かゆみや痛み、腫れなど、外陰部(女性性器)のトラブルは、放置すると重大な病気につながることがあります。その反面、清潔を保ったり、日常生活を見直したりすることで、十分に予防できる病気や症状も少なくありません。まずは、外陰部についての正しい知識を身につけ、トラブルが起きているのかどうか判断できることが大切です。
自分の体を守るために知っておきたい外陰部の病気への対応や予防法を、セントソフィアクリニック婦人科院長の伊藤 知華子先生にお伺いしました。
前の記事「細菌性膣炎、性感染症、萎縮性膣炎...外陰部の病気を知りましょう/外陰部のトラブル(4)」はこちら。
体力や免疫力の低下が原因。
おりものの変化を見逃さず早期対応を
カンジダ膣炎という言葉は聞いたことがあるけれど、どういったものか分からないという人は多いと思います。ですが、実は女性の5人に1人は、一生に一度は経験する病気といわれます。
カンジダ膣炎とは、膣の中にいる常在菌の一種であるカンジダ菌が、何らかの理由で異常に増えることで発症します。健康な膣内は、乳酸菌によって酸性に保たれており、細菌が繁殖しにくい状態になっています。ですが、妊娠や出産をはじめ、風邪や膀胱炎などでの抗生物質の使用、糖尿病、疲れやストレスによる免疫力低下などで常在菌のバランスが崩れると、カンジダ菌が異常繁殖してしまいます。
カンジダ膣炎の典型的な症状は、外陰部のかゆみとおりものの異常です。おりものは、カッテージチーズや酒粕のように白く濁ってころころとした状態になり、量が増えます。また、外陰部にヒリヒリとした痛みを感じたり、性交痛を感じることもあります。外陰部の強いかゆみを生じる疾患には、他に細菌性膣炎やトリコモナス膣炎、性器ヘルペス感染症などがあります。それぞれの特徴は下記の通りです。
●カンジダ膣炎と間違いやすい病気
トリコモナス膣炎
【おりものの性状】泡状で黄色っぽく、悪臭がする
【おりものの量】多い
【外陰部の症状】強いかゆみ、熱感、刺激感
性器ヘルペス感染症
【おりものの性状】変化なし
【おりものの量】変化なし
【外陰部の症状】痛がゆい。水疱ができ、ただれてしまうことも
細菌性膣炎
【おりものの性状】灰色がかった色で水っぽい。魚の腐ったような臭い
【おりものの量】多い
【外陰部の症状】かゆみ、刺激感
「カンジダ膣炎は、20代~40代の比較的若い女性に起こりやすい病気です。性行為によって感染すると思っている方も多いですが、圧倒的に多いのは体力の低下や免疫力の低下によって、膣内の常在菌のバランスが崩れることによる発症です。風邪や膀胱炎治療のために抗生物質を飲んだら、数日後にカンジダ膣炎になったというのは、よくあるケースです。これは、抗生物質によって膣内の善玉菌まで除菌されてしまい、本来増えるはずのないカンジダ菌が異常繁殖して発症するためです」(伊藤先生)
カンジダ膣炎の症状をまとめてみました。思い当たることがあったら、早めに対処しましょう。
●カンジダ膣炎の症状
□外陰部のかゆみ
□白く、ころころとしたカッテージチーズや酒粕状のおりもの
□膣にヒリヒリとした刺激を感じる
□膣の熱感
□排尿時に痛みを感じる
□性交渉時に痛みを感じる
次の記事「カンジダ膣炎は何度でも繰り返す? 発症と再発の原因って?/外陰部のトラブル(6)」はこちら。
取材・文/寳田真由美