科。生殖医療専門医。
取材・文/寳田真由美